4年前の反省を生かしてコロンビア撃破 結果を出せば、盛り上がりはついてくる

中田徹

W杯を巡るメディアやファンの空気

初戦の勝利が日本のサポーターを大いに盛り上げる 【写真:ロイター/アフロ】

 私にはこの4年間、ずっと忘れずにいた大久保嘉人の言葉があった。イトゥで、日本代表の敗北をなじるように挑発的な質問を選手たちにぶつける記者がいた。大久保に対しては「大久保さんねえ、もしかして今回の日本代表は、大会前の期待も含めて、チームの実力以上に、過剰に持ち上げられていたんじゃないですか?」と突っ込んでいた。だが、大久保は決して挑発に乗ることなく、極めて冷静に、自身の思いを率直に語った。

「それはどこの国も一緒じゃないですか。同じ日本人ですから、こうやって持ち上げられる、持ち上げてくれるということは、選手としては良いプレッシャーにもなりますし、良い結果を出したいというモチベーションにもなっています。別にそれが過剰すぎるとは全然思わないです」

 W杯は、「サッカーの世界一を決める大会」という枠組みをはるかに超えた、地球規模のイベントだ。サッカー大国と言われる国にもサッカーに関心を示さない層はいるが、それでもW杯の期間中だけは、祭りに加わる人たちがいる。そういう人たちを抱き込んだメディアやファンの空気が、W杯に臨む代表チームへの異常な期待の高まりを生むのかもしれない。その現象をあの時、大久保は簡潔に説明したのだと、私は理解している。

「H組で一番強いチーム」にどう立ち向かうか

初戦でポーランドを撃破したセネガルを「H組で一番強い」と評する記者も 【Getty Images】

 残念ながら、今回の日本代表にはW杯前特有の期待の高まりがなかった。3月のベルギー遠征の体たらく、ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の解任を巡る日本サッカー協会の不手際もあったのだから、それも仕方はない。コロンビア戦後にコメントした川島永嗣も、敏感にそのことを感じていたようだ。

「期待されているかどうかというのは、自分たちがどういう結果を残して、どういうプレーをしているかというのが一番だと思う。それを顕著に周りの人が感じるわけなので、それを変えることができるのは自分たちしかいない。初戦で結果を出すということが一番だった」

 2戦目はセネガルが相手だ。ポーランドを2−1で倒したゲームを見たベルギー人記者が「H組で一番強いチーム」と太鼓判を押す好チームである。この強豪相手に対し、吉田は試合の鍵をこう語った。

「もっと自信を持ってやる。もっと自分たちの良さ、1人1人の特徴を出せるような戦い方をしなければ、次は難しくなると思う。もっと岳が前に出てボールを受けられるような、(香川)真司が間でボールを受けられるような、元気と乾がサイドで1対1ができるような形を作り出せるように、後ろは引き続き硬く守りたい」

 コロンビア戦に勝った自信を、個々の「もっと」につなげてさらなるパフォーマンスの向上につなげてほしい。そう切に祈っている。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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