W杯直前のパラグアイ戦はサブ組が中心に 「勝負師」西野監督に秘策はあるのか?

飯尾篤史

香川「スイッチは俺とオカちゃんが入れていきたい」

 その一方で、12日のパラグアイ戦の準備も進められている。

 練習は非公開だが、選手の言葉から想像すると、ガーナとの親善試合で採用された3−4−2−1ではなく、スイス戦と同じ4−2−3−1、もしくは4−3−3がパラグアイ戦では採用されると思われる。

 4−2−3−1の場合、予想されるメンバーは以下。GK=東口順昭(中村航輔)、右SB=酒井宏樹(遠藤航)、CB=植田直通、昌子源、左SB=長友佑都(酒井宏樹)、ボランチ=山口蛍、柴崎岳、右サイドハーフ=原口元気(岡崎慎司)、トップ下=香川真司、左サイドハーフ=乾貴士、センターフォワード=岡崎慎司(大迫勇也)。4−3−3の場合は、アンカーに山口が入り、柴崎と香川がインサイドハーフだろうか。

パラグアイ戦の予想スタメン 【スポーツナビ】

 いずれにしても、ここまで途中出場が続く香川にとって、パラグアイ戦はスタメンに返り咲くラストチャンスとなる。むろん、置かれている立場は、ほかでもない香川自身がよく分かっている。「失うものはもうない。何を言われようと、もう言われ切ったと思っている」と、パラグアイ戦に懸ける思いを言葉ににじませた。

 トップ下でのプレーイメージは、すでに像を結んでいる。

「自分がどこで受ければチームも個人も輝くかは常に意識している。やっぱり動いてボールを要求したいし、バイタルに入ったらリスクを冒したい。相手の守備が固いなら、何かでリズムを変えなきゃいけない。それには前を向いて仕掛ける時間帯、前に入り込む時間帯、スピードを上げる時間帯が必要。バイタルに自分がどれだけ入っていけるか。それが自分の良さだから、意識したいですね」

 一方、スイス戦でのチームとしての反省点も整理済みだ。

「この前はサコ(大迫)が孤立していたので、トップ下の僕や圭佑くん、両サイドが高い位置を取って、相手にプレッシャーを与えないといけない。相手が嫌がるようなプレスをもっと掛けていかないといけない。そのスイッチは俺とオカちゃん(岡崎)が入れていきたいなと。たくさん汗をかいてプレーしないといけないと思います」

劣勢をひっくり返す西野采配が見られるか

パラグアイ戦では、劣勢を覆す西野采配は見られるだろうか 【写真は共同】

 こうして香川が自身のプレーイメージをはっきりと口にする一方で、依然としてはっきりしないのが、西野監督のマネジメントである。

 戦術面の細かいポイントの解決は依然として選手たちによるディスカッションに委ね、本大会まで残り1試合になってもメンバーを大きく入れ替え、チームを固めようとしない。むろん、サブ組のコンディションやモチベーションを考慮してのことだと思われるが、ここまでくると、主力組とサブ組が入れ替わっても驚きはしない。

 あるいは、多少なりともボールを握ることを模索した現時点でのスタイルが、W杯直前にひっくり返っても――。

 西野監督はガンバ大阪時代、劣勢をひっくり返すような采配を何度も見せた、勝負師の顔を持った指揮官である。

 さらに、大学の先輩・後輩の間柄で、親交の深い岡田武史氏の2度にわたるW杯での戦いから何かを学び、岡田氏から直接、詳しい話も聞いているはずなのだ。

 何かしら策を用意していてもおかしくないが、それは考えすぎなのだろうか……。

 パラグアイ戦で確認したいのは、以下の5点だ。

「前からのプレスとミドルゾーンでのブロックの使い分け」「いかにしてボールを奪い、攻撃へと転じるか」「その際の攻撃のクオリティー」「ポゼッションとショートカウンターのメリハリ」「どれだけ無失点の時間を作れるか」。

 さらに付け加えるなら、指揮官が用意していると思われる“策”の存在が、少しでも感じられるといいのだが。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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