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37試合目で初めてのスコアレスドロー
日々是世界杯2018(6月26日)

グループリーグ3戦目での別れ

国旗を全身にプリントしたスーツを身にまとう、デンマークのサポーターたち。とにかく明るい!
国旗を全身にプリントしたスーツを身にまとう、デンマークのサポーターたち。とにかく明るい!【宇都宮徹壱】

 ワールドカップ(W杯)13日目。この日はグループCとグループDの2試合ずつが、いずれも同時刻に開催される。グループCはモスクワでデンマーク対フランス、ソチでオーストラリア対ペルー。グループDは、サンクトペテルブルクでナイジェリア対アルゼンチン、ロストフでアイスランド対クロアチア。とりわけ注目は、グループDの行方であろう。第2戦を終えて2勝しているクロアチアが一歩抜けているものの、ナイジェリア、アルゼンチン、そしてアイスランドにもグループ突破のチャンスがある。逆に言えば、勝ち点1しか得ていないアルゼンチンは、たった3戦で大会を去るかもしれない危機にあるのだ。


 そんな中、この日私が取材するのは、ルジニキ・スタジアムで開催されるグループCのデンマーク対フランス。すでに勝ち点6を積み上げているフランスは、ラウンド16進出が決定。そして2試合でいまだ勝ち点のないペルーは、これが最後のゲームとなる。現在2位(勝ち点4)のデンマークは、3位(同1)のオーストラリアの動向をにらみながら目前の相手と戦うことになる。デンマークとしては、できればラウンド16でクロアチアとの対戦を回避したいところだが、オーストラリアに逆転されるリスクも決してゼロではない。互いの手の内をよく知るフランスに、どんな戦いを挑むかが注目点だ。


 キックオフ2時間前、ルジニキの最寄り駅であるスポルチーブナヤに到着する。スタジアムに向かう道すがら、楽しげに交流しているサポーターたちにほほえましさを感じると同時に、ふと一抹の寂しさも覚えてしまった。グループリーグ3戦目が行われる4日間で、出場32チームの半分がロシアから去ることになるからだ。当然といえば当然の話なのだが、開幕当初を盛り上げてくれたペルーやエジプトやモロッコのサポーターとこれでお別れになるのは、やはり名残惜しさを感じる。そしてこの日、新たに3チームがロシアでの戦いを終えることになるのである。


 キックオフ1時間前、記者席にて両チームのスターティングイレブンを確認する。フランスはメンバーを6人入れ替えてきた。GKのウーゴ・ロリス、DFのバンジャマン・パバールとサミュエル・ウムティティ、そしてFWのキリアン・エムバペが、いずれもベンチスタート。MFのポール・ポグバをはじめ、この2試合でイエローカードをもらっている3選手を温存した。対するデンマークは、第2戦から入れ替えたのは3人。それでも、カード持ちのトーマス・デラネイとピオネ・シストをスタメンのリストに載せているところに、この試合に臨む彼らの切実さが感じられる。現地時間17時、キックオフ。

なぜスコアレスドローが少なかったのか?

スコアレスドローに終わったフランス戦。それでもデンマークのサポーターはポジティブだった
スコアレスドローに終わったフランス戦。それでもデンマークのサポーターはポジティブだった【宇都宮徹壱】

 序盤から積極的なのはデンマークだった。やはり1位で突破したいという思いがあったのだろうか。しかしフランスはこれをしっかり受け止め、次第に相手を自陣に押し止めるような厚みのある攻撃を見せる。前半15分、リュカ・エルナンデスとのワンツーから、オリビエ・ジルーがシュート。これはカスパー・シュマイケルのセーブに阻まれた。対するデンマークも後半31分、アンドレアス・コルネリウスが左サイドを駆け上がって低く折り返したボールに、クリスティアン・エリクセンがゴールを狙うも、GKスティーブ・マンダンダと交錯してシュートはならず。前半の見せ場は、この2つのシーンのみだった。


 ハーフタイム、両チームの選手たちには、裏の試合の状況を知らされたと思われる。前半18分、アンドレ・カリージョのゴールでペルーが先制。さらに後半5分、パオロ・ゲレーロのゴールで追加点を挙げる。これでオーストラリアは残り40分で3点が必要になった。それが影響したのか、デンマークから前半のような積極性が消え、フランスも攻め急がずに無難なパスを回すようになる。退屈に感じた地元の観客から、ブーイングと「ロシア!」コールが起こるも、目前の状況は変わらないまま試合は0−0で終了。フランスとデンマークのグループ突破が決まった。


 いわゆる「しょっぱい試合」である。しかし今大会に関しては、貴重なものを見せてもらったようにも思う。というのも、これが今大会の37試合目にして、初めてのスコアレスドローだったからだ。なぜ今大会は、ここまでスコアレスドローがなかったのか。理由のひとつは、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によるPKの増加に求められよう。この試合までにPKの数は、過去のW杯記録を早々に抜いて20本となり(この日のグループDの試合でさらに2本追加)、15本が成功している。そのうち、8回がVARによって与えられたもの。VARの功罪については、今大会が終わったあとにあらためて検証する必要がありそうだ。


 グループCの裏の試合は、そのまま2−0でペルーが勝利。アジア勢は、サウジアラビア、イランに続いて、オーストラリアもまた大会を去ることになった。一方グループDでは、クロアチアがアイスランドに、そしてアルゼンチンがナイジェリアに、いずれも2−1で勝利してグループ突破を決めた。さらっと書いてしまったが、いずれも勝者と敗者のコントラストが激しい、劇的なゲームであったことは言うまでもない。グループリーグも残り2日。28日には、日本が組み込まれているグループHもフィナーレを迎える。現時点で首位に立つ日本だが、1位通過から3位で敗退まで、さまざまな可能性があることは留意すべきだろう。このグループの結末を見届けるべく、これから決戦の地となるボルゴグラードに向かう。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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