「申告敬遠」で野球の魅力アップ!? NPB新ルールをOBが斬る(2)

ベースボール・タイムズ

今シーズンから導入された「申告敬遠」で野球の魅力はアップするのだろうか 【写真は共同】

 試合時間の短縮が目的である「申告敬遠」。メジャーリーグでは2017年から実施され、日本プロ野球でも今季から新ルールとして導入されている。守備側の監督が敬遠を申告すれば、投手が捕手にボール球を4球投げなくとも打者は四球となる制度だ。一方、時間短縮にはひと役買いそうだが、それによって試合の流れなど、失われるものもあるのでは……という声も聞こえる。

 果たして、「申告敬遠」で野球の魅力はアップするのだろうか。プロ野球OBの中根仁氏(元近鉄ほか、現役時代は外野手)、佐野慈紀氏(元近鉄ほか、同投手)、門倉健氏(元中日ほか、同投手)を3氏が顔を合わせ、ルールの是非について語り合った。

「敬遠も含めて野球」と考えると…

――今季から「申告敬遠」も導入されました。ボール球を4球投げなくても敬遠できるので確実に試合時間は短くなりますが、それによって試合の流れ、ドラマ性が失われるという声も多くあります。申告する、しないは監督の裁量となっていますが、実際に今季から導入された同制度をどう感じますか?

佐野 「申告敬遠」に関しては、僕は基本的に反対なんですよね。やっぱりピッチャーは投げないと。「敬遠」は悪いことじゃない。見下してる訳じゃない。打者に対して“敬意”を表している訳だから、「どうぞ、一塁に進んでください」という場面は観てもらった方がいいと思う。現役時代は「敬遠してからピッチャー交代」とされるのがすごく嫌だったし、それが無くなるのはいいことだけど、基本的には反対ですね。

門倉 敬遠も含めて野球ですからね。それに、球を投げたら何かが起こるかもしれない。ドラマ性という意味でも、昔は敬遠のボールが暴投になってサヨナラという試合もあったし、敬遠の球を打ったバッターもいた。そういう可能性がなくなるのは確かに寂しいですね。

佐野 そうそう。意外と緊張するよね、敬遠って。確かに試合時間は短くなるかもしれないですけど、それもたかが知れていると思うんですけどね。バッター的にはどうなんですか?

中根 バッターとしても難しいよ。例えば、自分が次の次の打者だとする。「さぁ、そろそろ」と思ってベンチで準備を始めようとした時に、バッターがいきなり初球ツーベース、次の打者が「申告敬遠」ってなったら、「もう、オレの打順!?」ってなるよ、絶対に。気持ちの準備も何もできずに打席に立つことになる。下手したらスパイクを履き替えている最中ってこともあるからね。やっぱり試合の流れというのはある。打席に入るまでに、ピッチャーの配球だったり、顔色だったりも見ている訳で、それがなくていきなり「打て!」と言われたら困る。打席に向けて気持ちをつくっていくこともできない。それも慣れなのかなとは思うけど、打者は大変だよ。

打者を準備させない作戦も?

門倉 確かに、自分のルーティンをできずに打席に入るっていうのは望ましくないでしょうね。慌てて打席に入っても打てないでしょうからね。可能性としては“2連発”もあるじゃないですか……。

中根 そうか。そうだよね。2人連続で「申告敬遠」されたら、まったく準備してない状況で打席に入らないといけなくなる。9回2死から三塁打を打って、「あ、もしかしたら俺に回ってくるかもな……その前にトイレ行っとこ」ってベンチ裏に下がろうとしたら、「おい! 中根! 何してんだ! お前の番だぞ!」ってなる可能性がある。「今、ベルト緩めたところなんだけど!」ってなっちゃうよ。

佐野&門倉 ハハハハ(笑)

中根 それは大げさかも知れないけど、打者に準備させないということを作戦の一つとして使うこともできる。打者としては絶対に嫌だけど、そのやり方、作戦はどうなの? とも思うよね。

佐野 どっちにしろ、ピッチャーも投げないと気持ち悪い。調子がいい時はそこまで影響しないだろうけど、「今日はもう一つ感覚がつかめないな」って時の4球は大きい。そこでフォームの修正もできるし、ピッチャーとしてもいいことばかりじゃない。それも含めて、何でもかんでも「時間短縮のために」っていうのはどうかと思うよ。「もう導入したことだから変えられない」みたいな小さいことを言わずに、もう一回、考え直してもいいかもしれない。

門倉 現役選手の意見、もしかしたらOBでもいいかもしれないけど、現場の意見をくみ上げてもらいたい。例えばアンケートとかでもいいし、そういうことをして欲しいという気持ちはありますね。選手側も試合をダラダラやろうとは思ってない。時間短縮のためにいろいろと努力している訳ですから、うまく協力して、一緒に考えながら決めていければと思いますね。

<<第3回:二段モーション編(6月22日掲載予定)につづく>>

今回は中根仁氏、佐野慈紀氏、門倉健氏のOB3氏にプロ野球の新ルールを語ってもらった 【ベースボール・タイムズ】

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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