本塁打トップも打率低迷のハーパー それでもオフは“ブライスの冬”が到来

杉浦大介

今オフのFA最大の目玉ブライス・ハーパー、今季打率は低迷も本塁打数はナ・リーグトップ 【Getty Images】

「ニューヨークでのプレーは他の場所と比べてどう違うか?」 
「右翼の狭いヤンキー・スタジアムで打つのは好きか?」
「ブーイングはファンからのリスペクトの表れだと思うか?」

 6月12日(現地時間)、ヤンキー・スタジアムでのヤンキース戦に臨んだナショナルズのブライス・ハーパーに対し、ニューヨークのメディアから矢継ぎ早に質問が飛んだ。ハーパー本人はまともには取り合わなかったが、それでも記者たちの熱意は変わらない。米東海岸のメディアは、今も昔もターゲットには容赦ない。もしかしたら来季以降、ハーパーはヤンキースのユニホームを着て、こうして地元記者たちに対処することになるのか……?

 ナショナルズのスーパースターとして君臨してきたハーパーは、今季終了後にFA権を得る。2015年にナ・リーグMVPを獲得し、今季もリーグ1位の19本塁打(13日終了時点)を放ってきた現役最高級のスラッガー。25歳と年齢的にも今が旬なこともあり、オフには多くのチームが興味を持つことは間違いない。

「誰かがFAになると、周囲の人々はエキサイトするもの。僕、(マニー・)マチャド、フレディ・フリーマン、ノーラン・アレナド、ムーキー・ベッツだろうと、(スター選手の)FAはエキサイティングな時間なんだ」

 ハーパー本人のそんな言葉通り、移籍が盛んなアメリカンスポーツではオフのスター選手争奪戦も楽しみの1つである。

 NBA最大のスーパースターであるレブロン・ジェームズがFAになると、スポーツ界はその一挙一動をめぐって大変な騒ぎになる。現在のMLBでそれに近い興味をひく選手となると、実力、実績を兼備しているだけでなく、歯に衣を着せぬ言動でも知られるハーパー以外にはいない。

ヤンキース入りの実現度は低いが…

 ハーパーがヤンキー・スタジアムでプレーするのは、15年以降では今回が初めてだった。両親はもともとヤンキースファンで、本人もミッキー・マントルを偶像視してきたことはよく知られている。そんな背景、エピソードがあれば、ニューヨークメディアが血の匂いを嗅ぎつけたサメのように動いたのは当然だったのだろう。

 もっとも、先に断っておくと、現時点でハーパーのヤンキース入りの可能性は極めて低いというのが一般的な見方ではある。

 昨オフ、大谷翔平との契約に失敗したヤンキースは、その後にマーリンズからジャンカルロ・スタントンをトレードで獲得。アーロン・ジャッジ、スタントンという2枚の長距離砲をそろえるに至り、特にスタントンは27年まで残り2億6500万ドル(約293億円)という途方もない契約を残している。だとすれば、さらに最大で10年3億5000万ドル(387億円)程度の超大型契約が必要とみられるハーパーを狙うのは理にかなわない。

1/2ページ

著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント