楽天の希望「タナモギアイランド」 1番・田中和基は柔軟性で急成長

週刊ベースボールONLINE
 低迷する楽天打線の中で、シーズン途中からトップバッターという大役を任されている。立教大からドラフト3位で入団した2年目のスイッチヒッターが、殻を破るきっかけ、そして現在地を語る。

 再調整という形で2軍落ちをすると、そのまま2軍でシーズンを終える者と、すぐに1軍へ戻ってきて見違える姿を見せる者がいる。特に若手は、どちらかにはっきり分かれる。大卒2年目の田中和基は後者だった。開幕1軍を勝ち取るも、わずか1週間で2軍落ち。しかし約1カ月半後の5月23日に1軍復帰すると、打席での立ち姿に明らかな変化があった。それまでは代走・守備固めでの起用がメーンだった男が、一時は3番打者を担うなど今や攻撃に欠かせない選手となっている。

当たったすり足打法への変更

「タナモギアイランド」の一角としてチームに欠かせない選手となった田中和基 【写真:BBM】

 2軍で再調整となり、ファームの試合でもまったく打てていなかったときに池山(隆寛、2軍)監督から、「大谷君(翔平、エンゼルス)はタイミングを取るためにノーステップにして打ちよるぞ」と言われたんです。マネをしたわけではないのですが、そういうのもありだなと思って。僕はタイミングを取るのが下手くそなので、思い切ってやってみたんです。

 すり足自体はあまりやったことがなく、昨年は右打席の際に、2ストライクに追い込まれてから試したりはしていたんですけど、左打席では初めてでしたね。ただ、形がないという言い方も変ですが、僕には「これがいい」という形が自分でも分かっていなかったので、変えることにあまり抵抗がなく、すんなりとできたかなと思います。

 すり足にしたことで、タイミングが取りやすくなったと思います。足を上げていたときは、ピッチャーに合わせて足を上げるのですが、その取り方が下手だったので、タイミングがうまく取れなかったんです。ですが、ノーステップで最初から打てる体勢を作っておけば、あとはピッチャーが投げた球に対して振るだけなので、タイミングが取りやすくなりました。普通は足を上げたほうが強く振れるのでノーステップにしたら飛距離は落ちると言われているのですが、僕の場合は、足を上げて打つときも、あまり力が入らない位置でバットに(ボールが)当たってしまっていた。今はノーステップの中では一番強いところに当たっているので、この形にしても飛距離は変わらなかったのかな、と思います。

 本塁打の数が増えたと言われますが、長打を求めているわけではないので、たまたまいい結果になっただけかなと思っています。僕の武器は長打ではないですから。やっぱり足を生かさなければいけないので、まずは塁に出ること、ヒットを打つことだけを考えています。これまで打ったホームランも長打を狙っていたわけではなくて、ピッチャーのいいボール、速い球がたまたまバットのいいところに当たっただけなので、今のスタイルは変えずに、ヒットの延長が長打になればいいなと思ってやっていきます。

栗原コーチも驚いた打席内での工夫

打席で工夫を重ねる姿には栗原コーチも舌を巻く 【写真:BBM】

 栗原健太コーチは、打席で工夫をする田中を見て「その発想はなかった」と舌を巻いた。それが、6月1日のヤクルト戦(楽天生命パーク)でのブキャナンとの対戦。低めのチェンジアップに手を出さぬようゾーンを上げて立ったが1打席目、2打席目とその球を振ってしまう。そこで構える際に半足分狭くし、少しヒザを伸ばして立ったのだ。そうして目線を高くし、低めを見ないようにすることで3打席目に四球を得た。

 今まで打席の中で工夫していなかったから、昨年も結果が出なかったですし、ファームでも結果が出なかったのではと考え、打席内で全然違う形でやってみようかなと。ピッチャーも一人ひとり違うので、ずっと僕が同じ打ち方をしていても打てないと思うので、ちょっとずつ変えてみるなど、工夫をしようという努力はしています。

 こういったことは1軍に上がってからやるようになりました。やっぱり1軍のピッチャーは打てる球が少ないので。その打てる球を打つために何をしようかなと考えたことで、いろいろ工夫ができているんじゃないかなと思います。

 ただ結果に関しては、その工夫がたまたまかみ合っただけ。ピッチャーによって、これからも変えていきます。全部が全部、うまくいくとは限らないですけど。

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