完全アウェーで勝利をつかんだ伊藤雅雪 瀬戸際でつかんだアメリカンドリーム
試合前は「本当に怖かった」
WBO世界スーパーフェザー級王座戦は伊藤雅雪(中央)が判定で勝利。完全アウェーの中での初戴冠となった 【Getty Images】
プロボクシングのWBO世界スーパーフェザー級王者になったばかりの伊藤雅雪(伴流)は、控え室でそこまで語って思わず泣き崩れた。
現地時間7月28日、米国フロリダ州キシミーのシビックセンターで行われたWBO世界スーパーフェザー級王座決定戦で、伊藤はクリストファー・ディアス(プエルトリコ)に3−0(116−111、117−110、118−109)の判定勝ち。新王者誕生の瞬間はいつでも劇的だが、この日も例外ではなかった。
激しい打ち合いでも伊藤がすべてで上回る
序盤から堂々としたボクシングを見せた伊藤(右)。さまざまなパンチを当て、4回にはダウンも奪った 【Getty Images】
しかし――。
開始ゴングが鳴ると、伊藤は初々しい言葉、態度からは信じられないほどの堂々としたボクシングを魅せてくれた。序盤からジャブ、右ストレートをクリーンヒットして主導権を握ると、4ラウンドには複数の右パンチを打ち込んでディアスは痛烈なダウン。後がない相手が中盤に盛り返してきても、ペースが落ちることはなかった。ディアスが得意とする左フックも致命打にはならず、ボディー打ち、アッパーまで含めた伊藤のさまざまなパンチが有効だった。
「1発もらったら2発返してやろう、2発もらったら3発返してやろうという気持ちでやっていました」
本人も胸を張った通り、結局は接近戦、中間距離、ロングレンジというすべての距離を伊藤が制した印象が残る。激しい打ち合いでファンを沸かせる好ファイトではあっても、内容的には伊藤の完勝。敵地での勝利は殊勲の星ではあっても、最終的にはより実力上位な選手が順当に勝ち残ったと感じられたほどだった。