【ノア】丸藤の20周年対戦相手は元KENTAに GHC王者・杉浦V3で潮崎逆指名

高木裕美

メインは杉浦vs.拳王のGHC戦リマッチ

杉浦がパートナー・拳王とのリマッチを退けGHC王座V3に成功 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 プロレスリング・ノア「Navig. with Emerald Spirits 2018」最終戦となる26日の東京・後楽園ホール大会では、GHC2大タイトルマッチなどが行われた。また、9.1東京・両国国技館で開催される丸藤正道20周年記念大会「飛翔」の全カードが発表され、メインイベントでは、丸藤正道vs.元KENTAことヒデオ・イタミ(WWE)というかつての黄金カードが決定した。

 メインイベントのGHCヘビー級選手権試合では、王者・杉浦貴が前王者・拳王とのリマッチを制し3度目の防衛に成功。次期挑戦者には自ら潮崎豪を指名した。

 タッグパートナー同士でもあった杉浦と拳王は、今年の3.11神奈川・横浜文化体育館で同王座を賭けて対戦。27分36秒、回転式フロントネックロックによるレフェリーストップで、杉浦が王座を奪取している。

 拳王は昨年12.22後楽園でGHC王座初戴冠を果たした際、「もう、杉浦、丸藤の時代じゃない」「オレが武道館へ連れて行く」と公言。だが、その「ノアの顔」杉浦に敗れたことで、“拳王革命”は一旦は頓挫したかと思われた。

 しかし、6.10後楽園のメインイベントで行われた「三沢光晴メモリアルマッチ」では、杉浦貴&丸藤正道組vs.潮崎豪&中嶋勝彦組で、潮崎が杉浦から豪腕ラリアットでピンフォール勝ち。試合後、拳王、マサ北宮、小峠篤司、清宮海斗がリングインし、ベテランチームに対し世代交代をアピールすると、そこにZERO1の田中将斗も駆けつけ、杉浦&丸藤との合体を表明していた。

杉浦vs.潮崎がノアの起爆剤になるか

杉浦に呼び止められた潮崎(左)がGHC王座次期挑戦者に 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 杉浦には田中と齋藤彰俊、拳王には潮崎、小峠、清宮がセコンドに就き、試合開始のゴング。開始早々、杉浦は前回の横浜大会同様、フェンスを使ったネックツイストを炸裂。だが、拳王もミドルキック、ランニングキック、ダブルニードロップとたたみかけると、拳王のミドルキックと杉浦のエルボーによる打ち合いから杉浦が雪崩式ブレーンバスター、逆エビ固め。10分過ぎ、拳王がコーナートップから場外へのダイビングフットスタンプを決めると、杉浦はカウント19で何とかリングイン。アンクルホールドの攻防から再びキックとエルボーの応酬となり、杉浦がターンバックルへのジャーマンスープレックス、ランニングニー、オリンピック予選スラム。カウントは2。拳王も右ハイキック、ダイビングフットスタンプからムーンサルトプレスで勝負を賭けるも、かわされて着地。すかさず杉浦が顔面蹴りからフロントネックロックでとらえる。

 キック、エルボー、張り手の乱打戦から25分過ぎ、杉浦が2発目のオリンピック予選スラムを放つと、拳王はロープをつかんで立ち上がるも、杉浦はコーナーに乗せての雪崩式オリンピック予選スラムでトドメをさした。

 試合後、拳王が小峠と清宮に両肩を担がれ退場すると、杉浦は「ちょっと待て。何、おまえ帰ってるんだ。オレはおまえを待ってたんだよ。おまえと武道館でよくやったよな。6.10で負けたの忘れないよ」と潮崎を引き止めて挑発。潮崎もリングに上がると、「世代交代、それ以上にオレは杉浦、おまえに勝ちたい。強いおまえからこのベルト、奪ってやりたい。次、このベルト、挑戦させくれ」と挑戦表明。

 杉浦は「いつでもいい。待ってたんだよ。いつでもやってやるよ。早いうちに組め」とタイトルマッチ決定をコール。「まだまだ若いヤツには負けない。おじさんが簡単に負けたら、世間の厳しさ、マットの厳しさを教えられない」と、“中年の星”として、まだまだ輝き続けることを宣言した。

 6.10後楽園で突如勃発した「世代闘争」だが、杉浦自身は「トシはいってるけど、キャリアは18年。まだベテランって気持ちではやってない」と、そのテーマに対しては否定的。00年デビューの48歳・杉浦に対し、潮崎は04年デビューの36歳。年齢では一回り違うが、キャリアの差はわずか4年。年齢的にも、キャリア20年の丸藤は98年デビューだが、まだ38歳である。

 1987年に新日本プロレスマットで勃発した「ナウリーダーvs.ニューリーダー」ほど定義が曖昧ではないにしても、1990年代の全日本プロレスマットを牽引した「超世代軍」(三沢光晴、川田利明、小橋健太、菊地毅)ほど明確とは言いがたい。「世代闘争」第2ラウンドとなる杉浦vs.潮崎のGHC王座戦。杉浦としては「1回違うところ(全日本プロレス)に行ったけど、アイツはノアの生え抜き。ずっと待ってた。ようやく来た。アイツは、もっと上のレスラーとしてやってなきゃいけない」と、09年6月に三沢さんが急逝した直後にはGHCの看板を背負い、ノアのエースとして期待されながらも、名実ともに杉浦・丸藤のノア二枚看板を突き抜け切れない潮崎の現状に不満を爆発。かつて、09年12.6、10年9.26と2度にわたり日本武道館大会のメインを張ったこのカードが、世代闘争の、そしてノアの起爆剤となれるのか。

挑戦者の熊野は撃沈 原田は二冠へ意欲

原田は熊野を撃破し、ジュニア王座防衛。タッグとの二冠を視野に 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 セミファイナルのGHCジュニアヘビー級選手権試合では、王者・原田大輔が熊野準の挑戦を退け、6度目の防衛に成功。来月開幕する「第12回グローバル・ジュニアヘビー級タッグリーグ戦」に向け、タダスケとのコンビで優勝宣言した。

 原田と熊野。両者の「ノア所属選手」としてのスタートは共に2013年。5年前は元大阪プロレスのエースと新人という立場であったが、この5年間で差は縮まるどころか、ますます開いていた。原田は06年に大阪プロレスでデビューし、10年の「第4回日テレ杯争奪ジュニアヘビー級タッグリーグ戦」でノアマットに登場すると、13年5月にノアに入団。ノアジュニアのエースとしてシングル、タッグで何度もタイトルに輝き、同王座を昨年10.1横浜文化体育館で石森太二から王座を奪取して以来、これまで5度の防衛に成功している。

 一方、熊野は13年2月にノア7年ぶりの新人としてデビュー。だが、シングルマッチでは勝ち星に恵まれず、100連敗を超えるという不名誉な記録を樹立。2年以上たってようやく初勝利を挙げるも、ノア生え抜きとしてのファンの期待に応えられず、いまだGHCジュニア王座には届いていない。

 2人は13年7月に開催された「第7回日テレG+杯争奪ジュニア・ヘビー級タッグリーグ戦」で「ノア・フレッシュ・コンビ」を結成するも全敗。同年9月には新日本プロレスの獣神サンダー・ライガー&4代目タイガーマスク組へ流出したGHCジュニアヘビー級タッグ王座に挑戦して敗れており、タッグとしての結果は残せなかった。

 5年分の思いが詰まった一戦。「背骨折り」という武器を手に入れた熊野はベアハッグ、バックブリーカー、エプロンめがけてのボディースラム、パワーボムからの逆エビ固め、ジャーマンスープレックスと一気にたたみかけるも、原田もフットスタンプからカウンターのヒザ蹴りをブチ込み、ニーアッパーからのジャーマンスープレックス。これをカウント2でクリアした熊野に対し、場内からは大「熊野」コールが起こるが、原田がこれをかき消すように投げ捨てジャーマン、ニーアッパー、エルボーからの片山ジャーマンスープレックスで勝利を奪った。

 試合後、リングサイドにHi69、諸橋晴也、LEONAが駆け寄り、ベルトに熱視線を送ると、原田は「次、誰とでもやってやるけどな。その前に、来月、ジュニアタッグリーグ始まるやろ。おまえらジュニアタッグチャンピオン(田中稔&Hi69)にも、去年の優勝チーム(HAYATA&YO-HEY)にも、いいところは持って行かせない。今年の優勝チームはオレとタダスケや」とリング上からアピール。シングル&タッグの“2冠獲り”を訴えた。その一方で、熊野に対しては「ここまで来るのに5年かかったけど、今度はもっと短いスパンでやろう。いつまでもチンタラしてたら、アイツのレスラー人生、終わるぞ」と、厳しい言葉でハッパをかけた。

齋藤がパートナーに丸藤指名でタッグ王座挑戦へ

齋藤(左)は丸藤とのタッグでGHC王座獲りを宣言 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 6.10後楽園大会で勃発した世代闘争マッチの“続編”では、丸藤正道&齋藤彰俊&田中将斗(ZERO1)組vs.中嶋勝彦&マサ北宮&潮崎豪組が激突。齋藤が北宮から勝利すると、GHCタッグ王座挑戦をアピール。中嶋&北宮組vs.丸藤&齋藤組によるタイトル戦が決定的となった。

「世代交代」を訴える潮崎が丸藤にマシンガンチョップ、ゴーフラッシャーバックドロップを繰り出すと、中嶋も顔面蹴り、ミドルキック、ミサイルキック。だが、丸藤も中嶋にドロップキックで反撃に出ると、田中が中嶋、北宮にラリアット、潮崎にDDT。北宮は齋藤にスピアーを突き刺し、スイクルデスをラリアットで阻止するも、齋藤が延髄斬りで反撃。さらにバックドロップ、スイクルデス、デスブランドとたたみかけ、GHCタッグ王者から完璧な3カウントを奪った。

 さっそく、齋藤はリング上から「これで文句ないだろ。GHCタッグ、丸藤選手と行かせてもらう」とパートナーに丸藤を指名し、ガッチリと握手。丸藤も「今の齋藤さんなら必ず獲れる。齋藤さんとタッグのベルトが欲しい」と、新パートナーとの王座奪取に自信をのぞかせた。

丸藤「観た人たちがハッピーな気持ちになれる大会に」

丸藤20周年記念の相手は永遠のライバル、イタミ・ヒデオに 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 9.1東京・両国国技館で開催される丸藤正道20周年記念大会「飛翔」の全カードが発表され、団体の壁や因縁を超えたこの日限りの顔合わせが実現。メインイベントでは、丸藤vs.ヒデオ・イタミ(元KENTA)の黄金カードが決定した。

 第3試合終了後、丸藤がリングに登場し、「お待たせいたしました。丸藤正道20周年記念大会『飛翔』の全カードを発表したいと思います。カードはこちらです」と発表。懐かしい顔ぶれやゆかりの深い他団体選手の参戦に、1つ1つどよめきが起こった。

 しかし、肝心の丸藤の対戦相手は発表されず。一旦VTRが止まると、丸藤は「ここまでのカードはいかがでしょうか。それでは20周年、メインイベント、オレの対戦相手はこの人です」とスクリーンを指差すと、WWEのロゴマークが映し出されたため、観客のテンションは早くもMAX。かつて、丸藤の好敵手であった男が「お久しぶりです。イタミ・ヒデオことKENTAです。丸藤選手の20周年記念大会に参戦することになりました。4年ぶりにノアのリングに上がることになります。みなさんにお会いできることを楽しみにしております」とメッセージを送ると、客席からは大「KENTA」コール。丸藤は「名前は変わってしまったけど、オレの永遠のライバル。オレのワガママで参戦してくれる全選手に感謝の気持ちを伝えたいと思います。ここまできたら、日本中や世界中から観に来てほしい。最高のコンディション、モチベーション、テンションで臨みたいと思います」と、この大会、そして一騎打ちにかける意気込みを語った。

 丸藤とKENTAは03年に初代GHCジュニアタッグ王者に君臨して以来、約2年間にわたり9度の防衛に成功。その後はGHCジュニアヘビー級やGHCヘビー級王座などを賭けて対戦。06年10.22武道館での一戦が同年のプロレス大賞ベストバウトを獲得したり、08年10.27武道館で行われた丸藤の世界ジュニアヘビー級王座とKENTAのGHCジュニア王座を賭けたWタイトル戦が60分時間切れになるなど、互いをライバルとして認め合ってきた。両者の最後の一騎打ちとなった13年7.7有明コロシアムでは、36分42秒、KENTAがgo2sleepで勝利し、GHCヘビー級王座防衛に成功。00年5月のKENTAのデビュー戦以来、通算対戦成績は丸藤の9勝3敗1分となっている。KENTAは以前から憧れていたWWEにチャレンジするため、14年4月末にノアを退団。ノアラストマッチとなった5.17後楽園では、丸藤が「オレの隣に立ってくれ」とタッグ結成をリクエストしたため、2人で組んで杉浦貴&中嶋勝彦組と対戦。KENTAが中嶋に生ヒザでのgo2sleepで勝利していた。

 今回、20周年記念大会開催にあたり、「アイツしかいないでしょ」と、最初からヒデオとの一騎打ちしか頭になかったという丸藤は「おそらくオレが引退する時には動けないかもしれない。プロレス人生の中で一番のビッグイベントにしたい。ヒデオとの対戦は世界中から注目される。この戦いを通じて世界中に発信するのがオレのやり方」と、この大会を自身のプロレス人生最大のピークと位置づけた上で、「(全日本社長の)秋山さんをはじめ、たくさんの人に協力してもらって、プロレスの素晴らしさを伝える、最高のマッチメークができた。なつかしい顔ぶれも逆に新鮮かつ斬新。観た人たちがハッピーな気持ちになれる大会にしたい」と抱負を語った。

 その丸藤の自信通り、確かに見どころ満載なラインナップ。セミではGHCヘビー級王者・杉浦とGHCジュニアヘビー級王者の原田が、元GHCヘビー級王者の秋山と現世界ジュニアヘビー級王者の青木と“再会”。第7試合では、丸藤との「ハラシマルフジ」でKO−Dタッグ王座を巻いたHARASHIMAや、丸藤の唇を奪った男色ディーノらDDTプロレス勢が登場。第4試合では08年11.3全日本・両国大会で丸藤とプロレス大賞ベストバウトを獲得する激闘を繰り広げた近藤修司と、09年2.6後楽園で丸藤から世界ジュニア王座を奪ったカズ・ハヤシの「チーム246」が、HAYATA&YO-HEYのRATEL’Sと対戦。また、第2試合では、齋藤彰俊&井上雅央&川畑輝鎮による「ダークエージェント」復活など、00年代のノアを賑わせた面々も多数参戦し、丸藤のレスラー人生20年間だけではなく、ノア旗揚げからの18年間も凝縮した大会となりそうだ。
■丸藤正道デビュー20周年記念大会『飛翔』
2018年9月1日(土) 両国国技館 開場13:30 試合開始15:00


<第9試合 丸藤正道デビュー20周年記念試合>
丸藤正道
ヒデオ・イタミ(WWE)

<第8試合 タッグマッチ>
杉浦貴、原田大輔
秋山準(全日本プロレス)、青木篤志(全日本プロレス)

<第7試合 6人タッグマッチ>
拳王、小峠篤司、マイバッハ谷口
高木三四郎(DDT)、HARASHIMA(DDT)、男色ディーノ(DDT)

<第6試合 6人タッグマッチ>
中嶋勝彦、マサ北宮、太陽ケア(フリー)
潮崎豪、清宮海斗、小川良成

<第5試合 6人タッグマッチ>
Hi69、田中稔(フリー)、鈴木鼓太郎(フリー)
大原はじめ、熊野準、諸橋晴也(フリー)

<第4試合 タッグマッチ>
HAYATA&YO-HEY
近藤修司(WRESTLE−1)、カズ・ハヤシ(WRESTLE−1)

<第3試合 タッグマッチ>
クワイエット・ストーム、タダスケ
大森隆男(全日本プロレス)、コーディ・ホール

<第2試合 6人タッグマッチ>
齋藤彰俊、井上雅央(フリー)、川畑輝鎮(フリー)
佐野巧真(フリー)、本田多聞(フリー)、越中詩郎(フリー)

<第1試合 タッグマッチ>
モハメド ヨネ、宮脇純太
百田光雄(リキ・エンタープライズ)、菊地毅(フリー)
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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