小塚崇彦の“考えるドライビング” デビュー戦は苦戦も「積み重ねて次へ」

奥野大志

2回目の計測時に悪いクセが出てスピン

服部尚貴選手(左)と車載映像を確認する小塚選手 【写真提供:埼玉トヨペットGreen Brave】

 14時33分、3人のチームメイトとともに小塚選手がコースイン。連なって走ることで前後に他の選手が入るのを防ぎ、クリアラップを確保しようという作戦だ。

「1回目の計測で2分12秒614をマークし、ベストを出せました。2回めの計測では、これでいけるかなと思った時に、いつもの悪いクセが13コーナー(セクター3)で出てスピン。セクター1、2はベストを更新していただけに悔やまれますが、経験不足。落ち着いてやるべきことをやるという気持ちになりきれなかったのかな。その後もう1回アタックしましたが、13秒台しか出ませんでした。タイヤにキビキビした感じはなく、ゆるゆるな状態でした」

 小塚選手はピットインすることなく12分間の予選をフルに走り切り、最終走者としてチェッカーを受けた。小塚選手は計測1回目のタイムがベストとなり、3組35位。3組の予選通過者の30位のタイムは2分11秒359で、予選通過には1.3秒程足りず、予選落ちとなった。

「自分の気持ちが先に行って、ブレーキングが遅くなるのが悪いクセ。計測1回目はまとまっていましたが、早くブレーキを利かせてしまい、最終コーナーからストレートの立ち上がりが遅くなってしまいました。それを2回目の13コーナーで思い出し、ブレーキを利かせて早く立ち上がればいいのに、カン違いしてブレーキングポイントを遅くしちゃいました。で、曲がり切れずスピン」

「緊張していたのと、いいタイムで走れているというのをなんとなく感じていたから、高揚感が抑えられなかった。テンション上がりすぎ。攻めた結果ではなく、自分のミスです。自分が感じている以上に1回目の13コーナーが良かったのですが、直すのは13コーナーではなく、最終コーナーでしたね。距離をとってちゃんと立ち上がれば問題はなかったはずで、そのへんは慣れと経験です。『たられば』は言ってはいけないけど、昨日もう1回走っていたら違っていたかもしれない」

(映像提供:J SPORTS)
 予選落ちとなったデビュー戦の結果について、率直な気持ちを聞いた。

「単純に悔しいですよ。自分の中で実力は出し切ったけど、ハッキリ言って目標は達成できなかった。そこが複雑な気持ちを醸し出しています。フィギュアに例えると4回転を初めてできたのに、順位があまりいかなかった。そんな感じですよね。普通に実力不足」

「ただ、一昨日(木曜日)はタイムがひどかったので、どうなるかと思っていましたが、今はある程度ダンゴ状態の中に入れているじゃないですか。2日前はひとりだけ全然違うところにいると思っていた自分がいました。ただ、それだけで終わりたくはなかったですね。周りの人がサポートしてくれたおかげで、ここまで来られた。でも、やっぱり半年ぐらいは必要ですね。昨日や今日の感じをあと1カ月続けたらたぶん10秒台に入る。練習はウソをつかない。フィギュアもモータースポーツも一緒です」

 こうして小塚選手のデビュー戦は幕を閉じた。翌日曜日の決勝は早朝から埼玉トヨペットGreen Braveのチームメイトを応援。予選終了から決勝に至るまでの流れを経験し、次回以降の糧とした。

「次は最終戦の鈴鹿(10月28日決勝)に出場する方向で調整しています。コースの形状がまったく違うので想像もつきません。ただ、ゼロからではないので、積み重ねながら次こそは予選を突破したい。鈴鹿は助手席で同乗したこともあるので、その時の感覚を思い出しながらシミュレーターもうまく駆使できればいいのかなと」

 小塚選手の“考えるドライビング”はまだ始まったばかりだ。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。埼玉県川越市出身。出版社勤務を経て2012年に独立。企業のモータースポーツ活動にフォーカスし、全力で戦い続けるレーシングドライバーやメカニックたちのリアルなドラマを広く伝えている。2014年から埼玉トヨペットGreen Braveのオフィシャルライターとしてチームに帯同。自動車メディアにも寄稿している。ペンネームはゴリ奥野

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