世界的トライゲッターに成長した福岡堅樹 イタリア戦の快勝を「W杯につなげる」
データでも成長を実感「セブンズの経験がつながっている」
トライ以外のプレーでもチームに大きく貢献している 【斉藤健仁】
1年前の昨年6月は、サンウルブズから日本代表の試合まで1週間しかなく、ややメンタル的にもラグビー的にも移行に苦しんだ。しかし、今年はジョセフHCがサンウルブズと日本代表の指揮官を兼任、プランニングしたことが功を奏した。まず、福岡をはじめとした代表の主力には1週間のオフを与えた。「ずっとつながって流れでやるよりも一回ゆっくりすることでサンウルブズはサンウルブズ、ジャパンはジャパンと気持ち的に切り換えることができた」。
さらに、今回のイタリア代表戦の前に1週間、宮崎で合宿を張ったことが大きかった。「(エディージャパン時代と比べて)メンタル的なプレッシャーがなかったので楽でしたね(苦笑)。きついトレーニングをしながら、どういうラグビーをするか全員で確認できた。しっかりといい準備ができた」(福岡)
また福岡は、アタックだけでなく、ディフェンスのバッキングアップ、そしてキックチェイスなど以前よりもトップスピードで走る回数が増えたことに成長を感じている。「昔であれば自分自身の強みにワークレートが出てくるとは思っていなかったです。1本走ったらすぐ走れなくなっていた。セブンズ(7人制ラグビー)をやったことがつながっている」
実際にGPSの数値でもハイスピードインテンシティー=スピードの高い状態で走る数値は、大学時代は7%ほどだったのが、今では練習では20%、試合では10%を超え、チームの中ではトップのこともある。「ちょっと休んでいるときもありますが、やるときに自分の役割にフォーカスしています」
「みんなが自分の準備をやり切った結果」
コミュニケーションミスはあったが、1対1では正確なタックルを決めた 【斉藤健仁】
前半14分、福岡は少し前に出すぎて、相手CTBに突破を許し、結局、その後の攻撃でトライまでつながれてしまった。日本代表は昨秋から、ジョン・プラムツリーコーチを招聘して、極端に前に出る組織ディフェンスを採用。ディフェンスラインでの連携はもう少し必要だろう。「全体的には悪くなかったが、ミスしたところはもう一度、内側とコミュニケーションを取りたい」(福岡)
全体的には、ハーフ団がハイパントキックや裏へのキックを使って相手を背走させ、ボールインプレーを増やすことで相手を疲れさせて試合をコントロールし、取るべきときにしっかりトライを取ってイタリア代表に勝利したことは大きな意味を持つ。
福岡も「プラン通りにいった試合です。みんなが自分の準備をやり切った結果かなと思います。相手はたまたまランキングが下がっていただけで格上と思っていました。トライも取れて、フィジカル負けしなかったことは自信になりますし、勝利することができてチームとしても自信になる。そして、次に、ワールドカップにつなげることが大事です。勝ちを感じながら、次はさらにいい試合ができるように頑張りたい」と先を見据えた。
「期待されていると感じている」
スクラムでSHに入るスペシャルプレーも披露。日本代表でその存在感は増している 【築田純】
「あのとき(W杯やオリンピック)に比べて、本当にチームの中で自分の役割がはっきりしている。より(コーチ陣に)期待されていると感じているのでチームに勢いを与える第一人者になりたい」
福岡は15人制ラグビーの最大のターゲットである2019年W杯まで、そのスピードを武器に駆け抜ける覚悟を心に決めている。攻守にわたって福岡が輝けば、それがきっとジャパンの白星につながるはずだ。