消化不良のポーランド戦を戸田和幸が分析 議論すべきは「長谷部投入後」ではない

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危険なカウンターを何度も食らった日本

左SBの長友が上がった裏のスペースをポーランドは何度も突いた 【Getty Images】

 しかし……。

 4、23、32、37、53、62、74。

 この数字は、日本がポーランド戦で「カウンターを受けてしまった」時間です。2敗を喫し、W杯からの敗退が決定したポーランドでしたが、日本戦では彼らの持つ武器である「カウンター」から、これだけの回数、しかも十分に得点が奪えるだけのチャンスを作りました。

 この試合でのポーランドは、右のサイドハーフ(SH)に11番のカミル・グロシツキを起用しています。これまで左サイドが主戦場、初戦も左SHで出場していた走るスピードに優れた選手ですが、この試合では右に置かれました。

 その理由は「長友が攻め上がった後のスペースを狙う」というところにあったのではないかと感じましたが、実際に長友が攻撃参加を行った後のスペースにグロシツキが飛び出し、クロスという形での決定機が前半4分、後半8分、後半29分にありました。

 特に後半の2つについては、1つ目の場面ではグロシツキからジエリンスキへのクロスが少し前に流れてしまったおかげで川島がキャッチできましたが、2つ目に関しては吉田麻也がフルスプリントで戻ったもののレバンドフスキに前に入られ、フリーでシュートを打たれました。ここは「よく外してくれた」というくらい、完璧なカウンターによる決定機だったと思います。

 グロシツキを使ったカウンター以外にも、前半32分には日本ボールでの右サイドでのスローインからの攻撃でロスト、右からの展開を期待したであろう宇佐美貴史のスタートポジションが高過ぎたため、柴崎岳の左側に空けてしまったスペースを使われ、カウンターを受けます。オーバーラップした右SBのバルトシュ・ベレシンスキからのクロスにグロシツキがフリーでヘッドも、川島がビッグセーブで救ってくれたという場面につながっています。

 前半37分の場面は、酒井宏からバイタルへと入っていった酒井高徳へ斜めのボールが入るもコントロールが乱れ、クリアされたこぼれ球からのカウンターとなりました。中盤の2人、山口蛍と柴崎のところで回収も止めることもできず、ジエリンスキとレバンドフスキのワンツーで打開されてしまいます。ジエリンスキからレバンドフスキへのラストパスがギリギリで槙野智章に当たってCKになりましたが、前半からコンスタントに非常に危険なカウンターを作らせてしまっていました。

ハッキリしなかったボランチの役割分担

クロスやスルーパス、ドリブルなど攻撃を仕掛けたエリアのシェア 【データ提供:データスタジアム】

 これだけ多くの危険なカウンターを受けてしまった日本ですが、その原因はどこにあったのか。それは攻撃時のオーガナイズ、攻撃自体のクオリティー、そして攻から守に切り替わった瞬間のポジショニングと判断にあったと思います。

 この試合、日本は6人スタメンを変更しました。

 理由は間違いなく、この先の戦いを見据えてのものだと思いますが、この試合でのポーランドのプレースピード、クオリティー、守備時の強度(レバンドフスキとジエリンスキはほとんどプレスを行わず)を考えても、もう少し安定したものは表現できたはずの試合でした。

 これだけ多くの危険なカウンターの機会を与えてしまった背景には、柴崎と山口の役割分担、そして単調な攻撃とリスク管理が足らなかったということが挙げられます。中盤センターの2人が交互に最終ラインに入る形で数的優位の状況を作り、ビルドアップを行い、外側・内側・ライン間とパスルートを多く作りながら安定して敵陣へと入り、ゴールを目指す。これが今大会で日本が見せてきたサッカーですが、この試合では柴崎が最終ラインに下りた時の山口の役割がはっきりしませんでした。

 また逆の関係になった時、つまり山口が後ろに下りた時のビルドアップもなかなかスムーズにはいきませんでした。前半18分にはボールを持ちながらパスする相手を探してしまい、時間をかけてから槙野に斜め後ろの横パスを出したため、相手にプレスのタイミングを与えてしまい、結果的に宇佐美のところでロストしてしまいました。

 前半19分には、相手が動く前に長い縦パスを武藤嘉紀に出してしまいロスト。また前半26分には川島から受けたボールをそのまま真っすぐ岡崎慎司へ長めの縦パスを入れ再びカットされています。この場面については、こぼれたボールがもし相手に渡っていたら相当に危険な局面を迎えていた場面でした。先を見据えて、長谷部誠のコンディションを考慮しての山口起用だったと思いますが、柴崎との関係性、連係を考えても厳しい試合となってしまったのは間違いありません。

 またポーランドが4−4−2で構えるも、一度としてハイプレスを行ってこなかったことを考えても、日本はもっと安定したビルドアップを作れたはずでした。この試合、山口にとっては柴崎とともにビルドアップを助けながら、守備面でも自分の良さであるボールを「奪い切る」働きを見せなくてはならないという難しい試合となったと思います。裏を返せば、長谷部がどれだけ重要な存在かということが分かる試合にもなりましたが、後半に入ってからより危険なカウンターを受けてしまったことも含め、この日の日本の中盤にはコロンビア戦の後半以降にあった「安定感」と「躍動感」は存在していませんでした。

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