マーリンズ再建策は想定内か誤算か? 気になるジーターCEOの手腕

杉浦大介

根付かないベースボール人気

マーリンズはスタントン(写真)らスター選手を放出し、年俸総額を大きく減らした 【Getty Images】

 ほとんどゼロからの再出発となり、現在のマーリンズにはリーグ有数の捕手に成長したJ.T.リアルミュート以外に見るべき選手は数少ない。開幕前の期待が大きかったルイス・ブリンソン外野手はメジャーで打率1割7分9厘、257打席で86三振と苦戦中。モンテ・ハリソン外野手(2Aでの72試合で打率2割3分)、サンディ・アルカンタラ投手(3Aで防御率3.71)といったマイナーの有望株もやや伸び悩み気味である。

 このように若手の育成が進んでないこと以上に、将来的に何よりの障壁になりそうなのが、マイアミにはベースボールのファンベースが存在しないことだ。

「ファンの後押しがないから地元に熱気は生まれないし、観客動員難がゆえに給料総額を増やすのも難しい。この部分を少しでも変えていくのがジーターの成功に向けた鍵であり、最大のチャレンジにもなる」

 ナ・リーグの某チームスカウトのそんな証言通り、避寒地でありパーティタウンのマイアミではフットボールこそ盛んだが、ベースボール、バスケットボールは人気スポーツとはとても言えない。1997、2003年に2度の世界一経験がありながら、マーリンズが地元ファンの心に根付くことはなかった。

 熱意のないチーム運営ゆえに地元はシラけており、今季も平均観客動員数はリーグ最下位。4月11日はマーリンズ・パークで行われたメッツ戦の観衆は6150人で、同日の2A戦よりも少なかったという不名誉なニュースが話題になってしまった。

“勝利の使者”が空気を変えられるか?

 ファンベースがないから強いチームが育たないのか、強力なチームを作る努力をしないからファンが盛り上がらないのか。答えは意見が分かれるところではあるが、いずれにしても、このようなマイアミのアパシー(無関心)を変化させなければ長期視野での成功はおぼつかない。スカウトの言葉通り、ジーターが自らのブランドと適切なチーム作りで地元の空気を変えられるかどうかが焦点になるのだろう。

 NBAのマイケル・ジョーダン、アイザイア・トーマス、NHLのウェイン・グレツキーといった他スポーツの大物たちと同様に、ジーターもフロント職では適応に苦しむのか。あるいは19歳だった1A時代に56エラーを犯しながら、失敗に動じず、名選手に成長していったのと同じように、今後に成功の術を見つけていくのか。

 ヤンキース史に残る“勝利の使者”の新たな挑戦は始まったばかり。最終的な答えが出るのは4、5年は先だろう。その勝負強さから“キャプテン・クラッチ”と呼ばれた男のアジャストメントと神通力に、再び視線が注がれることになる。
(文中敬称略。成績は現地6月25日時点)

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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