「もやもやしていた」大谷の復帰戦 試合後に一瞬のぞかせたケガへの感情

丹羽政善

約1カ月ぶりの出場となった大谷。この日はノーヒットに終わった 【写真は共同】

「もやもやしていた」

 復帰戦となった3日(現地時間)の試合後、大谷翔平はこう口にした。

 6月6日、ロイヤルズ戦登板後に、右ひじに違和感を覚えた。翌7日にMRI(磁気共鳴画像診断装置)検査を受けると、右ひじ側副靭帯に損傷が見つかる。結果、およそ1カ月もの離脱を迫られた。

 もっとも大谷自身、「こんなに長く離れるとは思っていなかった」そうで、こうも言っている。

「自分の体感としては、全然、行ける感じだった」

 体は動くのに試合に出られない。チームが負けを重ねる。離脱以降、8勝14敗。もどかしさを抑えることのほうが、リハビリよりも酷だった。

急仕上げも「行けると思った」

 28日に再検査。投球練習再開の許可は見送られたが、打撃練習が解禁となると、早速その日から、大谷は堰を切ったようにバットを振った。

 28、29日は通常の打撃練習。30日と7月1日は、マイナーリーグの投手を相手に実戦形式の練習を行うと、それぞれ10回ずつ打席に立っている。2日の練習内容に関しては判明していないが、午後にはシアトルに移動し、3日に復帰。両手でバットを振り始めてから、5日目のことだった。

 急仕上げの感は否めない。しかし、大谷は言う。

「ちゃんと段階を踏み、僕自身もそうですし周りのスタッフの方もそうですし、行けると思ったので、今日ここにこうやって試合に出してもらった。実戦の中で行けるんじゃないかなという感覚は、練習の時からあった」

 練習というのが、具体的にいつのことを指しているか分からないが、大谷の中ではきっちりプロセスをこなした。実戦でも大丈夫、という手応えがあったからこそ、復帰を決めた。

実戦復帰は早すぎた?

 結果的にこの日の復帰戦、3三振に倒れた。当然、実戦のリズムを欠いていたのでは、とも見られる。マイナーの試合に出場して、もう少し、実戦感覚を取り戻してからでも遅くなかったのでは――。

 確かに――特に、3打席目の見逃し三振は大谷らしくなかった。見逃した球は、明らかにストライク。2ストライクから見逃す球ではない。しかも、むしろ彼が得意とするコースである。まったく、想定外の球だったのか。

 大谷自身、「もちろん相手投手が良かったというのもあると思うんですけど、1打席1打席の中で甘い球っていうのが何球かあったと思うので、そこをなかなか捉えていけないというところっていうのはあった」と振り返る。

 だが、実戦から遠ざかっていることが原因かと問われると、こう答えた。

「実戦感覚のズレなのか、ただ単に自分の中のズレなのかは、今後、明日、あさってやっていく中で分かるんじゃないかなとは思う」

 否定はしないが、まだ、結論を出せるものではない。そこはもう少し、見極めを要する。

 少なくともマイナーでリハビリをすべきだったのでは、という見方をこう否定した。

「実戦形式の練習はしていたので、むしろそっちの方が打席には立てる、効率よく回っていけるんじゃないかなとは思うので、自分としてはいい形でやらせてもらった」

 イチローもこの春、右ふくらはぎを痛めて離脱すると、復帰の過程では毎回打席に立つ実戦形式の試合で調整している。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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