パラグアイ戦の勝利で「代表熱」は蘇るか 際立った西野監督のベンチワークと対応力
W杯の盛り上がりが低い中で
パラグアイ戦で声援を送る日本代表のサポーターたち。日本国内でのW杯熱はあまり高まってはいない 【写真:アフロ】
私自身、日本を離れて1週間が過ぎているので、国内の日本代表に対するまなざしがどのようなものなのか、肌感覚ではよく分からない。それでも私の周囲では、ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の解任を受けて「代表を応援するモチベーションが失せた」という人は何人もいるし、ロシアでのW杯観戦を取りやめた人を3人知っている。コロンビア戦のパブリックビューイングの運営に関わっている友人からも「定員300人に対して予約は10人しか集まっていないんですよ!」という、悲鳴のようなメールをいただいた。やはり、盛り上がっていないのは間違いなさそうだ。
西野監督はご存じなかったとしても、世論が必ずしも自分たちに味方していないことを、選手たちは鋭敏に感じ取っている。スイス戦後、長友佑都がいきなり髪の毛を金色にして、周囲を驚かせたことがあった。当人はメディアの取材に対し、「スーパーサイヤ人になろうと思ったら、スーパーゴリラになってしまって(笑)。ここ、笑っていいところですよ」とおどけていたが、もちろん笑いを取るためにそんなことをしたとは思えない。そこには「気合いを入れ直す」という部活めいた思いだけでなく、「何とか日本代表に振り向いてほしい」という焦りにも似た心情がうっすらと見えてしまう。
もしかしたら、JFA(日本サッカー協会)の上層部は「人気選手を集めておけば、自ずと注目される」と見込んでいたのかもしれない。だとしたら、かなりの見込み違いだったことになる。逆に、所属クラブでしっかり結果を出している長友が、ベテランであるというそれだけの理由で「忖度(そんたく)で代表に選ばれた」と思われているのならば、非常に不幸なことであると言わざるを得ない。なぜ、こんなことになってしまったのか? 日本代表の戦いが終わったら、この問題はすぐに精査されるべきであろう。
スタメン10人を入れ替えた日本と緩慢なパラグアイ
日本はパラグアイ戦に向け、スイス戦からスタメンを10人変更して臨んだ 【写真:アフロ】
それにしても驚かされたのは、これまでセンターラインの軸に置いていた選手たちが、ことごとく控えに回っていたことである。長谷部誠しかり、本田圭佑しかり、吉田麻也しかり、川島永嗣しかり。出番のなかった選手にチャンスを与えるのは理解できるが、実戦を想定したコンビネーションを試さなくてよいのだろうか? 鹿島アントラーズのセンターバックコンビを一緒に使うのであれば、むしろ吉田と植田を組ませてみてもよかったのではないか、などと心配してしまう(もっとも試合前の時点でキャップ数合わせて12のコンビが、南米の中堅国を相手にどこまで戦えるのか、これはこれで見てみたい気もするが)。
対するパラグアイは、やはりW杯南アフリカ大会ラウンド16での激闘が記憶に残るチームである。しかし直近の2大会は、ことごとく南米予選を突破できず、今予選も10チーム中7位に終わった。スタメンの顔ぶれを見ると、8年前に日本と死闘を演じたGKのフスト・ビジャールが最年長の40歳。残りはサブも含めて全員が20代である。来年のコパ・アメリカに向けて、チームは若返りの途上にあるようだ。
問題は、この日本戦に臨む彼らに、どれほどのモチベーションがあるかである。実際、試合が始まってみると、パラグアイのプレーには少なからず緩慢さが見られた。本番では絶対に通りそうにないパスがバシバシと通り、日本が一気にアタッキングサードまでボールを持ち込むシーンが、序盤からたびたび見られた。そして前半12分、パラグアイがいきなり選手交代。ビジャールが退いて、12番を付けたアルフレド・アギラルが入る。実は40歳のベテランGKにとって、これが代表での引退記念試合。ラストマッチの相手が思い出深い日本であったことに、当人は何を思うのだろうか。