自信と、反骨心と、覚悟を持って16強へ ポーランド戦翌日、日本代表はさらに団結

飯尾篤史

スタッフも全員が参加したミーティング

ポーランド戦翌日、試合に出なかったメンバーを中心に調整 【写真は共同】

 ポーランド戦から一夜明けた6月29日(現地時間、以下同)、ベースキャンプ地のカザンはここ数日の猛暑がうそのように、過ごしやすい気候に包まれた。

 40℃近いボルゴグラードでのポーランド戦に向けて身体を慣れさせるために気温が上がり、戦いを終えて帰還した選手たちをいたわるように気温が下がる――。

 天候も日本代表の味方をしてくれているようだ。

 夕方から始まった練習には、GKトレーニングを行う3人のGKに加え、ポーランド戦に出場しなかった、もしくは出場時間の短かった8人の選手たち――香川真司、本田圭佑、原口元気、乾貴士、大島僚太、昌子源、植田直通、遠藤航が参加した。残りの12人は午前中にリカバリーメニューをこなし、コンディションを整えたという。

 その午前中にもうひとつ、行われたものがある。

 チームミーティングである。それも、普段のミーティングとは少し趣の異なるものだった、とキャプテンの長谷部誠が明かす。

「選手、監督、スタッフだけでなく、代表チームのスタッフ全員がそのミーティングに参加して同じ方向を向いてやろう、というものになった。だから代表チームとして、次に向かっている感じがしますね」

ポーランド戦翌日、西野監督は謝罪をした

西野監督は、ポーランド戦終盤の戦い方について選手に謝罪 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 そのミーティングにおけるテーマのひとつが、ポーランド戦での試合の終わらせ方だった。0−1で負けていながら時間を稼ぐために行ったボール回しが、国内外で大きな波紋を呼び、批判が巻き起こっている。

 そうした戦い方を選択したことに対して西野朗監督は、選手たちの前で「1、2戦と違う要求をしてしまった。勝ちにいく要求ではなくて、守りにいく要求をしてしまって、すごく申し訳ない」「こういう場所(ベスト16)に来たにもかかわらず、素直に喜べない状況を作ってしまったのは申し訳なかった」と謝罪をしたという。

 しかし、謝らなければならないのは選手のほうだ、と酒井宏樹は言った。

「選手としては、監督にそういうチョイスを取らせてしまったことに責任をすごく感じます。僕らが2−0、1−0で勝っていれば、そんなことをする必要はなかった。究極の決断をさせてしまったのは僕らでもあるので、チームとして責任を感じています」

 一方、ブラジル大会で打ちのめされ、この4年間、ロシア大会でリベンジを果たすために全エネルギーを注いできた長友佑都は「感謝しかない」ときっぱりと言った。

「僕ら選手としては、西野さんのおかげでベスト16という夢の舞台に立つことができた。そのことに本当に感謝しかなくて。選手全員が今、監督の判断や決断に対してブレずについていく感じになっているんですよね。その一体感を感じるので、次の試合が楽しみで仕方がない」

 これまで短い準備期間のなかで、監督、コーチングスタッフ、選手が一体となってチームを作り上げてきた。批判覚悟で指揮官の下した究極の決断と、それによって導かれた決勝トーナメント進出という結果が、指揮官と選手たちとの絆をよりいっそう深めたようだ。

 むろん、いまだに失望している人もいるだろう。茶番だと嘲笑する人も、こんな試合、子どもには見せられないと憤っている人もいるだろう。

 だが、代表チームが今回のワールドカップ(W杯)にどんな思いで臨み、何を背負って戦っているかを知れば、あのラスト10分間の印象は、変わってくるかもしれない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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