スペインの“ティキタカ”は自己満足か? 今の代表に必要なチャンスとゴール

アルゼンチンもスペインと同様の問題を抱える

アルゼンチンもまた、スペインと同様の問題を抱えている 【Getty Images】

 この問題はアルゼンチン代表にも当てはまる。スペインほどタレントに恵まれておらず、中盤のオーガナイザーとなる人材も出てこない中で、アルゼンチンはスペインと同様のポゼッションスタイルを志向してきた。

 フランスに敗れた決勝トーナメント1回戦で、ホルヘ・サンパオリはリオネル・メッシを“ファルソ・ヌエベ”(偽9番=センターFW)とする4−3−3のシステムを採用したが、彼の選択は明らかに間違っていた。

 第一に、アルゼンチンにはセルヒオ・アグエロ、ゴンサロ・イグアインというトップレベルのストライカーが2人もいた。彼らをそろってベンチに座らせてまで、ほぼぶっつけ本番でこのシステムに賭けるメリットがあったとは思えない。

 またサンパオリはバルセロナをモデルとしてこのシステムを採用したはずだが、バルセロナがメッシをファルソ・ヌエべに起用する際には、メッシの動きに合わせて前線に生じるスペースを利用させるべく、常に得点力の高いFWを同時起用してきた。

 しかし、サンパオリがフランス戦で送り出したのはサイドアタッカーと攻撃力の低いボランチだった。結果的に前線で孤立したメッシはボールを求めて中盤に下がらざるを得ず、実質的には“ファルソ・メディオセントロ”(偽MF)としてプレーすることになった。結局サンパオリは後半になってミスを認め、前線にアグエロを投入してロジカルなシステムに修正したものの、逆転ゴールを奪われた後ではすでに手遅れだった。

新監督ルイス・エンリケに求められるのは?

新監督となったエンリケに求められるのは、プレースタイルを大幅に変更することではない(写真はバルセロナ監督時代のもの) 【Getty Images】

 人材難が深刻なアルゼンチンとは違い、スペインがこの問題を改善するのはそれほど難しいことではないはずだ。イエロの退任が決まった後、スペインフットボール連盟(RFEF)のルイス・ルビアレス会長はルイス・エンリケを新監督に招へいしている。

 新監督に求められるのは、10数年継続してきたプレースタイルを大幅に変更することではない。今のスペインに必要なのは、フットボールの勝敗がゴール数で決まること、中盤のオーガナイザーは2人いれば十分であることを理解した上で、少なくとも得点力の高いFWをもう1人、そして1、2人のサイドアタッカーを起用してチャンスとゴールをより多く作り出すことだ。

 W杯で準決勝まで勝ち上がった4チームを見れば、重要なのは形を問わずゴールを奪うことであることが分かるはずだ。ゴールがなければ、フットボールは退屈で味気のないものになってしまう。華麗な“ティキタカ”スタイルも、ゴールを伴わければ、ただの自己満足なプレーにすぎないのである。

 とはいえ、もちろん相手にボールを受け渡せばいいわけではない。ポゼッションを放棄し、ライバルのミスを突くフットボールでも勝てる試合はあるだろう。だが相手のミスを待ち続けるだけでは、相手がミスを犯さなかった場合、そうでなくともリードされた場合に打つ手がなくなってしまう。

 いくらゲームを支配しても勝てる保証にはならないが、受け身のフットボールにも限界がある。だからフットボールは奥深く、多くの人々を引きつけてやまないのである。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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