解説者・戸田和幸が見た日本代表の成長 W杯は総力戦、チームは「乗ってくる」

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難敵セネガルと引き分けたゲームで活躍した乾 【Getty Images】

 サッカー日本代表は24日(現地時間、以下同)、ワールドカップ(W杯)ロシア大会のグループリーグ第2戦でセネガル代表と対戦し、2−2の引き分けに終わった。

 日本はこの試合、2度にわたってリードを許す展開を強いられたが、前半34分に乾貴士が、後半33分には途中出場の本田圭佑がゴールを決めて追いつき、試合をドローに持ち込んだ。この試合について、サッカー解説者の戸田和幸さんに、データスタジアム株式会社のデータを用いながら解説してもらった。

強い圧力をかけてきたセネガル

プレーエリアのシェアと各選手の平均ポジション 【データ提供:データスタジアム】

 共に初戦に勝利した日本とセネガル。この試合に勝つことができれば、ほぼ決勝ラウンド進出が決まるというチーム同士の戦いは、日本がチームとして成長していることがよく分かる内容での引き分けに終わりました。

 セネガルは初戦でエムバイエ・ニアンと2トップを組んだマメ・ビラム・ディウフがベンチスタートとなり、17番のパパ・アリウヌ・エンディアイエが中盤の一角で出場し、システムも4−4−2から4−1−4−1に変更。日本の中盤3人(長谷部誠、柴崎岳、香川真司)に対して人数をそろえ、中盤を厚くすることを考えたのか、個人的には香川の存在を意識して13番のアルフレッド・エンディアイエをアンカーポジションに置いたのではないかと感じました。

 キックオフと同時にセネガルが強い圧力をかけてきたことで、日本はいきなり押し込まれる展開となります。トップに入ったニアンの高さを生かしたポストを起点に、主に右サイドハーフ(SH)のイスマイラ・サールのスピードを使って日本の左サイドから攻め込みます。この試合のヒートマップを見てみると、ニアンのプレーエリアは日本の左サイドに偏っていることが分かります。吉田麻也とのバトルではなく、より体格で優位に立つことができる昌子源のところに当てつつ、長友佑都の背後のスペースを狙っていたということでしょう。

 もともとは左ウイングが主戦場のニアンですが、絶対的なストライカーがいないチーム事情もあり、初戦同様にトップでの出場となりました。その抜きんでた体格とスピードを生かして日本を苦しめ、39分には鋭い反転で長谷部をかわしたP・エンディアイエからのスルーボールに反応、吉田を振り切り決定機を迎えましたが、ここは川島永嗣がタイミングよく前に出てストップし、事なきを得ました。

 戦前の予想以上にセネガルが圧力をかけてきたのか、日本はコンパクトな3ラインを形成することも難しい状況に陥り、開始早々、いきなり右からムサ・ワゲにクロスを入れられ、サディオ・マネに渡ってしまうという危うい場面を作ってしまいます。

左サイドを攻略され、後手を踏んで許した1失点目

クロスやスルーパス、ドリブルなど攻撃を仕掛けたエリアのシェア 【データ提供:データスタジアム】

 11分に喫した1失点目も日本の左サイドからでした。スローインから始まったプレーで、長友がサールにスピードで抜き去られてクロスを入れられると、一度は跳ね返したもののこぼれ球をカリドゥ・クリバリからサールへと展開されます。陣形を整えるのが間に合わず、ボールサイドへのアプローチが遅れると、サールからボックス内のニアン、キープされてオーバーラップしたワゲへとつながれ、クロスを入れられると……ファーサイド、戻った原口元気がヘッドでのクリアを試みましたが、ユスフ・サバリに渡ってしまい、シュートを許すと川島がパンチしたボールがマネに当たってゴールに入ってしまいました。

 人数がそろっていたとしても、一度ズレが生じてしまうと、その後の展開の中でアジャストさせるのが難しくなるくらい展開が早いのが、世界トップレベルのサッカー。長友を抜き去ったサールのクロスを跳ね返した後、人数はそろえられたものの、全ての局面での対応が少しずつ遅れてしまい、再びクロスを入れられた後の対応でも後手を踏んでしまっての失点となりました。

 既に敗退が決まってしまったため、どんなメンバーで臨んでくるかは分かりませんが、最終戦の相手ポーランドには、ニアンとは別次元の、最前線に一度ボールが入ってしまったら奪い返すことは至難の業となる世界トップの選手、ロベルト・レバンドフスキとアルカディウシュ・ミリクがいます。

 セネガル戦では序盤の相手の強い圧力を前に受けに回ってしまい、正しく対応できるようになる前に失点してしまいました。ポーランドがスタートから仕掛けてくることはコロンビア戦を見ても、十分考えられること。次戦以降の戦いに向けては教訓としたいところです。

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