平石代行率いる新生楽天、快進撃の理由 OB山村氏「勝負に徹した結果が形に」
38歳の青年指揮官・平石代行(写真中央)が率いてから、楽天の快進撃が始まっている 【写真は共同】
(※データは8月6日現在)
選手の状態把握と信頼で打順固定へ
今は本当に強いですね。平石代行になって、『勝ちたい』というシンプルな部分でチームをひとつにした。特に新しい選手を補強した訳ではないですし、変わったことと言えば、打順を固定したことぐらい。ベンチワークを見ても、勝負に徹していることが分かります。延長戦で負けた3日の試合(千葉ロッテ戦)では、同点の9回2死一、三塁の場面で先発の塩見(貴洋)を交代させた。人情的には、それまで頑張って投げてきた塩見に任せたいところだと思いますけど、勝つために、走者がいるあの場面で今一番信用の置ける青山(浩二)を送った。結果的に延長戦で負けましたけど、随所で平石代行の決断力というものを感じます。
――今挙げられた中で、打線を固定したことがあります。それまでは外国人選手の不振もあって、日替わり打線の中で深刻な得点力不足に陥っていましたが。
昨年打った選手たちが打てなくなったのは大きな誤算でしたね。それまではデータを基にした球団の戦略室が主導になって打順を決めていたようですが、平石代行になってからは栗原(健太打撃)コーチと相談して決めていると聞いています。確かにデータというものは大事ですけど、打てなかったら次の日は出られない、逆に打ってもデータが悪ければ出られない、打順を変えられるという日々が続くと、選手はなかなか波に乗れない。野球をするのは生の人間で、その日の調子、状態というのはデータでは測れない部分があると思います。そこが負けている時は悪い方に出てしまっていた。選手の状態と選手への信頼。その2つが良くなったことで得点力が上がったと思います。
――固定した打順の中でカギとなっている選手は誰でしょうか?
まず田中(和基)の成長が大きい。そして今江(年晶)ですね。4番として今江がどっかりと座ることで、チーム内に安心感が出た。さらに下位に外国人が座ることで、その間に座る銀次の状態がすごく良くなった。5番打者としてずっと試合に出るという中で、気持ち的にゆとりが出ているんだと思います。
――けがで抹消になりましたが、アマダーが7月に11本塁打を放って好調の大きな要因になっていました。
そうですね。アマダーにもゆとりが生まれていました。それまでは試合に出たり出なかったりでしたけど、平石体制になってからは基本的に『6番・DH』に固定されていた。下位打線で長打を打てる選手がいると打線全体の攻撃力が一気に上がりますね。
リリーフは状態良し、エースの復調は?
元々、戦力的には悪くない。今季は開幕からリリーフ陣が打たれる場面が多くてそれがチームの勝敗にもつながっていましたけど、青山(浩二)がしっかりと抑えるようになって、松井(裕樹)、福山(博之)の2人の不振が響いていますけど、高梨(雄平)がいて、ハーマンが新守護神として存在感を見せて、久保(裕也)も頑張っている。今は最低でも状態のいいリリーフ投手が3枚はいる状況にできているので、先発陣も思い切って投げられるようになったと思います。
――チーム全体の雰囲気も勝つことでかなり良くなったのではと思います。
負けていた時も特に雰囲気が悪い訳ではなかった。ただ、どことなく選手の歯切れが悪かったかなという部分は感じました。どうしても負けが続くと選手の意識をチームとしてひとつにするのは難しいですからね。でも平石代行になってから、チームの目指す方向が定まった感じがある。選手の話を聞いても、表情を見たりしても、モヤモヤしていたものがなくなって、スッキリした。もともと昨年2位になったチームですから、戦力がかみ合えば勝てるようになりますよ。あとは則本(昂大)の状態が戻れば、というところでしょうね。
――今季はここまで17試合で5勝8敗、防御率3.98。やはり則本投手の状態は気になるところでしょうか?
そうですね。状態は良くない。腕が振れていなくてボールにキレがない。彼特有の最後の押し込む力がない。勤続疲労というものがあるのではと思います。ただ、本人は頑張っていますし、抹消するほどでもない。他の実績のない若い投手が投げるよりは、則本が悪いなりにでも中6日の100球ぐらいを投げてもらった方が、チームが勝つ確率は高いという判断だと思います。投げていく中で調子が上がってくればいいですけど、ここから爆発的に良くなるというのは現状、難しいかもしれません。