37試合目で初めてのスコアレスドロー 日々是世界杯2018(6月26日)
グループリーグ3戦目での別れ
国旗を全身にプリントしたスーツを身にまとう、デンマークのサポーターたち。とにかく明るい! 【宇都宮徹壱】
そんな中、この日私が取材するのは、ルジニキ・スタジアムで開催されるグループCのデンマーク対フランス。すでに勝ち点6を積み上げているフランスは、ラウンド16進出が決定。そして2試合でいまだ勝ち点のないペルーは、これが最後のゲームとなる。現在2位(勝ち点4)のデンマークは、3位(同1)のオーストラリアの動向をにらみながら目前の相手と戦うことになる。デンマークとしては、できればラウンド16でクロアチアとの対戦を回避したいところだが、オーストラリアに逆転されるリスクも決してゼロではない。互いの手の内をよく知るフランスに、どんな戦いを挑むかが注目点だ。
キックオフ2時間前、ルジニキの最寄り駅であるスポルチーブナヤに到着する。スタジアムに向かう道すがら、楽しげに交流しているサポーターたちにほほえましさを感じると同時に、ふと一抹の寂しさも覚えてしまった。グループリーグ3戦目が行われる4日間で、出場32チームの半分がロシアから去ることになるからだ。当然といえば当然の話なのだが、開幕当初を盛り上げてくれたペルーやエジプトやモロッコのサポーターとこれでお別れになるのは、やはり名残惜しさを感じる。そしてこの日、新たに3チームがロシアでの戦いを終えることになるのである。
キックオフ1時間前、記者席にて両チームのスターティングイレブンを確認する。フランスはメンバーを6人入れ替えてきた。GKのウーゴ・ロリス、DFのバンジャマン・パバールとサミュエル・ウムティティ、そしてFWのキリアン・エムバペが、いずれもベンチスタート。MFのポール・ポグバをはじめ、この2試合でイエローカードをもらっている3選手を温存した。対するデンマークは、第2戦から入れ替えたのは3人。それでも、カード持ちのトーマス・デラネイとピオネ・シストをスタメンのリストに載せているところに、この試合に臨む彼らの切実さが感じられる。現地時間17時、キックオフ。
なぜスコアレスドローが少なかったのか?
スコアレスドローに終わったフランス戦。それでもデンマークのサポーターはポジティブだった 【宇都宮徹壱】
ハーフタイム、両チームの選手たちには、裏の試合の状況を知らされたと思われる。前半18分、アンドレ・カリージョのゴールでペルーが先制。さらに後半5分、パオロ・ゲレーロのゴールで追加点を挙げる。これでオーストラリアは残り40分で3点が必要になった。それが影響したのか、デンマークから前半のような積極性が消え、フランスも攻め急がずに無難なパスを回すようになる。退屈に感じた地元の観客から、ブーイングと「ロシア!」コールが起こるも、目前の状況は変わらないまま試合は0−0で終了。フランスとデンマークのグループ突破が決まった。
いわゆる「しょっぱい試合」である。しかし今大会に関しては、貴重なものを見せてもらったようにも思う。というのも、これが今大会の37試合目にして、初めてのスコアレスドローだったからだ。なぜ今大会は、ここまでスコアレスドローがなかったのか。理由のひとつは、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によるPKの増加に求められよう。この試合までにPKの数は、過去のW杯記録を早々に抜いて20本となり(この日のグループDの試合でさらに2本追加)、15本が成功している。そのうち、8回がVARによって与えられたもの。VARの功罪については、今大会が終わったあとにあらためて検証する必要がありそうだ。
グループCの裏の試合は、そのまま2−0でペルーが勝利。アジア勢は、サウジアラビア、イランに続いて、オーストラリアもまた大会を去ることになった。一方グループDでは、クロアチアがアイスランドに、そしてアルゼンチンがナイジェリアに、いずれも2−1で勝利してグループ突破を決めた。さらっと書いてしまったが、いずれも勝者と敗者のコントラストが激しい、劇的なゲームであったことは言うまでもない。グループリーグも残り2日。28日には、日本が組み込まれているグループHもフィナーレを迎える。現時点で首位に立つ日本だが、1位通過から3位で敗退まで、さまざまな可能性があることは留意すべきだろう。このグループの結末を見届けるべく、これから決戦の地となるボルゴグラードに向かう。
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