「黄金世代」に迫る勢いを見せる高校生 世界の団体戦で頂点に立った女子ゴルフ

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提供:トヨタジュニアゴルフワールドカップ

目覚ましい10代アスリートの活躍

「トヨタジュニアゴルフワールドカップ Supported by JAL」に参加した日本女子チーム、(左から)古江彩佳、西村優菜、安田祐香の3人 【画像提供:トヨタジュニアゴルフワールドカップ】

 2020年東京五輪を2年後に控え、10代アスリートの活躍が目覚ましい。

 卓球では女子の平野美宇(日本生命)、伊藤美誠(スターツ)の“みうみま”コンビの活躍に触発され、同年代の選手たちがしのぎを削りあい、00年生まれの選手たちが「黄金世代」として躍進している。男子では、さらに下の世代である03年生まれの張本智和(JOCエリートアカデミー)が、世界の強豪選手、特に“難攻不落”であった中国選手を次々と倒し、卓球界に旋風を起こしている。

 体操では“絶対王者”内村航平(リンガーハット)の全日本個人総合選手権の連覇を止めたのが19歳の谷川翔(順天堂大)。内村だけではなく16年リオデジャネイロ五輪団体金メダルの白井健三(日本体育大)、田中佑典(コナミスポーツ)らを抑えての優勝は、大会最年少記録を更新することになった。

 若手の活躍の波はゴルフ界にも浸透。女子では1998年度生まれが「黄金世代」としてツアーを席巻。史上初の国内女子メジャー大会アマチュア優勝を果たした畑岡奈紗(森ビル)、ツアー最年少優勝記録を持つ勝みなみ(明治安田生命)らを筆頭に、今季ツアー初優勝を果たした新垣比菜(ダイキン工業)、トップ10入りを果たしている三浦桃香、原英莉花(ともにフリー)といった選手が次世代のスター候補となっている。

 そしてその「黄金世代」の下にも、スター候補選手が育ってきている。彼女たちが活躍を見せたのが6月12日〜15日まで開催された「トヨタジュニアゴルフワールドカップ
Supported by JAL」(愛知・中京ゴルフ倶楽部石野コース)でのことだ。

世界にチャレンジする「登竜門」的な大会

3日目終了時点で個人成績単独2位に入った西村 【画像提供:トヨタジュニアゴルフワールドカップ】

「トヨタジュニアゴルフワールドカップ」は男子15チーム、女子9チームによる国別チーム対抗戦。今年で26回目を数える同大会は、02年からトヨタが特別協賛を行っており、「未来への夢のあるチャレンジ」の場として、毎年高校世代のトップ選手が、お互いの力を競い合う大会となっている。過去には松山英樹(レクサス)、小平智(Admiral)といった日本を代表する選手を輩出しただけではなく、10年の全英オープンで優勝したルイス・ウーストハウゼン、11年のマスターズを制したシャール・シュワルツェル(ともに南アフリカ)、16年マスターズ覇者のダニー・ウィレット(英国)など、ゴルファーの夢舞台で頂点に立った選手も数多く参戦しており、ジュニア世代の選手にとってはプロへの「登竜門」的な大会となっている。

 女子は15年からスタート。第1回大会では新垣比菜、蛭田みな美(フリー)、松原由美(吉川CC)の日本チームが優勝を飾り、初代女王となった。その後2年は2位に終わり悔しい思いをしている。

 4年目の今年、メンバーに選ばれたのは安田祐香、古江彩佳(ともに滝川二高3年)、西村優菜(大阪商大高3年)の3人。このメンバーについて日本チームの橋田源太郎監督は「今までにないベストメンバー。レベル的にも強い選手が3人そろい、優勝できるという感覚でいます」と大会前から評価していた。

 安田は17年の日本女子アマチュアを制しており、西村と古江も2年連続の同大会参加。西村は「昨年は(2位という結果に)悔しい思いをしたので、今年はリベンジするという気持ちで臨みました」と、優勝のみを目標として大会に挑んだ。

 今大会のチーム戦は、3人のうち各ラウンド上位2人の結果(※男子は4人中3人のスコア)が反映され、4日間の合計スコアで争われる。そのため、「団体戦では一番大事なのがチームワーク。誰かがボギーをたたいたら誰かがバーディを取らないといけない。ダブルボギーの場合は取り返すのが難しいので、絶対にたたいてはいけないと。そういうことを考えながらプレーしないといけないので、個人戦とは違い、皆が気持ちでまとまる意識が必要になります。それにはキャプテン中心に盛り上げないといけません」と橋田監督は話す。

 そのため3人が立てた目標が「全員が60台を出す」こと。初日は西村と古江がいきなり68を記録し、唯一チームスコアが130台となる136を記録し、首位に立つ。2日目は3人とも60台を出せなかったものの、大きく崩れることなく首位の韓国と1打差の2位をキープ。そして3日目は再び西村が68を記録し、3日目終了時点で2位の韓国に6打差をつけた。また個人成績でも西村が単独2位に入り、安田も70、70、71と3日間を安定したスコアで周り、単独3位に立っていた。

安田が最終日猛チャージで個人首位タイに

最終日に猛チャージをかけた安田は8バーディ、1ボギー、1ダブルボギーの67で周る 【画像提供:トヨタジュニアゴルフワールドカップ】

 そして最終日。朝から雨が降る中でのラウンドとなったが、日本の1番手で登場した安田が猛チャージ。前半だけで4つのバーディを奪い、単独首位だったイ・スジョン(韓国)に並びトップに立つ。後半の9ホールでも10番、11番で連続バーディ、難しい15番ホールでもバーディを奪い単独トップに。17番ではティーショットを曲げてしまいパーオンに失敗するとボギーをたたき、再びイ・スギョンにトップを譲る。しかし、最終18番では長めのバーディチャンスにつけると、最後はしっかりとカップに入れてホールアウト。4日間を通してベストとなる8バーディ、1ボギー、1ダブルボギーの67で個人首位タイに立った。

 また単独2位につけていた西村も4バーディ、1ボギーの69、古江も5バーディ、2ボギーの69をマークし、日本チームが目指していた「全員60台」を最終日に達成。さらに最終18番では、3人そろってバーディフィニッシュを決め、最後の最後までチームに貢献するという気持ちを見せるメンタルの強さも発揮し、チーム成績では2位の韓国に10打差をつけて、3年ぶり2度目の優勝を勝ち取った。

 2年連続の出場となった西村は「このチームで勝てたことがうれしくて、最終日、やっと全員60台という目標が達成できて良かったです。1人1人が毎日分析して、明日につながるゴルフをしていたと思うので、最終日の結果につながりました。昨年のリベンジができてすごくうれしいです」と語ると、個人首位タイとなった安田も「自分の得意なショットがしっかり寄ってくれて、バーディもたくさん取れたので良かったです。昔から仲が良いので楽にできたし、2人は崩れることがあまりないので、落ち着いてできたのが良かったと思います」と最終日の快進撃の秘訣も口にした。

個人成績で首位タイとなった安田(中央)と韓国のイ・スギョン(右) 【画像提供:トヨタジュニアゴルフワールドカップ】

 西村が大阪、安田と古江が兵庫出身で、小さな頃から試合会場で顔を合わせ、切磋琢磨(せっさたくま)してきた3人だからこそ、同じチームになった時に、それぞれの良さを出して、頼れるところは頼るという「チームワーク」を見せたのだ。

 ゴルフは個人競技なのでストイックに自身の技術を磨くことが大事なスポーツだ。ただ、自分の足りない部分や課題を見つけるために、他の選手と比較したり、研究することも必要。その比較の対象が周囲にたくさんいればいるほど大きな刺激となり、さらに技術力を磨くきっかけになる。今回の大会を通して3人は、海外勢のプレーを見て「飛距離が安定して出ていた」(安田)、「韓国の選手は丁寧なパターを打っていて、そこが自分にはまだまだ足りない」(古江)、「海外の強い選手が自分と違うプレーをしていたので、そのスタイルを自分にも取り入れてみたい」(西村)と貪欲に他選手の良さを取り入れたいと話していた。

 3人は来年のプロテストを視野に入れて取り組んでおり、今後はプロの世界、さらには世界へとチャレンジの場を変えていくつもりだ。現在活躍する98年度生まれの「黄金世代」の背中を追いつつ、すでに彼女たちはその先の未来へも視線を向けている。
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