ヤングマンのカーブを堀内恒夫氏が絶賛「最近お目にかかったことがない」

週刊ベースボールONLINE

オープン戦とは別人だったヤングマン

8回無失点と鮮烈デビューを飾った巨人の新外国人ヤングマン。長身から投げ下ろすカーブに、かつての名投手・堀内恒夫氏も絶賛した 【写真=佐藤真一】

 巨人の新外国人投手のヤングマンがあまりにも鮮烈なデビューを飾ったので、触れておきたい。7月1日、ナゴヤドームでの中日戦。外国人選手の1軍登録枠の関係で開幕からずっとファームで投げていた投手に、カミネロの不振、登録抹消で、ようやく1軍での登板チャンスが巡ってきた。ヤングマンは、その思いをぶつけるように投げて8回を零封。苦しい台所状況の巨人投手陣の救世主になった。

 オープン戦では2試合に投げた。初登板はまずまずだった(3月6日の千葉ロッテ戦、4回2失点)が、2試合目の福岡ソフトバンク戦(3月13日)では、ボールに目を見張るものがなく、5回で10安打を浴びた(5回5失点)。コントロールにもやや不安があるという印象だった。首脳陣もそう考えたのだろう。マシソン、カミネロに代わって1軍に登録するまでの力はないと判断したのかもしれない。

 しかし、ファームで地道な練習を続けてきたのが実を結んだのだろう。4カ月後に見たヤングマンは別人になっていた。コントロールが良くなっていた。4回に2死から連続四球を与えてヒヤリとさせたが、不安を見せたのはそのときだけ。四球もその2つだけに抑えた。

打者に恐怖感与えるインステップ投法

 だが、ヤングマンが何よりもすごかったのは、インステップして投げるその投法だ。前に踏み出す左足が三塁方向にクロスして出る。そこから上体を折るように、ひねりながら打者に向かって投げていく。日本人投手ではあまり見たことがない投げ方だ。中日の打者もさぞ面食らっただろう。あれだけインステップして投げられると、特に右打者はボールが抜けて自分のほうに向かってくるようで、恐怖感を覚えるはずだ。

 そして、左打者の内角を突いてくるボールが、スライダーなのかカットボールなのか、スピードガンの表示ではストレートよりも3、4キロ遅いだけの142、3キロの球だ。大島洋平、京田陽太ら左打者がいかにも打ちづらそうにしていたのは、内角の球がさらに食い込んできて詰まらされたからだ。

 本来、スライダーという球はストレートとそれほど球速差がない球だ。今、どこの投手でも「スライダー」と言っている球は、ひねって投げているから、球速はストレートに比べてかなり遅くなる。実際には「カーブ」と言ってもいい球だ。伝説の大投手、稲尾和久(元西鉄)さんが投げていたスライダーは、今どこの投手が投げるスライダーよりもはるかに速く、曲がりは小さかった。本来スライダーという球は、ストレートに見せかけて、そこから少しだけ曲がるからバットの芯を外せるのだ。ヤングマンの球もこれに近い。

 さらに、この投手には最大の武器がある。タテに大きく曲がるカーブだ。ストレートとの球速差が30キロあり、198センチの長身でただでさえ上目遣いでボールを見なければならない打者の、さらに頭上から曲がり落ちてくる。コントロールも良く、カウント球にもウイニングショットにもしていた。あんなにいいカーブを投げる投手に最近、お目にかかったことがない。私の記憶する限りでは、半世紀ほど前、高校から入団してすぐにドロップのようなタテ割れのカーブでプロ野球界の先輩打者たちをキリキリ舞いさせた巨人のルーキー以来ではないか。というのが、今回の結論だ(笑)。
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