首位通過で「厳しい道」を選んだベルギー それでも国内は16強の日本戦に楽観ムード

中田徹

「2位通過で日本戦が理想的」という風潮

右からデ・ブライネ、ルカク、E・アザールら、グループリーグ第3戦は主力を温存 【Getty Images】

 ワールドカップ(W杯)ロシア大会のグループGは、ベルギーとイングランドがチュニジア、パナマ相手に2連勝を飾り、あっさりラウンド16進出を決めてしまった。かなり予想通りの展開だったのだが、中には「第3節の直接対決はすごい試合になりそうだ」と巨額のお金を費やしてカリーニングラードまで飛んできたベルギー人もたくさんいて、エデン・アザール、ロメル・ルカク、ケビン・デ・ブライネ、ドリース・メルテンス(途中出場)ら、レギュラーメンバー9人を温存した代表チームにガッカリしていたらしい。

 試合が始まり、19分にユーリ・ティーレマンスが、33分にレアンデル・デンドンケルがイエローカードをもらうと、ベルギーサポーターから喝采が湧いた。もし、ベルギーとイングランドの対戦が引き分けに終わったら、両チームの順位はフェアプレーポイントで決まる。ベルギーでは「2位になったほうがトーナメント戦になってからの日程が優位」という意見が多数を占めていたのだ。

 もしベルギーが1位でグループGを終えると、ロストフ・ナ・ドヌ(ラウンド16)→カザン(準々決勝)→サンクトペテルブルグ(準決勝)→モスクワ(決勝)で試合をすることになる。ベルギーがもし、モスクワ近郊にあるキャンプ地を離れないとして計算すると、合計5200キロほどの距離を移動することになる。

 しかし2位でグループGを通過したならばモスクワ(ラウンド16)→サマーラ(準々決勝)→モスクワ(準決勝)→モスクワ(決勝)と移動距離はわずか2100キロ。しかも、ブラジル、フランス、アルゼンチン、ポルトガルといった強国と決勝まで当たらないで済む。

「ベルギーは2位を狙うべき。その上でラウンド16の対戦相手が日本になれば理想的」。それが、外側(メディア、サポーター)からの意見だった。ロベルト・マルティネス監督は、さすがに「2位を狙う」とあからさまには言わなかったが、「それでもイングランド戦は、勝利にプライオリティーを置かない。この試合はお祭り試合だ」と勝負に固執しないことを明言していた。

ベルギー、日本戦の守備陣チョイスは?

イングランド戦で後半途中から今大会初めてピッチに立ったコンパニ。日本戦出場はいかに 【Getty Images】

 しかし、思いの外、ベルギーもイングランドもゴールを奪いにいった。51分にはアドナン・ヤヌザイが、足裏を使ったテクニックでマークを剥がし、左足でカーブをかけたシュートをファーサイドに決めてベルギーが先制すると、追うイングランドも66分、マーカス・ラッシュフォードが絶好機をつかんだが、GKティボー・クルトワのスーパーセーブに阻まれて同点に追いつけなかった。こうしてベルギーは1位になり、優勝を狙うには移動も、対戦相手も厳しい道を選ぶことにした。

 ベルギーのサッカーコメンテーター、ペーター・ファンデンベンプトが「ベルギー対イングランドは、17人もの控え選手が混ざった退屈な練習試合だった。インテンシティー(プレー強度)も、テンポも、緊張感もなかった」と酷評したように、典型的な消化試合だった。それでも、サッカーの質ではベルギーがイングランドを上回っていたのは確かだ。

 イングランド戦では、うれしい話題があった。ハムストリングを痛めていたトーマス・ベルマーレンがセンターバック(CB)として74分間出場し、そけい部を痛めていたバンサン・コンパニも残り16分間プレーしたのだ。この2人のコンディション不良によって「ベルギーのアキレス腱はCB」と言われていたが、トビー・アルデルワイレルト、ヤン・ベルトンゲン、そして負傷した2人に代わって今大会、予想以上の大奮闘を見せているデドリック・ボヤタと、一気にベルギーはCBのやり繰りに困らなくなった。

 果たして日本戦は、これまでのアルデルワイレルト、ボヤタ、ベルトンゲンで行くのか、それともボヤタを外してコンパニかベルマーレンを入れてくるのか。マルティネス監督の采配が興味深い。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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