第2戦の地・エカテリンブルクへ 日々是世界杯2018(6月21日)

宇都宮徹壱

モスクワの空港でアクシデント発生!

日本対セネガルの試合が行われるエカテリンブルクに到着。モスクワとの時差は2時間で若干冷える 【宇都宮徹壱】

 ワールドカップ(W杯)8日目。この日は、グループCの2試合とグループDの1試合の合計3試合が行われる。すなわち、サマラではデンマーク対オーストラリア、エカテリンブルクではフランス対ペルー、そしてニジニ・ノブゴロドではアルゼンチン対クロアチア。私はモスクワからエカテリンブルクに移動して、フランス対ペルーを取材する予定であった。ところが、思わぬトラブルに遭遇。現地にはたどり着いたものの、試合には間に合わず、取材はキャンセルと相成った。当連載は現地観戦する方もご覧になっているようなので、この場を借りてトラブルの内容を公開することにしたい。

 私はこの日、モスクワのシェレメチボ空港発8時30分のアエロフロート航空で、エカテリンブルクに向かう予定であった。チェックインカウンターに到着したのは1時間前。国内線ならば十分に間に合うという、これまでの経験に基づいた確信があった。ところが「もうチェックインの時間は過ぎました。あなたの席はありません」と係員に言われて愕然(がくぜん)とする。「そんなバカな!」と言っても、まったく聞き入れてもらえない。結局、チケットカウンターで次の便のビジネスクラスを新たに購入する羽目になった。

 実はアエロフロートではシェレメチボ空港発の国内便に関して、W杯期間中の6月11日から7月17日までの間、チェックインを「2時間半前までに済ませるように」との告知を出していた(https://www.aeroflot.ru/jp-en/news/60886)。そういえば私は、昨年のコンフェデレーションズカップを含めて、アエロフロートもシェレメチボ空港も利用してこなかった。それゆえ「たぶん大丈夫だろう」という思い込みが、今回の手痛い失敗につながったわけである。今後は国際線の感覚で、3時間前には空港に到着するようにしよう。現地組の皆さんも、参考にしていただければ幸いである。

 さて、モスクワからエカテリンブルクまでのフライトは、およそ2時間半。到着後、時計の針を2時間進めることになる。モスクワと日本との時差は6時間だが、当地では4時間。今大会の開催都市の中で、エカテリンブルクは最も東に位置しており、一般的には「アジアとヨーロッパの分岐点」とされている。ちなみに最も西に位置しているカリーニングラードとの時差は3時間。ロシアは広大な国なので、国土の東から西まで9時間の時差があるが、今大会の会場は3時間の幅で収まっている。なお、気温はモスクワと比べて2〜3度低い。セネガル戦を観戦する人は、念のため上着を用意したほうがいいだろう。

FIFAランキングが当てにならない今大会

W杯において、アジア勢として初めて南米チームに勝利した日本。次のセネガル戦の結果が注目される 【宇都宮徹壱】

 予定していた取材ができなかったので、今回はW杯開幕から1週間を振り返ってみることにしたい。すでにあちこちで語られていることだが、今大会ほどFIFA(国際サッカー連盟)ランキングが当てにならない大会もないだろう。出場32カ国のうち、最もランキングが低いロシア(70位/6月7日付、以下同)が早々にグループリーグを突破。また、初出場のアイスランド(22位)がアルゼンチン(5位)に引き分け、メキシコ(15位)がドイツ(1位)にW杯で初めて勝利するなど、驚きの結果も相次いだ。この中に、コロンビア(16位)を破った日本(61位)の快挙を入れてもいいだろう。

 これと関連して気になるのが、南米勢の不振ぶりである。ブラジルは初戦でスイスに引き分け、アルゼンチンは2戦目でクロアチアに0−3で完敗、ペルーもすでにグループリーグ敗退が決まった。現時点で勝利を手にしているのは、グループ突破を決めたウルグアイのみ。前回のブラジル大会では、スペインやイタリア、イングランドといった欧州の優勝経験国がグループリーグで敗退しているが、今大会はその逆の現象が起こっている。一方でアフリカ勢も、今大会は軒並み「やられ役」に甘んじている。唯一の例外は、ポーランドを2−1で撃破したセネガルで、今後は台風の目になりそうな勢いである。

 今大会から採用されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)は、フランス対オーストラリア(2−1)、スウェーデン対韓国(1−0)、デンマーク対オーストラリア(1−1)などの試合で発動。フランス、スウェーデン、オーストラリアにPKが与えられ、いずれもゴールに結びついている。アジア絡みの試合が多いのは、もちろん偶然であろう。今大会では、ファウルをスルーされた選手が長方形を描いてアピールするシーンをよく見かけるようになった。だが、実際にVARによる判定が行われるのは、今のところPKの可能性がある場面が大半だ。PKを取られた方は不満もあろうが、今のところ大きな混乱もなく運用されていると言ってよいだろう。

 最後にアジア勢について。開幕戦でロシアに大敗したサウジアラビアを除けば、今のところ健闘している。オーストラリアと韓国も、VARによる失点がなければ、今大会での評価はもっと違ったものになっていたはずだ。またモロッコに勝利し、スペインにも(0−1で敗れたものの)互角に近い戦いを見せたイランも、アジア唯一のポット3としての実力を遺憾なく発揮している。今後、アジアの評価を左右する重要な役割を担うのは、コロンビアに勝利した日本であろう。24日(現地時間)のセネガルとの一戦は、日本のグループリーグ突破のみならず、アジアの底力を示す絶好の機会でもある。
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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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