トヨタにとっては好結果だったが… ル・マン24時間レースで感じた違和感

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問われるLMP1ノンハイブリッドの存在意義

今季はF1と並行してWECにも参戦しているアロンソ 【(C)TOYOTA MOTOR CORPORATION】

 まぁ今のWECやル・マンの状況を考えると、そうなるのも分からなくはない。メーカーワークスとしてシリーズに残ったのはトヨタのみ。予算やリソースに限りあるプライベーターがトヨタと戦うのは、たとえ同じ速さを持っていたとしても、そもそも不可能だ。しかも、誰が疑心暗鬼になったのか、プライベーターにはトヨタより速く走れないよう、レース中の上位20%のラップタイム(イエローなしの場合)がル・マンではコンマ5秒以上遅くなければならないとか、1スティントで許される周回数が1周少ないとかさまざまな規制が設けられ、最初から不利な条件の数々が突きつけられていた。トヨタのエンジニアは、「ル・マンではプライベーターの方が速いはず」と、計算上のラップタイムを強調していたが、プライベーターは完全に手も足も出ないようにされていたのだ。そうなると、観客の目を引き付ける何かが必要になる。それがアロンソ選手だったのだろう。

 結果としては、主催者の目論見通り、トヨタは独走での1−2を決めたわけだが、正直な話をするとプレスルームの中では、パラパラと拍手した記者が数人いただけで、ほとんどの記者はシーンとしていた。走る前から結果が分かっているレースほどワクワクしないものはないし、今年は他のクラスの争いも序盤からバラけてしまったため、余計に皆が白けてしまったのだろう。特にLMP1クラスでは本物の“レース”や“バトル”がなかったため、そういう雰囲気になったしまったと思う。

 トヨタ内ではロペス選手対アロンソ選手、中嶋選手対可夢偉選手というバトルがあったのだが、長くル・マンを見ているプレスのみんなが見たかったのはコース上でのライバルチームとのバトルや駆け引き。そういう意味では、03年に唯一のワークスであるベントレーが1−2フィニッシュした時と同じぐらいの白けっぷりだったと言っていい。

 そして、今回のル・マンを経て分かったのは、ノンハイブリッドクラスの無意味さ。トヨタは、同じカテゴリーに分類されているLMP1ノンハイブリッドに対して、あからさまな“警戒”を隠さなかったが、今年のWEC開幕戦・スパ、第2戦・ル・マンを見る限り、LMP1ノンハイブリッドの存在意義はない。つまり今後、全エントラントが撤退する可能性が大きい。今の状況であれば、どのプライベーターも、LMP2で他のチームと戦って勝った方がメディア的にもPR的にもより価値があるからだ。

 そもそも優勝できないカテゴリーに大金を投じるプライベーターは皆無と言っていいだろう。そうなると、トヨタも撤退に向けてのシナリオを書かなければならなくなる。アロンソ選手はル・マンの優勝ドライバーとなり、WECのチャンピオンも獲得すれば、間違いなくシリーズを離れて今度はインディに移るはず。そうなった場合、ライバルのいないクラスを維持しながら、シリーズを盛り上げることは不可能だ。そういう意味で、今年のル・マンは、スポーツカーレースの将来に大きな疑問を投げかける1戦となったと言っても過言ではない。

(テキスト:貝島由美子)

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