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W杯ロシア大会、新ルールの効果を考える
賛否両論のVARとフェアプレーポイント

テクノロジーとの向き合い方は大きなテーマに

今後のサッカー界でも、テクノロジーとの向き合い方は大きなテーマとなっていくに違いない
今後のサッカー界でも、テクノロジーとの向き合い方は大きなテーマとなっていくに違いない【Getty Images】

 バルセロナ在住のアルゼンチン人ジャーナリストで、日本のメディアにも数多く寄稿しているフリーランスのセルヒオ・レビンスキー記者も「主審も人間だから、さまざまな外的要素でVAR判定を使うか使わないかが微妙にブレてくる可能性がある」と懸念していた。


「今の時代はSNSの普及が進み、ツイッターやWhatsAppなどを通して、ファンやサポーターの声が一瞬にしてピッチに関わる人間の耳に届きます。ある主審が1つの試合でVARを使わず、批判の声が殺到したとしたら、次の試合では『VARを使わなければいけない』という強迫観念を持ちながら、レフェリングをすることも考えられます。そういう事態を避ける意味でも、VARを使う場面をもっと明確に定めるべきではないか。そう感じます」と彼は神妙な面持ちで語っていた。


 テニス界では2006年からいち早く「チャレンジシステム」が導入され、1セットにつき1人3回まで権利を行使することが認められている。バレーボール界でも14年から「チャレンジシステム」が正式導入されていて、ビデオ判定はスポーツ界の主流になりつつある。テクノロジーとどう向き合っていくかというのは、もはやスポーツ界では避けられない重要テーマに他ならない。


 そのテクノロジーを使うのが人間であり、サッカーがテニスやバレーボールとは異なり、流れが切れるタイミングの少ない競技であるがゆえに、なおさら難しくなる。VARやGLT(ゴールラインテクノロジー)の活用を頻繁にしすぎると、サッカー本来の「人間がやるスポーツ」という面白さが損なわれる可能性もあるだけに、そこも配慮すべきところだろう。


「多くの人に不公平感を与えないようなVAR活用を進めていくためには、もっともっと議論が必要だと思います。今回のロシア大会はあくまでトライアル。ここで出た課題や問題点をFIFAが中心となってしっかりと検証し、正しい方向性を打ち出していくこと。それを強く求めたいです」とブラジルのサッカーサイト『R7.com』のアンドレ・アブラー記者も強調していた。さしあたって、今大会の総括やテクニカルリポートを待ちたい。

FPPには「あまりいいシステムではない」という指摘も……

日本の善戦によって、それほど多くの議論にはならなかったFPP。定着するかは、今後の適用例次第だろうか
日本の善戦によって、それほど多くの議論にはならなかったFPP。定着するかは、今後の適用例次第だろうか【Getty Images】

 その他の新ルールに関しては、報道関係者の間でそこまで活発な意見が交わされることはなかった。しかし、FPPに関しては「あまりいいシステムではない」といった強硬意見もあり、FPPの差でセネガルを抑えてベスト16入りした日本の人間としては、複雑な思いを抱かざるを得なかった。


「フェアプレーポイントでセネガルを上回っている日本が、ポーランド戦の終盤に0−1で負けているにもかかわらず、時間稼ぎのためにボール回しをしたことは、世界中にマイナスイメージを与えた。やはりそれは事実です。ただ、日本は続くラウンド16のベルギー戦で非常にハイレベルでエキサイティングな試合をした。日本の善戦によって、フェアプレーポイントの問題がそれほど語られなくなった部分はあったと思います」と前出のバレイカ記者は率直な感想を口にした。


 彼の言うように、もしも日本がベルギーに惨敗していたら、同ルールに関してはもっと物議を醸していたはずだ。日本の健闘もあり、4年後の22年カタール大会でも、このルールは適用されるかもしれない。しかし、定着するかどうかは今後の適用例次第だろう。


 新たなルールが悲喜こもごもの結末をもたらしたロシア大会。繰り返しになるが、そのプラス要素とマイナス要素の検証はしっかりと行うべきだ。それを踏まえて改善を図り、サッカー界やW杯の発展につながるような方向性を、FIFAには示してほしい。

元川悦子
元川悦子

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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