香川真司に漂う“やってくれそうな予感” 4年の時を経て、殻を破った背番号10
ブラジル大会での挫折とクラブでの苦悩
4年前のブラジル大会では結果を出せず、大きな挫折を味わうこととなった 【Getty Images】
「4年前、コートジボワールに負けた夜は、今思い出しても精神的に非常に厳しかった。あの日のことは忘れもしない」と本人はあらためて沈痛な表情で打ち明けたが、初戦黒星という激しい落胆と動揺を当時のアルベルト・ザッケローニ監督も見逃さなかった。だからこそ、就任当初から才能を高く買い、攻撃の軸に据えてきた背番号10を先発から外したのだ。この出来事に象徴されるように、当時の香川はメンタル面でもパフォーマンスの部分でも、しばしば不安定さを露呈しており、それが代表で輝けない最大の理由だと言われていた。以前、10番を背負っていた中村俊輔にも、そういう傾向があっただけに、香川にはエースナンバーが重すぎるのではないか、と見る向きもあったほどだ。
本人もそんな課題を直視し、ブラジル後の4年間は好不調の波のない選手になるべく取り組んできたが、クラブでも代表でも、さらなる苦しみを味わうことになった。ドルトムントでは、トーマス・トゥヘル監督が率いた15−16年シーズン前半戦に、ユリアン・バイグル、イルカイ・ギュンドアン、マルコ・ロイスと形成した「マジック4」で評価を上げたが、それ以外の時期は相次ぐけがや、し烈な競争に苦悩することが多かった。
代表でも、ハビエル・アギーレ、ハリル両監督から期待を寄せられながら、どこか物足りないパフォーマンスを繰り返していた。「香川ならばもっと10番にふさわしい結果を残せるはずなのに……」と両指揮官も歯がゆさでいっぱいだったことだろう。
「自信を力に変えて、勝ち進むことだけを考えたい」
「自信を力に変えて、勝ち進むことだけを考えたい」と香川。すでに次を見据えている 【Getty Images】
この行動に関しても賛否両論が飛び交ったが、とにかく香川が日本代表を何とかしようと必死に考え、殻を破って行動を起こした事実は変わらない。その意気が仲間たちにも伝わり、代表の空気も微妙に変化した。香川の変ぼうがコロンビア戦の歴史的勝利を後押しした部分は、少なからずあったはずだ。
「もうコロンビア戦は終わったこと。まだ1勝して1点を取っただけで、これからもっとタフな戦いが続く。次の相手は11対11で戦わなきゃいけない。10対11で戦ったコロンビアにも、そう簡単に勝てないんだとあらためて感じたので、もっともっと上にいく気持ちを出していきたい。自信を力に変えて、勝ち進むことだけを考えたい。そういう意味でも、(次戦の)セネガル戦がすごく大事になると思います」
サランスクからベースキャンプ地・カザンに戻り、24日の第2戦に向けて再始動したナンバー10は、晴れやかな表情で次なる戦いに気持ちを切り替えた。本当の勝負は残り2戦。ここで結果を出せなければ、コロンビア戦の奮闘も無意味なものになる。そうならないように、香川にはさらなる輝きを放ち続け、日本をW杯史上最高成績へと導いてほしい。今の彼には、それだけの大仕事ができそうな予感がある。