“バズる”こと確実な因縁のリマッチ 2人の価値を左右するゴロフキンVSカネロ
ともに嫌悪感を漂わせた“顔合わせ”
前回のプレスカンファレンスでは顔を合わせた2人だったが、今回はSNS上による二元中継という異様な形での会見となった 【Getty Images】
「僕たちはみんながっかりさせられた。カネロのようなレベルの選手はリスペクトするが、失敗したのは彼らであり、(5月にセットされた)リマッチができなくなったのは僕が決めたことではない。チームが失敗したのだろう」
トレードマークの笑顔が影を潜めたゴロフキンは、無表情のままカネロとその陣営にそう言い放った。一方、カネロも「(相手への)尊敬の思いはもうなくなったよ。様々なことを言って僕を馬鹿にしてくれたからね」とばっさり。画面を通しても両者の嫌悪感は伝わり、終始冷たい雰囲気のプレゼンテーションだった。
リマッチ消滅の危機も条件変更で回避
オスカー・デラホーヤ氏は「互いをリスペクトする気持ちはもう吹き飛んでしまった。そんなとき、リング上では魔法のようなことが起こる」と激戦を予想 【Getty Images】
この件でゴロフキンは激怒し、「ウソを言っている。薬物を使っているよ」「ウソ発見器にでもかければ良い」とアルバレスを激しく口撃。態度を硬化した統一王者は仕切り直しの再戦交渉でも50/50に近いファイトマネーを要求し、おかげで9月のリマッチは消滅寸前までいった。最後はカネロが55%、ゴロフキンが45%というゴロフキン寄りの条件でなんとか成立したが、すべての過程で、2人のファイターとそのチームの間には真の因縁が生まれるに至ったのだった。
「互いをリスペクトする気持ちはもう吹き飛んでしまった。しかし、そんなとき、リング上では魔法のようなことが起こる。両者ともに素晴らしい状態で試合に臨み、すごいファイトを目撃できるだろう」
カネロを擁するゴールデンボーイ・プロモーションズのオスカー・デラホーヤがそう述べる通り、ここまでの紆余(うよ)曲折は次戦に好影響を及ぼすことになるのだろうか。
遺恨、スキャンダルがビッグビジネスに繋がるのがボクシング界の常。「交渉段階で大きな話題になったから派手なプロモーション活動は必要ない」という判断ゆえに、会見ツアーは行われないという。「試合までにもう顔を合わせたくない」という両者の希望から、前述通り、7月3日の会見も二元中継という珍妙なスタイルになった。
こんなエピソードも新たなスパイスになるのだろう。第1戦ではPPV売り上げ130万件、ゲート収入も2700万ドル(約30億円)という好成績を収めたが、リマッチではより良い数字が出るのはほぼ間違いない。今後、本番が近づくにつれて話題は膨らみ、今年度最大の一戦はそれに相応しい“Buzz”を帯びていくはずである。