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戸田和幸が感じたフランスの思いの強さ
ベルギー相手に、勝利に必要なことを徹底

フットボールインティジェンスの高いエムバペ

試合を決めたのはセットプレー。後半6分にウムティティ(中央)が決勝点
試合を決めたのはセットプレー。後半6分にウムティティ(中央)が決勝点【写真:ロイター/アフロ】

 試合を決めたのは、またしてもセットプレー。しかし、そこに至るまでにはフランスの巧みなビルドアッププレーがありました。後半5分、ゴールキックから始まったフランスの攻撃。やや中途半端なライン設定で守備に入ったベルギーの「緩さ」をフランスは逃しませんでした。ファーストディフェンダーを決められず、ややダラダラとした動きでミドルゾーンに構えたベルギーに対し、フランスはエルナンデスにウムティティからパスが入ります。


 中盤の守備陣形がはっきりしなかったベルギーはエルナンデスをフリーにしてしまい、その時には既に「水を運ぶ人」マテュイディが右サイドバックのシャドリとアルデルワイレルトの間に入り込み、エルナンデスから素早い動作で斜めのパスが入ると、コントロールしてすかさずジルーにパス。ボックス内でパスを受けたジルーはコンパニを背負ったところから反転して右足シュート。これはコンパニもうまく対応し、足を出してコーナーキックに逃げましたが、このコーナーからフランスが先制点を挙げることとなりました。


 準々決勝のウルグアイ戦では、ウムティティの相棒であるバランが相手ストーンのクリスティアン・ストゥアーニのほんの鼻先でコースを変え、貴重な先制ゴールを挙げました。この試合でもベルギーで一番身長が高いフェライニの前を明確に狙ってウムティティは走り込んでいます。


「そこにはフェライニがいるから」という相手の心理を逆手に取ったのかもしれないと感じさせる、非常にタクティカルなゴールに見えました。そしてウルグアイ戦、ベルギー戦と拮抗(きっこう)した展開を動かす重要なゴールを導き出したキッカーのグリーズマン。今大会はジルーとともにエムバペを伸び伸びとプレーさせてあげようというチームありきの献身的なプレーが目につきますが、やはりクオリティーの高さはさすが。ハーフライン手前左が一番のホットゾーンとなっていることからも、いかにチームのゲームプランや自らに与えられたタスクに忠実に働いていたかが分かります。


 マテュイディも同様で、一番パーセンテージが高いエリアはまさに左サイドバックが守備を行うエリアです。しかしこの選手のすごいところは、左ウイングのエリアでも同じくらいのパーセンテージを記録していること。それはポグバとカンテについても同様です。


 それだけのエリアがカバーできる身体的な能力はもちろん、的確なポジション取りでパスコースを消し、もしくはあえてパスを出させてカットするなど、さまざまな駆け引きがピッチの上で行われていました。あらためて彼らのフットボールインテリジェンスの高さを思い知った試合となりました。


 アルゼンチン戦以降の2試合では、よりスペースを消された状態でのプレーが続いているエムバペについては、試合開始早々に鋭角な切り返しでベルトンゲンを置き去りにするドリブルを見せたり、パバールの決定機につながるスルーパスを出したりと、少しでもスペースを与えれば相手守備陣を混乱させることができる選手だということは、この試合でも証明しました。


 また、状況把握・空間認知の能力が高く、より良いポジショニングを取ることができるので、それが判断にも良い形でつながっています。後半11分のカウンターの場面でも、奪った後の1つ目のパスをバランから受けた際、角度・身体の向きがしっかりと作れているのでベルトンゲンの寄せを1タッチフリックでかわしてスペースへと走っています。その後、ポグバからのリターンを受けた後も逆サイドを駆け上がってきたマテュイディに1タッチでスルーボール。次の選手がより良い状態でプレーができるタイミングでボールを離すことができるのも、この選手の大きな魅力です。最終的にはボックス内でジルーにトリッキーなパスを送るところまで見せました。19歳という若さからは考えられない判断力の高さ、フットボールインティジェンスの高さをこの試合からも感じました。

ムニエの不在が大きかったベルギー

優勝するためにデシャン監督(右)は決勝でどんな人選、戦い方を選び徹底してくるか
優勝するためにデシャン監督(右)は決勝でどんな人選、戦い方を選び徹底してくるか【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 一方、敗れたベルギーは、やはり累積警告により出場停止となったトーマス・ムニエの不在が大きかったと感じました。シャドリもよく代役を務めたと思いますが、重戦車のごとくアップダウンを繰り返しながらも高質のクロスを提供できるムニエの存在は大きかったと感じました。また、1つ前のポジションに上がったデブライネは得意の角度、ボックス角外もしくは深い位置まで走り込んでのクロスが思うように出せずに終わりました。


 この試合はデンベレが中盤センターでビツェルとコンビを組みましたが、ボールを持ち運ぶ能力に優れたデンベレだからこそのロストがこの試合は目立ってしまい、彼のところでボールを動かし、チームを回していく働きができなかったこともデブライネのパフォーマンスに若干影響したと思います。


 アザールの独力突破に相変わらずのすごみを感じながらも、終盤、得点を奪いにいかなくてはならないときに、センターバック3枚は多くなかったか。ブラジル戦は見事「肉を切らせて骨を断つ」ような戦い方で勝利をものにしたベルギー、マルティネス監督でしたが、攻撃力があるとはいえ、フランスがあれだけ守りを固めていたことを見ても、ミシー・バチュアイの投入は遅すぎたと思いますし、2バックにしてもうひとつリスクを負った戦い方に賭けても良かったのではと感じました。


 大会を勝ち上がりながらチームとして成長してきたフランス。ジルーも含め、自陣に戻り徹底的に守る戦いを批判する声も出ていましたが、そこまでしてでも勝ちたい試合だったというフランスの思いの強さを見た気がしました。


 勝利をつかむために必要なことを徹底して行う。そこにロマンはないかもしれませんが、所属クラブでは絶対に見せることのない、選手たちの必死のプレーぶりにこそ、これがW杯であり、4年に1度だからこその特別なものが懸かっていることがよく伝わってきましたし、W杯の重さを表しているのだと感じました。


 いよいよ残すは決勝戦と3位決定戦のみ。優勝するためにデシャン監督はどんな人選、戦い方を選び徹底してくるのか、非常に楽しみです。

スポーツナビ

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