先発かサブか、揺れる本田圭佑の立ち位置 「勝つためにやれることを全部やる」

飯尾篤史

香川にアドバンテージがあるのは間違いないが……

パラグアイ戦で、目に見える結果を残した香川にアドバンテージがあるのは間違いないだろう 【写真:ロイター/アフロ】

 ところが、本田の口から飛び出したのは、意外な言葉だった。

「僕自身、結果にどれだけコミットできるか。ここまで準備をしてきているので。まだスタメンで出るのか、サブで出るのか分からないですけれど、どっちでも与えられた役割は、やはり結果にコミットできるかだと思っている。

 相手の守備がどういうふうに来るかにもよりますけれど、スペースを探しながらしっかりボールを受けて、起点になりながらゴール前に侵入していく。その数と質、それは高めていかないといけないですね」

 スタメンで出るのか、サブで出るのか分からない――。その言葉は、まぎれもなくチーム内での今の本田の立ち位置を表すものだ。少なくとも不動のレギュラーではないのが明らかだ。

 W杯に臨むにあたって、目に見える結果を残した香川の“勢い”を買うという判断は、当然だろう。また、香川はパラグアイ戦で結果を残しただけでなく、相手をサイドに誘導する強度の高いプレスを敢行し、守備においても貢献した。パラグアイ戦の戦い方がチームのベースになるのであれば、やはり香川にアドバンテージがあるのは間違いない。

 では、前線でコンビを組むのは誰か。

 パラグアイ戦では岡崎慎司が1トップを務めたが、傷めているふくらはぎの回復が芳しくなく、コロンビア戦では欠場が濃厚だ。もしかすると、バックアップメンバーで控える浅野拓磨との変更もあるかもしれない。19日に最前線に入るのは、おそらく大迫勇也だろう。

 大迫と本田は、いずれもボールを足元で受けてキープし、タメを作るタイプ。その2人が前線で並ぶことの難しさは、スイス戦で証明されたばかりだ。状況は、たしかに本田の不利を示している。

これまでも“ひと振り”で人生を切り開いてきた

本田はこれまでも、その“ひと振り”で自らの人生を切り開いてきた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 もっとも、ベンチスタートになったからといって、本田の出番がないわけではない。むしろ、西野監督はここ一番での勝負強さをスーパーサブとして生かしたい、と考えていてもおかしくない。出場時間が15分でも、ワンチャンスを決め切ることができるかどうかだ。

「まだスタメンかサブか分からないと言っていたが、ベンチに座った場合、勝利に貢献する意識は?」と問われた本田は、きっぱりと言った。

「先ほど言ったように勝つためにやれることを全部やる。ピッチ内外で、もうその作業はすでに始まっています。それは自分がここで語らずとも、僕が何をやっているのか、逆に周りのみんなに聞いてもらった方がいいと思います」

 自身最後となることが濃厚の3度目のW杯で実際にサブに回ったとき、本田がどんな振る舞いを見せるのかも興味深い。8年前、大会直前にレギュラーから外れた中村俊輔は、悔しさを押し殺し、自身に代わって右サイドハーフに入った松井大輔にアドバイスを送り、ハーフタイムにはピッチから戻ってきた選手たちに水を手渡した。その光景は、本田の脳裏にも焼き付いているはずだ。

 むろん、サブに回ると決まったわけではない。これまで本田は“ひと振り”で人生を切り開いてきた。その“ひと振り”を、他でもない本田自身が信じているに違いない。

「ここまで来たら本当、開き直るしかないので。チームとしてとにかく全部出す、出し切る、それはただの根性だけじゃなく、ロジカルな部分を含めて全部出し切る。そういう落ち着いた状態でいます」

 6月19日、サランスクでのコロンビア戦。本田圭佑が国歌を聞くのはピッチの上か、ベンチか。17日の午後、日本代表はチャーター機でサランスクへと飛び立った。

2/2ページ

著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント