ハリルが強化し、西野監督が継いだもの 異なるアプローチで得た「対応力」

飯尾篤史

日本代表は決戦の地、エカテリンブルクへと出発

午前中にトレーニングを終えた日本代表は、第2戦が行われるエカテリンブルクへと旅立った 【写真は共同】

 セネガル戦を2日後に控えた6月22日(以下、現地時間)、午前中にトレーニングを終えた日本代表は午後、戦いの舞台であるエカテリンブルクへと旅立った。

 非公開練習が連日続いているため、選手たちがミックスゾーンで話せる内容は限られている。各々が映像を見て感じたセネガルの印象は話すことはできても、スカウティングに基づいたチームとしての狙いまで明かすことはできない。

 そもそも「セネガルに向けては、向こうに行ってから詳しく」と西野朗監督は話しているため、セネガル対策が選手に授けられるのは、エカテリンブルクに入ってからということになる。なおさら言葉にできることは少ないだろう。

 22日のトレーニング後には、本田圭佑がミックスゾーンに姿を現した。

 太ももの打撲のため、コロンビア戦翌日の20日、翌々日の21日と別メニューでの調整を続けた本田は負傷の状態について「大したことはないです」と語ったあと、セネガル戦に向けて、こんなことを言った。

「自分の中ではいくつか弱点を見つけていて、そこをどう突けるかだと思っている。それを徐々に選手たちとも共有し始めているし、僕自身で突ける部分もある」

 その弱点とは、相手のサイドバックは攻撃志向が強い一方で、背後のケアをおろそかにしがちなところなのか、それとも、時折不注意なミスや集中を欠いたプレーを見せる中盤の隙なのか、あるいは別の何かなのか……。

 セネガル戦のピッチでその答えが示されたとき、日本の勝利は近づいてくる。

印象に残ったキャプテン長谷部の「ある言葉」

コロンビア戦の翌日、ミックスゾーンに現れた長谷部が発した「ある言葉」が強く印象に残った 【Getty Images】

 代表チームがいなくなったカザンで、コロンビア戦翌日からの3日間をあらためて振り返ってみると、長谷部誠の言葉が印象深い。

 21日にミックスゾーンにやってきたキャプテンは、「このチームのストロングポイントは?」という問いに対して、やや迷いながらも「対応力」と答えたのだ。

「2014年のギリシャ戦もそうでしたけれど、11対10の試合というのは本当に難しいところがある。でも、多くの経験を積んできている選手がいるなかで、自分たちに対応する力が付いてきているというのは感じています。チームとしての経験値は間違いなく上がっている。もちろん、前半のうちに対応できていればよかったですけど」

 対応力という答えが、なぜ印象深いのか――。

 それはまさに、「自分たちのサッカー」という理想へと傾きすぎて惨敗を喫したワールドカップ(W杯)ブラジル大会後の大きなテーマだったからだ。

 ブラジル大会後に技術委員長に就任した霜田正浩氏はかつて、こう言っていた。

「(アルベルト・)ザッケローニ監督時代の4年間は順調で、どんな相手にも自分たちのサッカーで勝負するんだと、自信を持って本大会に臨んだけれど、現実は甘くなかった。ただ、W杯の3試合だけですべてを否定する必要はなくて、捨ててはいけないものがある。

 でも、足りないものもあった。アジアでは格下と戦う機会が多いから、圧倒できるかもしれないけれど、世界に出ていけば格上が多くて、耐えながら勝ち点3をもぎ取るような戦いをしなきゃいけない。そうした2つの引き出しを持って、臨機応変に戦えるようになる必要がある。それが次の監督を選ぶ際の基準でした」

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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