高校バレー界注目の“妹”たち 成長の秘訣は最も身近にある大きな目標!?

月刊バレーボール

天真爛漫に、我が道を行く宮部愛芽世

中高で全国制覇を遂げた宮部愛芽世 【月刊バレーボール】

「勝ちましたー」

 今年の春高で優勝を遂げた試合直後のコート上のインタビューで、観客席にいる姉に向かって、妹はそのように報告をした。

 その“妹”とは、金蘭会高(大阪)の2年生エース、宮部愛芽世だ。3つ上の姉、藍梨は金蘭会高時代に全日本女子に選出された経歴がある。ナイジェリア人の父親を持ち、姉妹そろって同年代をリードする身体能力の高さが光る。

 藍梨の中学時代の試合を目にし、愛芽世も競技の道を歩み始めたが、姉が脚光を浴びるにつれ、悩む時期もかつてはあった。同じバレーボールの世界に身を置く中で、姉について質問を浴びることもあり、“姉の七光り”と注目されることが、どことなく嫌に感じていたのである。

 ただ、自身も金蘭会中時代に全国大会を制覇、全日本ユースに選出されるなど、ステップアップするうちに、捉え方が変化した。

「“妹”という立場は変わらないので。その光をいいように使って、アピールできたらな、と思えるようになったんです」

 そもそも、姉とは「性格も全然違いますよ!」愛芽世はニコリと笑う。最近でこそ、後輩もできたことで感情表現もおとなしめだが、自らの得点シーンではこぶしを突き上げ、喜びを爆発させていた。姉が静かにこぶしを握りしめるタイプだったことからも、姉妹で異なる点は確かにあった。

 ルーキーとして臨んだ春高バレーでは優勝に貢献するパフォーマンスを披露し、「妹という理由だけで注目されているのではないと、見せられたんじゃないかな」と照れた。今は姉が応援席にいても気にせずプレーできるようになったといい、“妹”という枕詞からはすでに、卒業の気配がしている。

姉や兄に続けと息巻く金の卵たち

アジアユース女子選手権大会から帰国し、メダルを手に笑顔を見せる西川吉野(中央)と樫村まどか(右) 【月刊バレーボール】

 宮部姉妹はそろって全日本のアンダーカテゴリーに選出されたが、同じ金蘭会高にはもう1組、将来性ある姉妹がいる。西川有喜・吉野だ。

 現在3年生の有喜はエースとして、昨年度の高校2冠に貢献した。その2つ下の吉野は中高で、姉と同じユニホームを着る。パワフルなスパイクが持ち味の有喜に対し、妹は器用さが売りだ。

 吉野は「お姉ちゃんは、超えたい存在です」と言ってはばからず、昨年末のJOC杯では最優秀選手賞を筆頭に個人賞を総なめ。また、5月のアジアユース女子選手権大会ではMVPに輝くなど、“お姉ちゃん超え”の片りんをうかがわせる。ちなみに、「勉強の出来は、譲れません!」と有喜は、学校の先輩そして姉としての意地も。

 そのアジアユース選手権大会で、ベストミドルブロッカーに選ばれた水戸女高(茨城)の樫村まどかも、将来を有望視される“妹”だ。兄の大仁は慶應義塾大でプレーし、今年度の全日本男子に登録された。高校時代は茨城高専(工業高等専門学校)でプレーしていた異色の経歴を持ち、昨年は全日本ジュニア男子のメンバーとして国際大会を経験した。

 妹のまどかは幼少期こそ、音楽に励んでいたが、兄たちと一緒にバレーボールをしたいとの思いから競技を始めた。中学3年生時にはJOC杯にて、個人賞の一つである「オリンピック有望選手」を受賞。その時は、「兄弟にこうした人がいることは、すごく目標になる。学べることもあるので、得ですね」と話していた。自身は全日本ユースを経験した今、「(兄を)すごいなと思う反面、超えられるようにしたい」と意気込んでいる。

 兄や姉と同じ道を進み、最も身近な存在を目標としながらレベルアップを続ける“妹”たち。いずれは日本のバレーボール界を背負ってほしい、と大きな期待に包まれている。

(坂口功将/月刊バレーボール)

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著者プロフィール

1947年創刊。バレーボールの専門誌として、その黎明期から今日まで、日本のバレーボールを取り上げ、その報道内容は、全日本、Vリーグはもちろん、小・中・高・大学生、ママさんまで、多岐に渡る。

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