大谷、打者優先での復帰はあるのか? 気になる再検査の結果とチームの判断

丹羽政善

「経過は順調」と語るソーシア監督

故障者リストに入っている大谷だが、6月19日のダイヤモンドバックス戦ではベンチに入り、笑顔を見せる場面も 【Getty Images】

 6月8日(現地時間)、右肘内側側副靱帯損傷のため、故障者リストに入った大谷翔平。早ければ来週中、遅くとも再来週前半に再検査が行われ、今後の方針が決まる予定だ。

 これまでの経過に関しては順調と伝えられる。エンゼルスのマイク・ソーシア監督も18日、「われわれのメディカルスタッフとチームドクターは楽観的だ」と話している。楽観的というのは、靭帯の再建手術――つまり、トミー・ジョン手術を避けられるだろう、という意味だろうが、仮にそうであったとしても、投手としての復帰そのものは早くても8月半ば以降か。

 大谷と同じように自身の血液から採取した血小板を使って組織の修復や再生を図るPRP注射を行ったアスリート34人の復帰状況をまとめた論文(2013年7月)がある。長くエンゼルスのチームドクターを努めた故ルイス・ヨーカム医師も名を連ねているが、それによれば、平均12週で復帰し、最短は10週とのこと。もちろん個人差があり、損傷の程度にもよるが、このデータに倣うなら、8月下旬の復帰が想定できる。

投手のリハビリに打撃は影響なし?

 ではその場合、打つ方はどうするのか。

 ソーシア監督は先日、「再検査の結果次第だが、先に打つ方で早期復帰する可能性がある」と話し、大谷がすでに左手だけでティー打撃を始めていることも明かした。ということは、投手としての復帰を目指すリハビリ期間中に、指名打者として試合に出場することもあり得るということか。6月8日の電話会見で「リスクがある」として、その可能性を否定したビリー・エプラーGMだが、再検査の結果、打つ分には問題ないと診断されたら、撤回はありうるのか。

 いろいろ聞くと、「もちろん損傷の程度にもよるが、投げない限り通常のプレーで悪化するとは考えにくい。打撃は可能」という声は少なくない。打球が詰まったりしたら……という声も聞くが、靭帯はそこまで脆くはないそうで、ソーシア監督のコメントも、そうした情報が念頭にあると思われる。

 もちろん、その一方でリスク――肘に大きな負荷がかかった際、傷ついた靭帯ではその力に耐え切れず、周辺を痛めるといった可能性も排除できない。エプラーGMが言っているのはそういうことだろうが、それも程度次第。チームドクター、メディカルスタッフがどう進言するか。この点に関しては、今後改めて問われることになるだろう。

 故障発覚後、一部米メディアが、「手術は避けられないだろう」と報じたが、再検査の結果、その見立て通りになったとしても、打撃は問題ないということになれば、シーズン終了後まで手術を遅らせるとみられる。7月に手術を行っても、10月に手術を行っても、復帰は20年4月で変わらないからだ。

 となるとそこでも、後半は指名打者として起用するかどうか、という議論が避けられなくなる。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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