若手の成長促す「二段モーション」解禁 NPB新ルールをOBが斬る(3)

ベースボール・タイムズ

昨季は西武・菊池がシーズン途中に二段モーションを指摘され、フォーム修正を余儀なくされた。新ルール導入により、このような事案もなくなりそうだ 【写真は共同】

 日本プロ野球では、今季から「二段モーション」が解禁された。

 公認野球規則において、二段モーションを反則投球としていた日本独自の項目を削除。12年間の禁止期間を経てからの解禁で、当事者の投手、さらには打者にどういう影響があるのか。プロ野球OBの中根仁氏(元近鉄ほか、現役時代は外野手)、佐野慈紀氏(元近鉄ほか、同投手)、門倉健氏(元中日ほか、同投手)の3氏が顔を合わせ、ルールの是非について語り合った。

昨季は菊池雄星が指摘されフォーム修正

――「国際化」を理由に2006年に禁止された二段モーションが、今季から再び「国際化」を理由に解禁となりました。その過程にもいろいろと問題はあるでしょうが、それも含めて今回の「二段モーション解禁」が、今後の日本野球にどのような影響を与えるでしょうか?

門倉 二段モーションに関しては今までもいろいろ言われてきましたけど、今年「解禁」にしたのなら、もうこの先もずっと「解禁」のままにしてもらいたい。「禁止」なら禁止のままでもいい。ピッチャーが一番大変なのは投球フォームを変えることですから。それが自分のボールをさらに良くするためじゃなくて、ルール変更によって変えないといけなくなるのはすごく大変です。

佐野 そもそも「どこからが二段モーション」という線引きがハッキリしていなかった。ピッチャーも手探りでしたからね。極端に途中で動作を止めて打者のタイミングをずらすようなものだったらダメでしょうけど、それ以外の二段モーション的なものは、結果的に言っても別にそれほど問題じゃなかった。実際、二段モーションだからと言ってバッターがそのモーション自体を嫌がっていた訳ではなかったし、規則に明記したからダメだってことじゃなくて、もう少し現場の意見を聞きながら話を進めていってもらったらな、とは思いますね。

門倉 あやふやでしたよね。昨年とか一昨年も、「これは絶対に二段モーションでしょ」っていうのもあった。でも何も言われなかった投手もいれば、シーズン途中に菊池雄星(埼玉西武)が審判から指摘を受けてフォーム修正を強いられるようなこともあった。審判によって見解が違ったり、曖昧だったりもしたので、それを今回ハッキリと「解禁」としたのはいいことだと思う。

打者としては「まったく影響ない」

――二段モーションに対して、日本のルールが厳しすぎるという声も挙がっていましたが、その論争もこれでなくなりそうです。そもそも、二段モーションをすることによって投手側のメリットいうのは、どういった部分にあるのですか?

門倉 メリットとは、また違うでしょうね。自分に合うか、合わないか。合わなかったら意味がない。昔だったら、三浦大輔(元横浜DeNA)が二段モーションで投げていましたけど、あのフォームを真似したら全員が良くなる訳じゃない。個人差がある。

佐野 そう思います。二段モーションは、個性の一つですよ。バッターが打席内でいろんな構え方をするように、ピッチャーもいろんな投げ方をする。その中の一つが二段モーションだと思うし、それは反則じゃなくて、個性。その個性をルールによって禁止する必要はなかったと思いますね。

門倉 まだ体幹が出来上がっていない若い投手などは、二段モーションで一度足を上げた時に止まってから投げた方がボールに体重が乗るって話も聞きますけど、それも個人差ということになるでしょうね。ただ、「二段モーション解禁」となれば、それをやってもいいということで気持ち的なゆとりもそうですし、投手としての引き出しが一つ増えることになる。それで良くなる投手は出てくると思います。

中根 バッターからすると、二段モーションに関しては、まったく影響ない。投げる度に投球モーションを変えるっていうのはインチキだと思いますけど、二段だとしても常に同じタイミングで投げてくることに関しては、まったく問題ない。二段だから打てない、タイミングが取れないということはない。投手が自分のタイミングで投げていれば、バッターはそれに合わせればいいだけ。一段だろうが、二段だろうが、そこは関係ないですね。

佐野 その意味では、二段モーションよりも毎回違うタイミングで投げるピッチャーの方が打ちにくいでしょうね。でもそれはズルい。セコいですよ。

中根 そう。クイックが腹立つんですよ。ランナーなしの状態で、いきなりクイックで投げてこられると打てない。そう思ってクイックのタイミングに合わせると、今度は足を上げてゆっくりと投げてきたりして……。チョコ(前田幸長/元ロッテほか)がそうだった。あれは困った。

佐野 僕にとっては田口壮(元オリックスほか/現同2軍監督)がそうでしたね。「なんでコイツとタイミングが合うんかな」って思って、一回クイックで投げてみたんですよ。そしたらそれがハマった。

門倉 自分もやってるじゃん!

佐野 いやいやいや、だって打たれるんやもん! その代わり、毎回クイックで投げてたから、そこまでズルい訳じゃないよ。

門倉 まあ、そこは“工夫”だということですよね。クイックは打ちにくいけど、二段モーションは別に打ちにくい訳じゃない。そして二段モーションは投手の個性の一つだということ。今回の「解禁」で、特に若手の中には良くなる投手が増えてくるかもしれない。そうなってもらいたいですね。

今回は中根仁氏、佐野慈紀氏、門倉健氏のOB3氏にプロ野球の新ルールを語ってもらった 【ベースボール・タイムズ】

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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