日本のスクラムは「200%進歩している」 “相思相愛”のジョージアに完勝

斉藤健仁

スクラムのプレッシャーから生まれたトライ

スクラムでプレッシャーをかけて、LOファンデルヴァルトのトライにつなげた 【斉藤健仁】

 迎えた後半9分、相手陣のスクラムで日本代表のFW陣は勝負に出る。左PRの稲垣が「あまりプレッシャーを感じなかったので、前半が終わった後、逆にプレッシャーをかけられるんじゃないかと話をしていて、陣地にもよるが、やってみようと話していた」と振り返った通り、相手スクラムを押し込むことに成功した。
 焦ったジョージアはプレッシャーでボールを落とし、日本は素早くカウンターを仕掛けて、最後はピック&ゴーで持ち込んだLOヴィンピー・ファンデルヴァルトが中央右にトライ(16対0)。続く12分も、日本はタックルでミスを誘い、カウンターからWTBレメキ ロマノ ラヴァが5人をかわしてインゴールへ飛び込んで、23対0と大きくリードした。

 その後、日本はエリアを取るゲームメイクと、終始激しいディフェンスで優勢に進めて、途中出場のNo.8姫野和樹もトライを挙げて28対0で勝利し、6月の3連戦を勝ち越しで締めくくった。

堀江「もっともっと進化していく」

PR稲垣は「多少崩れても元の一番強い位置に戻れるのが、進化した形です」と語る 【斉藤健仁】

 完勝で終えた要因はディフェンスで体を張り続けたこと、さらにセットプレーの安定が挙げられる。リーチ主将も「相手にずっとプレッシャーをかけ続けることができたのが今日の勝利の原因。見ていてつまらなかっただろうけど、これが勝つラグビー」と胸を張った。

 ジョセフHCも「6月の健闘を誇らしく思います。立ちはだかるチャレンジを乗り越え、スクラムでも相手を劣勢に追い込み、セットプレーでプレッシャーをかけられた。選手たちの努力を褒め称えたいが、先はまだまだ長い」と選手の奮闘を評価するとともに、11月のニュージーランド、イングランドとの対戦を見据えた。

 ジョセフHCが指導するモールディフェンスも機能して相手にトライを許さず、一番の懸念材料だったスクラムは、相手ボールでは反則を取られたが、マイボールは9回すべてキープに成功。来年のW杯を見据えれば、イタリアも含めて北半球のチームと対等に組めた手応えを得たことは大きい。日本の第1列の2人もこう実感している。
「前は一度崩れたら押されっぱなしで終わっていた。みんなが意図的にどういう形に持っていくか理解しているので、多少崩れても元の一番強い位置に戻れるのが、進化した形です。すごくいいイメージ、手応えだった」(PR稲垣)
「(コーチの長谷川)慎さんがやろうとしていることを全員が理解し、やり続けてきた結果です。前回(16年)の対戦時はだいぶ押されていましたから、成長した。これが最後ではなく、もっともっと進化していくと思います」(HO堀江)

「日本とジョージアが築いてきた関係を続けていきましょう」

サンウルブズでもプレーするジョージア代表のHOブレグバゼ(左から2人目) 【斉藤健仁】

 ジョージアで先発したHOブレグバゼは、シーズンの最終戦で移動も重なり、選手に疲れがあったことも吐露したが、それでもスクラムに関しては、サンウルブズではチームメイトである選手たちの努力をこう称えた。
「日本には友人も多くいるので試合ができてうれしい。日本は2年前より、セットプレーで200%進歩している。長谷川コーチが非常に優れたコーチングをして、その下で選手たちが確実に成長している。8人が正確に、ひとつの拳のように一体となることはすごく難しいことですが、ジャパンのスクラムは常に一体となって押している。来年のW杯までにさらに良くなる」

 12年から数えて5度目の対戦は、日本の勝利で幕を閉じた。今後も、ヘイグHCが「昨年のW杯の組み合わせ抽選会時にジェイミーと、日本とジョージアが築いてきた関係を続けていきましょうと話をし、今回も試合ができました。両国の関係は続いていってほしい」と言うように、持ち味の異なる両国は互いに切磋琢磨し、2019年W杯で過去最高のベスト8以上を目指していく。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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