3度の戦力外受けた久保裕也の覚悟 「松坂世代、最後の1人になりたい」

週刊ベースボールONLINE
 松坂大輔(中日)の復活により、再び脚光を浴びることとなった松坂世代。久保裕也(東北楽天)もまた、その1人だ。だが、あの甲子園を同年代としていわば「外」から見ていたから、その言葉は身近なものにはならなかった。

 2015年オフに巨人から、16年オフには横浜DeNAから戦力外通告を受けた。入団テスト合格の楽天では17年に1040日ぶりの復活勝利を挙げるも、右手の血行障害を発症し、同オフに3度目の戦力外通告を受けた。11月に手術を受け、育成選手として迎えた18年シーズン。5月5日に支配下登録されると、その日に復帰登板を果たした。

 まさに波乱万丈な野球人生を送っているが、本人の顔に悲壮感はない。松坂世代で「最後の1人」を目指す右腕に、その理由を明かしてもらった。

松坂世代という意識はほとんどなかった

17年7月23日に久保(右)が挙げた白星は実に1040日ぶりのものだった 【写真:BBM】

――松坂世代が再び脚光を浴びています。やはり松坂投手の活躍は刺激になりますか。

 もちろんなりますよ。いつか(松坂世代をテーマとした取材が)来るだろうなと思っていました(笑)。ただ、松坂世代というところに正直、それほど関心は持っていないですね。僕の中では甲子園を沸かせたメンバーが松坂世代だと思っているので(※久保は甲子園出場経験なし)。ただ、野球界では松坂世代というくくりでずっと来ているから、違和感もないんですけどね。

――松坂投手の活躍を見ることはあるのでしょうか。

 見ていますよ。基本的に家に帰ったらチーム関係なく、野球中継をずっと見ているんです。イニング間にほかのチームの試合を見たりね。昔はあまり見るのは好きじゃなかったんですけど、最近は投手の質もものすごく上がっているし、いろんなことを学べたらな、と。自分に足りないものをどう補っていくかが僕の中でカギなので。フォームや足の使い方、体重移動の仕方や立ったときの角度なども見ますね。

――長くプロ野球界に身を置いていても、その探究心は衰えない。

 人間なのでみんな持っている体自体は大きくは変わらないじゃないですか。だから同じような動きをするはずなのに、人によってスライダーがすごく曲がる人もいればそうでない人もいる。同じようなタイプの投げ方をしているはずなのに、手首の角度やボールの切り方などで変化球の曲がり方が全然違うこともある。だから勉強になりますね。中継の中でスロー映像が流れることもあるので、そこもよく見ています。いいな、と思うことが多いから、キャッチボールでやってみて、使えそうだったらそのまま試合で使ってみたりもしますよ。

野球が楽しい。1軍でも2軍でも

――今季は5月5日、支配下登録に返り咲くとともに1軍昇格となりましたが(同18日に降格)、1軍登板を振り返っていかがでしょうか。

 ちょっと力みが強くて、自分が目指しているピッチングができていなかったですね。狙ったところにボールが行かなかったり、どこか力任せで抑えようとしたり。本来、目指しているものとは少し違いました。

――目指しているもの、とは。

 基本的に打たせて取るというのが僕のスタイル。ですけど、打たれたくないという気持ちが強くなり、それがコントロールミスにつながってしまいました。スピードが150キロ出るわけではないので、コントロールを失うと、致命的。真っすぐも変化球もある程度、狙ったところに投げられるようにしていかないと。

――どういった理由から力みにつながっていたのでしょうか。

 やっぱり点を取られたくないというのと、できるだけ攻撃にリズムを生むために、テンポ良く投げたい。そのためにとにかくランナーを出したくないんですよね。それが力みにつながってしまいました。

――走者がいる場面での登板もありました。

 今回1軍に上がったとき、そこは特に力みましたね。ただやっぱり、打者と対戦するのが最優先だし、とにかくマウンドで自分と戦わないようにしなきゃなと、いつも思ってはいますけど。

――2軍での日々が続く中で苦しいこともあるかと思うのですが、モチベーションになっていることとは。

 この年齢だし、今年1年また野球ができているだけですごくありがたいことなので、1軍にいようが2軍にいようが、野球ができる環境があるということがすごく幸せなんです。もちろん1軍で投げられることはすごく楽しいことですが、ファームにいても楽しい部分はあるので、正直、苦しいとは思わないですね。

――その楽しさを、具体的にどの部分で感じているのでしょうか。

 マウンドに上がれていること、ユニホームを着ることができて、いろんな人に応援してもらっていること。やっぱり戦力外を経験しているから、野球ができなくなる怖さより、またユニホームを着られる喜びのほうが強いんです。その経験があったからだと思うのですが、毎日練習するときでもすごく楽しいし、とにかく楽しく野球をやろう、と。先のことは分からないし、あと何年できるかも分からない。今年で終わってしまうかもしれないですしね。そんなことを考えたら、今できることを精いっぱい、楽しくやろうと、素直に思えてくるんです。

――楽しくやることで自身の気持ちを高めている。

 しんどいことをやるにしても、しんどいなあと思ってやるのと、どこかに楽しみを感じながら元気を出してやるのじゃ全然違いますから。気分が違えば体の動きも変わってくるだろうし、できるだけ気持ちにスランプを作らないように。調子が良くても悪くても明るくしていたいと思っています。

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