マーリンズ再建策は想定内か誤算か? 気になるジーターCEOの手腕
マーリンズのマッティングリー監督(右)と話すジーターCEO 【Getty Images】
現役時代のジーターはメジャー史上6位の通算3465安打を放ち、ヤンキースの5度の“世界一”に大きく貢献。ニューヨークの街の象徴的な存在として、合計で2億5000万ドル(約274億円)以上もの給料を稼いだ。それほどの成功者が、今度はフロントの人間として低迷中のマーリンズの再建に乗り出したのである。
「オーナー業に関わらず、彼は何をやっても成功できる人間だと私は確信している。ここまでのキャリアと実績が証明している。それを可能にするだけの意欲と能力を持っているからだ」
ヤンキース時代の同僚ポール・オニールのそんな言葉に、多くのベースボールファンはうなずくはずだ。どんな役割でも上手にこなすのが我らが“キャプテン”。MLBを超越するほどのネームバリューを持つヒーローは、フィールドで誇示した神通力を今後はCEOとしても発揮していくかと思われた。しかし――。
落胆したファンから退任要求も
さらに今オフの間、ジャンカルロ・スタントン、クリスチャン・イエリチ、マルセル・オズナ、ディー・ゴードンといったスター選手を次々と放出。オーナーが変わろうと、“ファイヤーセールを繰り返してきた歴史は変わらないのか”と地元ファンをがっかりさせてしまった。
1月には落胆したファンがジーター退任を要求する嘆願書を作成し、大量の署名が集まるほどの騒ぎになる始末。こんな状況ではチームの成績向上が望めるわけがない。案の定、完全な無名集団となったマーリンズは今季も31勝47敗でナ・リーグ東区最下位に低迷している。
「(ファイヤーセールを行うことで)ファンを落胆させてしまうこと予想はしていた。ただ、このチームはもう14年間もポストシーズンに進出できていない。だとしたら、何かを変えなければいけないんだ」
4月下旬、米プレミアケーブル局の『HBO』で放送されたインタビューで、ジーターは自身の再建政策をそう説明していた。
ベテランから若手へのシフトは常套手段だが…
「ヤンキースも勝てない時代はあったが、若手の成長ゆえに強くなった。最近のカブス、アストロズ、インディアンスの例を見れば、成功への青写真は描けるはずだ」
ジーターのそんな言葉通り、ヤンキースの長い黄金時代が始まったのはジーター、マリアーノ・リベラ、アンディ・ペティート、ホルヘ・ポサダといういわゆる“コア・フォー”が台頭してからだった。特に戦力均衡の進む近年のMLBでは、自前のプロスペクトを辛抱強く育てる方向性が主流になっている。それと同じやり方で、ジーターが辛抱強く自らのチームを作ろうとしていることは明白だ。
ただ……一昨年はカブス、昨季はアストロズが世界一になった成功例があるとはいえ、同じ方法をマイアミの地で成し遂げるのは容易なことではないだろう。