超高校級ショートのラストサマー〜報徳学園・小園海斗のモチベーション〜

沢井史

ケガで万全な状態ではなかった春

走攻守3拍子そろった報徳学園・小園。高校生ナンバーワンショートとして高い評価を得ている 【沢井史】

 さかのぼること約4カ月前の今春のセンバツ大会の4日目。朝7時前の開門を待つ観客の行列の中に報徳学園・小園海斗の姿があった。

「恭大(藤原=大阪桐蔭)の試合を見に来たんです」

 この日は第2試合で大阪桐蔭と伊万里の試合が行われる日だった。大阪桐蔭には、中学時代に枚方ボーイズでともに汗を流した藤原が在籍している。練習がオフの月曜日だったとはいえ、わざわざ大舞台での球友の姿を目にするためにやってきた小園の心の中には、もちろんセンバツにまた出たかった断ち切れない思いもあったが、ネット越しに見る球友のプレーに心を動かされながら、心の中に燃えるものがあった。

「何が何でも夏の甲子園に出る」

 昨秋の県大会の3回戦で明石商に敗れ、翌春に再起を誓ったものの、春の県大会の初戦では滝川二に1対2で敗れ、チームは夏の第1シードを逃した。実はその試合の約2週間前に行われた地区大会で、小園はショートのポジションで相手のスライディングした足が膝に当たり、負傷。縫合の処置を受けていた。痛みもあったため、しばらく実戦から離れ、試合の直前に本格的に練習に復帰したものの「緩い球を打つ練習をしたくらいで、まだちゃんと練習に入れていない状態でした」と万全な状態ではなかったのだ。

 結果は3打数無安打と本領を発揮できないまま終わった。試合後、球場外で涙に暮れるチームメイトを横目に、目を真っ赤にした小園は感情を何とか抑えようとしていたが、試合後の囲み取材では、最後までケガは言い訳にしなかった。ただ、「今思うと、勝ちたくてチーム全体が長打を狙いすぎていました。冷静に野球ができていなかったですね」と当時の自分たちの姿勢を悔やんだ。

報徳学園・小園海斗の打撃フォーム

本塁打増も「理想は中距離ヒッター」

 県大会敗退後、5月に入るとゴールデンウイークは校内の宿舎施設に泊まり込む恒例の合宿が報徳学園にはある。早朝に近くの山でランニングをして朝の8時にはノックを開始。そこからバッティングが始まり、午後のメニューに挑むという過酷なもの。厳しい練習を全員でこなしていくことで、“これだけやれば自分は絶対に打てる”という自信がつき、何よりチームに一体感が生まれてきた。ゴールデンウイークが明けると週末の練習試合では10点以上取る試合が増え、チーム全体の攻撃力に力強さが増した。小園自身の打球の質も明らかに変わったという。

「この前の練習試合で対戦相手の二塁手が一塁寄りに守っていて、明らかに自分が引っ張りにかかっているのが分かる守備シフトを敷いていたんです。“ここには打ちたくないな”と思ったんですけれど、追い込まれてもその間を抜く強い打球を打てました。相手が分かっていても、敢えてその方向に強い打球を打てたことは良かったです」

 ホームランの数が急激に増えたことも成長の証だ。ホームランの数は現在36本まで伸びている。ただ、小園はホームランの数は求めていない。

「自分が目指すのは中距離ヒッター。ヒットの延長がホームランだと思っているので、低いライナー性の当たりが理想です」

 飛距離が伸びた要因はパワーアップだが、暑くなった今は体重を落とさずに今の体重を維持することに努めている。現在、体重は79キロ。体重をきちんとコントロールしつつ、昨秋から明らかに腰周りがたくましくなった姿は見て取れる。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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