IDでもっと便利に新規取得

ログイン

ハリルが強化し、西野監督が継いだもの
異なるアプローチで得た「対応力」

西野監督が取り入れた、ボトムアップ方式

ハリル監督の手法は「一方的にやり方を聞いて、それにトライする」。いわばトップダウン方式
ハリル監督の手法は「一方的にやり方を聞いて、それにトライする」。いわばトップダウン方式【写真:ロイター/アフロ】

 こうした基準のもとに招へいしたのがハビエル・アギーレであり、ヴァイッド・ハリルホジッチだった。


 ザッケローニが日本人の長所を武器にするチーム作りを進めたのに対し、ハリルホジッチのアプローチは弱点を改善することだった。ポゼッション志向が根強く残るチームに対し、縦に速い攻撃を強く求め、寄せるだけでボールを奪おうとしない姿勢に対しては、球際での勝負=デュエルを強調すると、対戦相手やシチュエーションに応じて、メンバーやシステムを変えて戦った。


 もっとも、ハリルホジッチ監督の手法は、「一方的にやり方を聞いて、それにトライする」(吉田麻也)、いわばトップダウン方式。その指導法、コミュニケーションの取り方、戦い方において次第にチーム内で拒否反応が強まっていったのは確かだろう。


 今合宿においても「ハリル監督のときは前向きな議論がなかった」(本田)、「選手同士で話し合うことを禁じられていた」(槙野智章)、「縦に、縦にという一辺倒だった」(原口元気)、「縦、縦と言うだけで明確な戦術はなかった」(岡崎慎司)といった言葉が聞かれた。


 一方、西野監督の採った手法はそれとは真逆、「双方の意見を取り入れつつ、ディスカッションしながら作り上げていく」(吉田)、いわばボトムアップ方式。時間帯やスコアにおける戦い方のシミュレーションに及ぶまで、選手全員が意見し、ディスカッションしてディテールを詰めたことで、日本人が苦手とする対応力を養っていく。


 長谷部が語ったように、コロンビア戦はまさに対応力が求められたゲームだった。


 素晴らしい試合への入りから、早くも前半6分に先制点と数的優位を手に入れた。ところがその後、重心が低くなり、それにもかかわらず無理に縦パスを入れようとしたことで引っ掛かり、カウンターを浴びるシーンが何度かあった。


 だが、後半はボランチの柴崎岳が前に出たり、サイドハーフの原口がハーフスペースに入ったりしてボールを保持し、コロンビアを焦らす。リスクを負って仕掛ける場面と、リスクを負わない場面とのメリハリをはっきりさせて、1人多いことの優位性を保ったのだ。コロンビア戦のあと、西野監督は胸を張った。


「ハーフタイムでの全員の修正力、対応力、運動量も含めてコロンビアを上回れたんじゃないかと思います」

セネガル戦で求められるのもまた……

ハリルによって強化されたチームを西野監督が異なるアプローチで引き継ぎ、コロンビア戦での勝利に結びつけた
ハリルによって強化されたチームを西野監督が異なるアプローチで引き継ぎ、コロンビア戦での勝利に結びつけた【Getty Images】

 セネガル戦で求められるのも、対応力である。原口が言う。


「いろいろな準備をしますけれど、正直どうなるか分からない。予想以上に相手が速いかもしれないし、だとしたら裏にスペースは作りたくない。時と場合によって、自分たちでうまく進めなきゃいけない」


 前任者と西野監督のアプローチの違いについて触れたが、もちろん引き継いでいるものもある。コロンビア戦で原口が、柴崎が、乾貴士が相手の突破を阻み、食らいつき、ボールを奪い取ったのは、ハリルホジッチが強調していたデュエルそのものだ。


 もちろん、それは彼ら各々が欧州の所属クラブで学び、磨いたわけだが、就任会見で西野監督が「ハリルホジッチ監督のスタイルは日本サッカーに必要なもの」と語ったように、前任者によって提示されたワールドスタンダードを、チームとして大事にしているのは間違いない。


 ハリルホジッチによって強化されたチームを西野監督が異なるアプローチで引き継ぎ、コロンビア戦での勝利に結びつけた。どちらがよくて、どちらがダメ、という単純な話ではなく、その両方をしっかりと評価、検証しなければならないだろう。


 むろん、それもすべてはW杯が終わってから。今はただ、目の前の大一番、セネガル戦でもコロンビア戦と同じように熱く、それでいて冷静なファイトを望むばかりだ。

飯尾篤史
飯尾篤史

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

おすすめ記事(スポーツナビDo)

記事一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント