W杯直前のパラグアイ戦はサブ組が中心に 「勝負師」西野監督に秘策はあるのか?

飯尾篤史

W杯初戦までに残されたテストマッチはあと1試合

トレーニングを行う選手たち。W杯初戦まで、残されたテストマッチはあと1試合だ 【写真は共同】

 6月10日(現地時間、以下同)、練習場を囲うシートの向こう側ではまだトレーニングが続いているのに、2日前のスイス戦の出場時間が長かった選手たちが練習を切り上げ、ミックスゾーンにやって来た。

 最初に登場したのは本田圭佑である。続いてド派手な金髪にしたばかりの長友佑都、大迫勇也、槙野智章、吉田麻也が次々と扉をくぐり抜ける。

 非公開練習のため中の様子はうかがい知れないが、パラグアイとの親善試合が2日後に控えていることを考えれば、残りの選手たちは戦術練習を行っているはずなのだ。

「パラグアイでは、今バックアップでトレーニングしている選手たちに入ってもらう」

 スイス戦後、西野朗監督はそう公言したが、どうやらそれは本音だったようだ。19日に行われるワールドカップ(W杯)初戦のコロンビア戦までに残されたテストマッチは1試合。それでもメンバーを固定せず、全選手にチャンスを与えようとしている。ベースとなる戦い方が定まらず、選手間の議論の内容はいまだに多岐にわたっているというのに……。

 果たして、それが意味することは、何なのか――。

選手たちのディスカッションは依然として続く

選手とスタッフ間のディスカッション、意見の擦り合わせは依然として続いている 【写真は共同】

 スイス戦の翌日、予定していた練習をキャンセルし、休養日に充てた日本代表は6月10日、オーストリアのゼーフェルトで練習を再開した。

 オフとなった前日の9日、スイスのルガーノからオーストリアのインスブルックに到着すると、ゼーフェルトの宿舎に戻ってプールやジムでリカバリーに努める選手たちもいれば、昼食をとるために市街地へと出かける選手たちもいた。

「固くミーティングしているときよりも、レストランとかで話すと話がスムーズに進むこともある。うまくいっていないことのほうが多いので、そういう時間も有意義に使って」

 そう語るのは、スイス戦で約50分間プレーした武藤嘉紀だ。スイス戦で生まれた課題を中心に、依然として選手間、選手とスタッフ間でのディスカッション、意見の擦り合わせは白熱している。

 例えば、武藤が「相手が強くなると守備に追われるから、1トップは消えている時間が長い。だからといって1トップの選手が焦れて下がるんじゃなく、前に残っていようということを確認した」と明かせば、宇佐美貴史は「ボランチの1人が下がって相手が3枚になったときに、どう守るのか。僕が右サイドバック(SB)の上がりを気にしながらプレーしないといけないのか、右のセンターバック(CB)にアプローチを掛けにいくのか」について、長友や西野監督と話し合ったという。

「前向きな議論を増やしていきたい」と語った本田は「(チームメートの)脳の中にポジティブなワードを入れていく回数を増やしたいと思う」と、コロンビア戦に向けて、いよいよ最終局面に入ることを匂わせた。

 むろん、代表選手ともなれば、それぞれに確固たるサッカー観や信念がある。食事の時間も、ミーティングの時間も限られており、時間内に意見がまとまらないことの方が多い。「そういう場合は……」と槙野智章は説明する。

「グラウンドに来てからだったり、違う場所、違う環境でボードを使ったり、食事会場でコップを使ったりもする。ミーティングだけで解決しているわけではないですね」

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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