【新日本プロレス】飯伏が内藤との死闘を制し2位タイに オメガは石井に敗れ全勝優勝の野望砕ける

高木裕美

Bブロックは飯伏と内藤が2敗

初の決勝進出を懸ける飯伏(右)が、内藤との同い年ライバル対決を制した 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 新日本プロレスの真夏の祭典「戦国炎舞 -KIZNA- Presents G1 CLIMAX 28」第14戦となる4日の大阪・大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)大会では、Bブロック公式戦5試合などが行われ、札止めとなる5500人を動員した。今年は20選手が2ブロックに分かれ、総当りリーグ戦で激突。各ブロックの1位同士が最終戦8.12東京・日本武道館のメインイベントで優勝決定戦を争う。

 この日はBブロック公式戦5試合が行われ、熱戦と波乱に客席が大きくどよめいた。

 メインイベントでは、飯伏幸太が内藤哲也との同い年(1982年生まれ)ライバル対決を制し、堂々の優勝宣言をした。

 両者のこれまでの戦績は2勝2敗の五分。昨年7.17札幌でのG1開幕戦では内藤がデスティーノで勝利し、その勢いのまま4年ぶり2度目の優勝を果たしている。

 2連覇を目指す内藤と、初の決勝進出に懸ける飯伏。その強い思いがリング上で交錯した。内藤は場外戦で実況席めがけて飯伏を投げつけると、得意の蹴りを封じる左ヒザ攻め。それでも飯伏は10分過ぎ、場外へのバミューダトライアングルを繰り出すと、内藤の変形足4の字固め、カサドーラからの変形ドライバー、垂直落下式グロリア、変形ネックツイストを食らいながらも、ハイキック一発で形勢逆転。なおもオーバーヘッドキック、スワンダイブ式ジャーマンスープレックス、シットダウン式ラストライドと大技をたたみかけると、右ヒザのニーパットをはずしてフィニッシュ準備へ。内藤の旋回式デスティーノで反撃されながらも、2発目のデスティーノを切り返し、逆に脳天から垂直に落とすと、さらに左ニー、カミゴェで勝利。

 会場の大「飯伏」コールの中、「大阪で初めてマイクを持つことができました。この大阪でもひとつ約束をします。このG1を優勝してまたここに戻ってきます」と地元・鹿児島に続き、大阪でも堂々の優勝宣言をした。

 バックステージでも、フラフラになりながら「全力を出し切りました。また、このG1で自分を変える。何より一番うれしいのは内藤哲也に勝ったこと。勝ち負けじゃないというのもあるけど、内藤さんとはこれで3勝2敗」とライバル対決を制したことに喜びを浮かべると、「何も考えないことが優勝すること」と残り2戦も無心で臨むことを予告した。

 これで飯伏、内藤は共に5勝2敗で2位タイ。飯伏は現在1敗のオメガと8.11武道館で直接対決を控えており、まずは8.8横浜でのタマ・トンガ戦でも勝ち星を積み重ねた上で、この直接対決でオメガに勝利すれば、優勝決定戦進出が確定する。一方、内藤は得点上位のオメガ、飯伏との直接対決に共に敗れていることから、自力優勝は消滅。オメガ、飯伏の自滅に運命をゆだねることとなる。

石井が値千金の勝利

石井(右)が激闘の末に勝利。オメガは初の黒星を喫した 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 現IWGPヘビー級王者ケニー・オメガは石井智宏に敗れ、ついに連勝ストップとなった。

 両者は昨年、3度にわたってシングルで対戦。3.12兵庫での「NEW JAPAN CUP」1回戦では石井が勝利するも、5.3福岡ではオメガがリベンジ。7.2米国ロサンゼルスでの初代IWGP USヘビー級王座決定トーナメント決勝戦ではオメガが制し、初代王者に輝いている。

 オメガは序盤から飛びつき式フランケンシュタイナー、ノータッチトペ、コタロークラッシャーと軽快な動きを見せると、石井も雪崩式ブレーンバスター、ジャーマンスープレックス、スライディングラリアットなどで対抗。オメガは石井をエプロンに寝かせてニードロップをブチ込むと、さらに後頭部へのミサイルキック、蒼い衝動、Vトリガー、垂直落下式ドライバーなど猛ラッシュをかけるが、石井は口から流血しながらも意地のカウント2。ならばとオメガはニーパットをはずしてのVトリガーから片翼の天使を狙うも、石井はこれを切り返すと、ラリアット、頭突きの連発から再度ラリアットで1回転させ、なおもラリアット、頭突き。粘るオメガを垂直落下式ブレーンバスターでマットに沈め、ついに3カウントを奪い取った。

 敗れたオメガは、激闘の衝撃で唇を切り、口から大出血。予告していた「全勝優勝」の野望がついえた上に、心身共に大きなダメージを負ってしまった。現在は6勝1敗とまだ単独首位をキープしているが、敗戦ショックにより、残り2戦での大失速も考えられる。

 8.8横浜では、「何が飛び出すか分からない」矢野通戦。そして8.11武道館では、実に6年ぶりとなる盟友・飯伏幸太戦が控えている。新日本の歴史を次々と塗り替え、常に新しいことにチャレンジし続けてきたオメガが、この1敗を逆に糧として、3年連続決勝の舞台へと辿りつけるか。

 一方、石井は3勝4敗とすでに優勝争いからは脱落。とはいえ、IWGPヘビー級王者から値千金の1勝をもぎ取っただけに、この秋、王座初戴冠という大きな夢が見えてきそうだ。

ザックがジュースのUS王座を奪い挑発

ザック(左)がジュースに勝利を収め、通算4勝3敗とした。残り2戦は大物対決を控える 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 春の祭典NJCに続く春夏制覇を目論むザック・セイバーJr.は、現IWGP USヘビー級王者ジュース・ロビンソンを破り、試合後はベルトを手にした。

 昨年7月に米国で行われた同王座の初代王者決定トーナメントではザックが勝利。この日も得意のサブミッションで攻めるザックに対し、ジュースもキャノンボール、プリンスズスロウンなどを繰り出すと、自ら左手のギプスをはずして素手でナックルを炸裂。だが、パルプフリクションを切り返したザックがオーバーヘッドキックをたたき込むと、ジムブレイクスアームバーで捕獲し、さらに両足をロック。ジュースがたまらずギブアップした。勝利したザックは、オレのものだと言わんばかりにUSベルトを手にするも、ひとまずはジュースに返還した。

 これでジュースは2勝5敗と負け越しが決定。左手負傷のハンディがあるとはいえ、正攻法で戦っていながら、毎試合反則だらけのタマ・トンガと同じ点数というのは、同じ王者としてあまりにもふがいない結果だ。

 一方、ザックは4勝3敗。8.8横浜では現NEVER無差別級王者の後藤洋央紀、8.11武道館では内藤と大物対決が控えており、優勝争い抜きに、ガンガンとサブミッションを仕掛けて勝ち星を狙いにいきそうだ。

後藤は反則勝ちで不完全燃焼

後藤(右)とトンガの一戦は不完全燃焼の結末となった 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 後藤洋央紀はタマ・トンガに勝利するも、不完全燃焼の結末となった。

 BULLET CLUB OG結成以来、公式戦を毎回ブチ壊しているトンガ。今回もトンガの誤爆でマーティー浅見レフェリーが失神する間に、タンガが乱入し後藤にアバランシュホールド。合体技のゲリラウォーフェアは阻止し、ラリアットでタンガを追い出した後藤が、完璧なGTRを決めるも、今度はバッドラック・ファレがレフェリーの足を引っ張ってカウントを阻止。さらに浅見レフェリーを鉄柵にたたきつけたため、尾崎リングアナウンサーが反則のゴングを打ち鳴らした。

 だが、ファレは構わず、リングに乱入し後藤にグラネードを発射。すかさずトンガをカバーさせると、そこに駆けつけた海野レフェリーがカウントをたたこうとするが、異変を察し、改めてゴングを要請。後藤の勝利が認められた。

 これで後藤は3勝4敗。現NEVER無差別級王者として、敗れた相手にはキッチリ借りを返したいところだが、試合には勝利したとはいえ、この日のトンガ&タンガ&ファレも許せない存在だろう。一方、トンガは2勝5敗と負け越しが決定。もはや最初から勝敗にはこだわっていないが、残る公式戦もセコンド陣の乱入・反則は確実だ。

SANADAは矢野に技ありのリングアウト勝ち

SANADA(左)が矢野に2年連続のリングアウト勝ち。次戦は内藤との同門対決が控える 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 矢野通対SANADAは、SANADAが昨年に続き2年連続リングアウト勝ちを収めた。両者は昨年7.27長岡でも公式戦で対戦。この時はSANADAが花道で奇襲攻撃を仕掛け、さらに矢野の足をテーピングで固めてリングアウト勝ちを収めたが、今年は矢野が逆襲。先に入場してきたSANADAを花道で襲撃し、昨年のお返しとばかりに両足をテーピングで縛り、仕返しをはかる。だが、SANADAは足を縛られたままジャンプして花道を進みリングイン。矢野の丸め込みを切り返し、ローリングクレイドルから場外でパラダイスロックを仕掛けると、これは矢野のセコンドのロッキー・ロメロに助けられるが、ならばと今度は鉄柵を使ったロープパラダイス。再び助けに入ったロメロも一緒に固め、余裕のリングアウト勝ちを収めた。

 これでSANADAは4勝3敗。優勝の目はなくなったが、本人的には一番のクライマックスとも言える8.8横浜での内藤戦が目前に迫っている。ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン同門対決となるこの一戦。G1中、マイクアピールを行うなど、大きな変ぼうを遂げた寡黙な男が、多弁なボスにどのようにかみ付いていくのか。

 一方、矢野は1勝6敗とさらに黒星を増やし、もちろん自身の優勝は完全になくなったが、気になるのは8.8横浜でのオメガ戦だ。オメガの盟友・飯伏から1勝を奪った男が、現IWGP王者にも土をつけ、混沌とする優勝戦線をかき回すか。
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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