解説者・戸田和幸が見た日本代表の成長 W杯は総力戦、チームは「乗ってくる」

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「賢かった」乾のファウル

ボールを奪ったエリアのシェア 【データ提供:データスタジアム】

 ここまで攻撃のことを主に書いてきましたが、対になる守備面はどうだったか。この試合でも前の4人がしっかりと規制をかけてくれたことで、アンカープレーヤーを経由させることなく、窮屈なビルドアップを強いることに成功していました。蹴らせてこぼれ球を回収するという形もかなり見られ、何より2列目以降の選手たちが迷いなく次の場所を探すことができているので、両CB含めサイドまで出ての守備にも積極的に対応できていました。

 また、後半23分に乾がイエローカードを受けた場面。ミドルゾーンにてシェイク・クヤテに奪われてカウンターを受けてしまいましたが、全速力で戻り、ボックスに侵入される直前にてファウルで止めたシーンです。ファウル自体は褒められることではないのかもしれませんが、もしこの場面でそのままドリブルでボックス内まで侵入されてしまっていたら、どうなっていたか分かりません。攻撃に転じた場面でロストしてしまったために、チームとしても素早い対応ができず、もし乾がファウルしてでも止めるという決断をしなかったら、失点していたかもしれません。

 レベルが高くなれば高くなるほど、こういった1つ判断が試合の流れを大きく左右することになります。乾が「止める」という決断をし、イエローカードをもらう代わりに決定機になったかもしれないピンチを未然に防いでくれたことは、とても大きなワンプレーだったと感じました。

たとえワンポイントだとしても

岡崎はつぶれ役として、本田の同点弾を「影のアシスト」 【Getty Images】

 そして、途中から出場した選手たちも役割を正しく理解した働きを見せました。2度目の同点弾を決めた本田は、さすがの嗅覚と度胸を見せました。

 岡崎慎司は2点目のきっかけとなる守備――柴崎のパスがズレて相手に渡ったところへすかさずプレスを行いました。彼が追ったことでDFが後ろへ下げたボールをGKがキックミスすると、拾った昌子からの速いパスを正確に止め、大迫へとつなぎます。すかさずボックス内へとポジションを移すと、大迫からのクロスに勇気をもって飛び込み、乾からの折り返しにも再び飛び込みました。GKの前でつぶれ役となってくれたことで、本田までボールを届けました。岡崎らしい素晴らしいプレーだったと思います。

 W杯は総力戦です。これだけテンションの高い試合を繰り返していくと、ここからは確実に疲れが顔をのぞかせます。この試合のように、たとえワンポイントだったとしても、途中から出場する選手たちの活躍、そしてピッチに立つことはできないかもしれない選手たちの振る舞いが、チームを支え、成長させます。

 この大会の中で、チームはどんどん成長していると思います。ヨーロッパのトップレベルでの経験値が高い岡崎や本田、武藤嘉紀のような選手がベンチに控えてくれているということは、西野朗監督にとってはとても心強いことだと思います。

 出場する選手たちが皆、良い仕事をする。そんなチームが乗らないわけがありません。ポーランド戦は、私はロシアへと向かう機内の中で見ることはできませんが、勝利で決勝ラウンド進出を決めてくれることを、心から期待しています。

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