先発かサブか、揺れる本田圭佑の立ち位置 「勝つためにやれることを全部やる」

飯尾篤史

選手を選ぶ作業は「ギャンブル」に近い

日本代表を率いる西野監督は、誰を選び誰を外すかという“ギャンブル”のような作業に追われている 【Getty Images】

 監督の仕事とは選ぶことではなく、外すことだ。

 そう語ったのは、今夏までアーセナルを率いたアーセン・ベンゲルである。なるほど、たしかにスタメン11人やベンチ入り18人を選ぶという作業は、スタメンから外す、ベンチから外す選手を選ぶ作業に他ならない。極めて困難なタスクであり、その重みはクラブチームでも、代表チームでも変わらない。

 あるいは、ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会で日本代表をベスト16に導いた岡田武史は細部に至るまで入念に準備し、何度もシミュレーションを重ねたが、それでも決断を下すという行為は「ギャンブルだ」と語り、「このタイミングでどうするか、当たるか外れるかの連続だから。怖いよ、本当に」と、その重圧を明かした。

 日本代表を率いる西野朗監督も今、まさに11人を選び、11人から外すという、ギャンブルに近い作業に迫られている。

1週間ぶりのメディア対応で本田が語ったこと

本田はスイス戦でトップ下として先発出場するも、不完全燃焼に終わった 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 午後に決戦の地、サランスクへと旅立つ6月17日(以下、現地時間)、午前の練習終了後に、選ばれるのか、外れるのか、その動向が最も注目されている男――本田圭佑がミックスゾーンに姿を現した。

 パラグアイとのテストマッチが行われた12日、オーストリア・ゼーフェルト合宿の最終日となった13日、ロシア・カザン合宿がスタートした14日と、全員がミックスゾーンを通ることが義務付けられた3日間で一切、口を開かなかったため、本田がメディアの取材に応じるのは10日以来、1週間ぶりのことになる。

 この7日間で本田の置かれている状況は、大きく変わった。

 5月30日のガーナ戦では2シャドーの一角として、8日のスイス戦ではトップ下として先発したが不発に終わり、チームも2連敗を喫した。続く12日のパラグアイ戦はスタメン全員が入れ替わり、チームは4−2で西野体制初勝利を飾った。この試合でトップ下に入った香川真司が1得点2アシストの活躍を見せた一方で、本田は最後までベンチを温め続けた。

 W杯に出場するスイスと、予選で敗退して世代交代を敢行しているパラグアイとではレベルの差が異なるため、この結果を持って本田より香川のほうがトップ下にふさわしいとは思わない。

 非公開練習において本田がサブ組に回ったことが報じられたが、それでも個人的には大舞台での勝負強さを備えた本田がスタメンで、香川は乾貴士とセットでスーパーサブとして起用すべきだと、まさにこの日、本田が取材に応じる瞬間まで思っていた。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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