小塚崇彦の“考えるドライビング” 氷上からアスファルトへ舞台を移して
コースデビューは「走っている途中にパニックに」
マニュアル車の運転はほぼ教習所以来と語る小塚、日々の練習で腕を磨いた 【写真提供:埼玉トヨペットGreen Brave】
「すごく緊張しました。走っている途中にパニックになるんですよね。ギアが何速に入っているのかわからなくなるし。曲がるたびに全部ギアチェンジしようとしていたのですが、途中からそのままいけると。バタバタしているうちに時間が過ぎ去っていきました」
「1個終わったら安心してしまい、次のことを考えるのが難しい。スケートのプログラムも一緒だと思うのですが、1つのジャンプが終わっても、次のジャンプ、そしてその次がある。それがどんどん頭の中に浮かんでくるようにすれば、ちょっとずつ見えてくるのかなと。ただ、まだ2回目ですから。ちょっとずつ慣れてくると思いますが、やっぱり集中力が必要ですね」
4月には単独でのサーキット走行も経験し、レース出場に必要な国内A級ライセンスを取得。GBエンタメならではのチームの万全なサポートも光っている。小塚選手はフィギュアスケーターとしての独特の視点で、フィギュアスケートとサーキット走行の共通性をこう表現した。
「スケートリンクのサイズはリンク毎に違いますし、滑るところや氷の状況、スピードの出る感覚も違います。サーキットは氷と同じかな。スケートは決められたことをやっていき、そこに穴や溝ができていたら、よけながら滑る。レースではクルマや落ちているものをよけなければいけない。決まっているところは決まっていますが、臨機応変にやらなければいけないところもある。ひとつのプログラムを滑るのとサーキットを1周まわってくるのは似ていますね」
クラッシュを経験するも、冷静に分析
「タイム的にも37秒台前半が出て、いい感じで攻めていけたし、密山選手から言われていた荷重移動もつかめてきていました。右行って、左行って、その反動でまた右にという感じだったので。お、いいなと思いながらやっていて、集中していたのですが、経験不足ですね。プロの人や、何度も何度も乗りこなしている人だったら、あの(クラッシュの)瞬間で行けるって思わないで、“キュッ”と止まることができるのだと思います。乗りこなしていって、慣れていくしかないですね」
第5戦のクラブマンシリーズのエントリー台数は今シーズン最多の110台(7月10日時点)。全車が一度にスタートできるのは45台のため、予選上位組と下位組に分かれて決勝レース(10周)が行われる。残り20台は予選落ちで、土曜日で足切りである。デビューレースを迎える小塚選手にとって、予選通過も保証されていない状況だ。
小塚選手の練習は今も続いており、6月にはTOYOTA GAZOO Racingの一般向け走行プログラムに参加。さらにレース直前まで毎週のように走行スケジュールが組まれている。もちろん、第5戦のエントリー状況に関しては小塚選手の耳にも入っているはずだ。
「プロドライバーの同乗走行を体験した後、人の走りをマネるとうまくいくと思いました。ぼくにはフィギュアスケートで鍛えたマネする力がありますから」
レーサー・小塚崇彦誕生まであと数日。時間を削りとるための“考えるドライビング”は続く。
(映像提供:J SPORTS)