【RISE】那須川天心&梨々兄妹が重要な一戦へ RISE過去最大イベントで集大成の戦い

長谷川亮

17日に幕張メッセイベントホールで行われる「RISE 125」でビッグマッチに臨む兄・天心(左)、妹・梨々の那須川兄妹にインタビュー 【写真:チナスキー】

 立ち技打撃格闘技「RISE」の過去最大イベントとなる「Cygames presents RISE 125」が千葉・幕張メッセイベントホールで17日に開催される。

 メインイベントでは同団体でプロデビューし、ここまで30戦無敗と破竹の勢いを見せる“神童”那須川天心が世界フェザー級王座決定戦でタイのロッタン・ジットムアンノンと激突。ロッタンは2月に天心が戦ったムエタイの強豪スアキム・シットソートーテーウからダウンを奪い、判定勝利を飾った強敵。天心でさえダウンを奪えなかった敵を倒した「過去最強の敵」は、天心の連勝街道を止めるか。それとも“神童”と呼ばれるゆえんを再び示すことができるか注目だ。

 また同大会では天心の妹で15歳の梨々もプロデビュー戦を迎える。対戦相手はNJKFのミネルヴァ・アトム級2位につけ、プロでも多くの試合を戦っている18歳・佐藤レイナ。天心と同じ遺伝子を持ち、同じ環境で練習をしている梨々がデビュー戦をからインパクトを残すか、それとも試合経験の豊富さを佐藤が見せつけ返り討ちにするか。

 今回は大会を目前に控えた那須川兄妹に、試合に向けての意気込みなどを聞いた。

妹プロデビューに天心「厳しさ体感してほしい」

プロデビューとなる梨々は「勝つ自信はあります」と勝利宣言! 【写真:チナスキー】

――まずはそれぞれ対戦相手の印象を教えて下さい。

梨々 対戦相手は前蹴りを結構出してくると聞いていて、練習の動画を見たら追い込みもすごくやっていたので、スタミナがあるし打たれ強いのかなと思います。年齢はあっちの方が上ですけど、そこは関係なく勝ちたいし、勝つ自信はあります。

天心 本当に強い相手だと思いますし、自分がやってきた集大成。ここで全部を出さないと勝てない相手かなと思います。階級を上げていきなりそういう強い選手とやるっていうのは他の選手ではなかなかないと思うし、これは自分にとって挑戦でもあるので、でもやってやります。
 印象は本当に1発1発が重くて、それに加えてフィジカルがめちゃくちゃ強い。これがたとえば3ラウンドの試合だったら全然勝てると思うんですけど、今回は5ラウンドなので、フィジカルでも長引いたら差が出るし、経験も体重の面でも相手が上なので、長丁場になるとちょっと危険かなと思います。だからもう最初から倒しにいきます。でも、もちろん長丁場になっても大丈夫な練習をやっています。

――いよいよ梨々選手がプロデビューするにあたり、練習の様子だったりを天心選手から見ていかがでしょうか。

天心 彼女は学校があるので、プロ練習の時間には出られていないんですけど、一緒に練習する時は自分が本当に倒すぐらいまで、腹を効かせたり、ヘロヘロになるぐらいまでやって追い込んでいます。それぐらいやらないと、プロデビュー戦でここまで注目されるっていうのは普通の選手だったらないですし、本当にプロとして、「プロとはこういうもんだぞ」っていう心構えだったり厳しさを体感してもらいたいと思ってやっています。でもそれは勝ってほしいからやっているのであって、まだ考えが甘いところがあります。これからどんどん試合をして強くなっていくと思うんですけど、今はちょっとまだまだですね。

梨々 自分でもそう思うので頑張ります。

天心 やっぱりお客さんが見に来てくれるし、もうアマチュアではなくプロなので、自分のためだけに戦う訳ではないし、それはそのうち分かればいいんですけど、やっぱり自分が経験していて身近にいるので、それはそうやって伝えるのが一番早いと思ってます。

“神童”でもデビュー戦は「めちゃめちゃ緊張」

“神童”と呼ばれる天心でもデビュー戦は緊張したと話す 【写真:チナスキー】

――天心選手自身がプロになった時、そういう心構えの変化があったのでしょうか?

天心 自分が「この道で生きる」って決めて本当に変わりました。もう「プロになる=格闘家として生きる」っていうことで、そのために高校も選びましたし。だから彼女にもそういう心構えを持ってほしいと思います。まだデビュー戦なのでしょうがないかなとは思いますけど、ただもっとできるかなというところはあります。

――ご自身のデビュー戦を振り返ってはいかがですか?

天心 リングに立ったら大丈夫だったんですけど、デビュー戦はめちゃめちゃ緊張しました。妹の相手はプロで何戦もしてベルトも持っていますけど、倒せるものはこっちの方が多いと思うので、あとはスタミナや気持ちで負けなければと思います。

――梨々選手としても気持ちでは負けない?

梨々 はい、そうですね。

天心 ちゃんと話せよ。

梨々 取材はまだ全然慣れなくて、どういうことを話すか聞いても「自分で考えろ」って言われるので聞いてもいないです(苦笑)。ただ、やっぱり気持ちは負けないです。もちろん体力もそうなんですけど、やっぱり気持ちで負けちゃったらダメなので、気持ちで負けないところは自分でよいところだと思います。

――梨々選手は兄弟の中でも最も才能があると言われていますが、兄である天心選手から見ていかがですか。

天心 そんなことない気もするんですけど、ただ自分に似ているところはあります。言われたら何でもやろうとするし、吸収するのは早いし。あとはどれだけ本番に強いかですね。練習でいくら強くても、本番でダメな人ってやっぱりいるので。でもそれに関しては大丈夫だと思うんですけど。

――梨々選手は本番に強いタイプですか?

梨々 自分は本番の方が行けるかなっていう感じです。リングに上がる前は緊張するんですけど、上がったらもう「やるしかない」みたいな気合いでやるので、リングの上ではあまり緊張しないです。この間の会見だったりの方が慣れていないので緊張します。

梨々「インパクトを残さなきゃ」

16年12月のワンチャローン・PK・センチャイムエタイジム戦では衝撃的な後ろ蹴りでノックアウトを奪った 【写真:中原義史】

――その会見でデビュー戦はお兄さん以上のインパクトを残したいという発言がありました。

梨々 デビュー戦なんでやっぱりインパクトを残さなきゃいけないというのがあったし、天心と同じぐらい有名になって強くなりたいと思ったので。いい試合をして勝てたらいいなと思っています。

――お兄さんの試合の中でも印象に残っているものというと、どの試合になりますか?

梨々 後ろ蹴りで倒した試合ですかね(16年12月のワンチャローン・PK・センチャイムエタイジム戦)。あの試合はスゴいなと思いました。

――ああいった後ろ蹴りは梨々さんもできるのですか?

梨々 いやぁ、まだ(試合で)やったことはないです。でも練習ではやっているので、しっかり狙えば当たるかなって。

天心 ああいう大技はできる人が少ないし、やろうという発想がないんですよね。だから当たるんだと思います。あとはさっきの話にもつながってきますけど、本番の強さはありますよね。「ここでやろう」って思える奴が強いです。

――天心選手は5月RIZINの中村優作戦でも胴回し回転蹴りの大技を当てダウンを奪っていましたが、あれは「ここだ!」というタイミングがひらめいたりするのですか?

天心 あれは入ってくるパターンが一緒だったので思いつきました。あの一つ前にワンツーを打ってきて、それにフックを合わせたんですけど、それは相手との距離があまりにも近くて、また離れて、もう1回来るなと思ったので、それに合わせてやりました。そういうのはもう一瞬、コンマ何秒とかです。

梨々 試合中にそんなパッと思いつくことなんてできないですよね。自分はセコンドの方が相手がどうやっているとかよく分かるから、セコンドの話はよく聞いてやっています。あとは相手の空いてるところを狙ったり、自分で出したい技をやったりして進めています。

天心 彼女は割と冷静に戦う方だと思います。プロの試合はまた全然違うのでどうかは分からないですけど、たぶん大丈夫だと思います。自分もセコンドの声はちゃんと聞こえているし、そこはきっと一緒なんじゃないかと思います。

体とともに“頭”のスタミナ必要な格闘技

体だけでなく、頭も使う格闘技。天心の格闘技脳は試合中でも冷静に働いている 【写真:中原義史】

――いま話に出ましたが、梨々選手が思う天心選手のスゴいところというと、あらためてどんなところになりますか。

梨々 やっぱり全勝していてKOも多いし、スタミナもあるし、試合中のパッていう思いつきもスゴいし、全体的にです。

――普段の生活だったりスゴいなと思うところはありますか?

梨々 それはあんまりないんですけど(苦笑)、だってゲームをやって遊んでいても勝つまでやるんです(苦笑)。負けそうになるとめっちゃ邪魔してきたり(笑)。でも、練習と普段のギャップはスゴいなって。練習する時はもう集中しているので。

天心 切り替えは大事ですよね。普段から練習中の時みたいな顔をしてたら、ほんとおかしい人になっちゃうので(笑)。練習は本当に普通の人にとっての仕事みたいなものだと思うので、そこは本当に頭も使って真面目にやります。普通の仕事はやっぱり朝から夜までやるものだと思うんですけど、僕らは本当に2時間3時間だけのために、そこに全部使い切ってやっていて、あとはもうダラーっとしています(笑)。

――激しく動いて体を酷使するのはもちろんですが、頭も同様に集中してよく使い、考えてやっているのですね。

天心 頭も使いますよね。頭のスタミナも体のスタミナも使います。それで相手に対してのイメージや試合のイメージを持ちながらやって。ただ頭は冷静じゃないと、試合で真っ白になっちゃったらダメなので、練習はワーッとやっていますけど考えながらやっています。

天心「もちろんKOします」

2人とも試合の目標は「KO勝利」。どんな試合結果を見せてくれるか 【写真:チナスキー】

――やはり女子の試合だと男子に比べKOが少ないですが、天心選手が持つ倒す力や感覚というのは梨々選手も同じく持っていると思いますか?

天心 倒す感覚はあると思うんですけど、それはこれからつけていくものかなとも思います。自分もプロになってからだいぶついたというのもあります。女子なのでなかなか倒すことは難しいですけど、自分の先輩である神村エリカさん(元RISE女子王者)は女子でもバンバン倒していましたし、だからできなくはないと思います。まだ年齢が若いので、当たれば倒せるものは持っていますけど、もっと必要ですよね。今は自分と同じフィジカル(トレーニング)の場所へ行って、体の中から、体幹を整えたり変えているので、あと1年、3試合ぐらいしたら倒せるようになるんじゃないですかね。そういう感覚を初戦でつかむ人もいますし。

――天心選手の場合もどこかでその感覚を“つかんだ”というのがあったのですか?

天心 デビュー戦はいきなりダウンを取ったんですけど、「こんなので倒れるのか」っていうのがありました。ビックリしました。アマチュアはヘッドギアをつけるしグローブも大きいから、プロになって初めて殴ってる感じがしましたし、試合前にグローブをつけて「うわ、小っちゃ」って思いました。でも、だからこそ自分ももらったらダメだし、逆にそういう風にも思いました。軽くでももらえば倒れてしまうし、どれだけ有利に進めていても1発もらったら終わってしまうので。

――1度しかないデビュー戦、これまでの集大成を掛けて臨む一戦とそれぞれ大勝負となりますが、最後にお互いへのエールをお願いします。

梨々 KOで勝ってほしいとそれだけですね。いい試合をしてほしいです。

天心 まぁ、もちろんKOしますし、言われなくても分かっています(笑)。いまTEPPENジムは日本の中で本当にいい環境だと思うので、そこで男子に交じってバリバリに追い込んでいるので、自信は相当ついていると思います。なのでその自信をすべてぶつけて、悔いなくやってほしいです。
■「RISE 125」全対戦カード

<メインイベント RISE世界フェザー級(-57.15kg)王座決定戦 3分5R無制限延長R>
那須川天心
ロッタン・ジットムアンノン

<セミファイナル 第3代RISEフェザー級(-57.5kg)王座決定戦 3分5R無制限延長R>
森本“狂犬”義久
工藤政英

<第13試合 Road to RIZIN KICK Tournament決勝戦 3分3R延長2R>
一回戦1の勝者
一回戦2の勝者

<第12試合 SuperFight -62kg契約 3分3R延長1R>
チャンヒョン・リー
町田光

<第11試合 SuperFight -90kg契約 3分3R延長1R>
清水賢吾
“Sterk”バダ・フェルダオス

<第10試合スーパーフェザー級(-60kg)3分3R延長1R>
野辺広大
裕樹

<第9試合 -67kg契約 3分3R>
HIROYA
高谷裕之

<第8試合 ミドル級(-70kg)3分3R延長1R>
イ・ソンヒョン
松倉信太郎

<第7試合 -68kg契約 3分3R延長1R>
“ブラックパンサー”ベイノア
ヤン・ジンファン

<第6試合 スーパーフェザー級(-60kg)3分3R延長1R>
一馬
白鳥大珠

<第5試合 Road to RIZIN KICK Tournament一回戦2 3分3R延長1R>
MOMOTARO
原口健飛

<第4試合 Road to RIZIN KICK Tournament一回戦 3分3R延長1R>
宮崎就斗
藤田大和

<第3試合 -58kg契約 3分3R延長1R>
篠塚辰樹
半澤信也

<第2試合 -53kg契約 3分3R>
奥脇一哉
金子梓

<第1試合 -46kg契約 3分3R>
佐藤レイナ
那須川梨々

<オープニングファイト2 KAMINARIMON×新空手 アマチュア最強決定戦 -63kg契約 2分2R(延長1分1R)>
清水佑太郎
澤谷龍也

<オープニングファイト1 KAMINARIMON×新空手 アマチュア最強決定戦 -57.5kg契約 2分2R(延長1分1R)>
須田翔貴
大野力
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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