ガーナ戦の日本は「組織を感じなかった」 戸田和幸がスイス戦で期待すること

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0−2で敗れたガーナ戦を、戸田和幸さんにデータを用いて解説してもらった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 サッカー日本代表は5月30日、日産スタジアムで国際親善試合のガーナ戦に臨み、0−2で敗れた。この試合はワールドカップ(W杯)ロシア大会前に行われる国内最後の試合であり、西野朗監督の初陣でもあった。長谷部誠をセンターバック(CB)の中央に配置し、「3−4−2−1」など新たな布陣を試したが、結果を残すことができなかった。

 この試合の日本代表は何が問題だったのか。データスタジアム株式会社のデータを用いながら、サッカー解説者の戸田和幸さんに分析してもらった。現地時間8日に行われるスイス戦に向けて重要なこととは?

前半のオーガナイズでは長谷部をCBにした意味がない

プレーエリアのシェアと各選手の平均ポジション 【データ提供:データスタジアム】

――試合を見た率直な感想は?

 まずは3バックにした理由が今ひとつ見えなかったですね。守備面で見ると、相手陣内に近いところでの「ハイプレス」は見られなかった。1失点目はブロックを作らなくてはならない場面でしたが、本田圭佑がスタートポジションを間違ったためアプローチできず、サイドバックから余裕を持ってボールを入れられて槙野智章がファウルをしてしまった(その後、直接FKを決められた)。

 最低でも敵陣での「プレッシング」と自陣で待ち構える「ブロック」、この2つの守備は持つべきだと考えます。もちろん相手がどのシステムでくるかは試合が始まってみないと分かりませんが、いざ試合が始まってから困ることがないよう、映像を使ったスカウティングで準備をする必要もあります。

 ガーナ戦においては本田が大迫勇也のラインまで出ていく場面がありましたが(おそらくは自分の判断で前に出たと思われる)、チームとしてはその動きに反応してプレッシングを行ってはいなかった。つまり、いかにしてボールを奪いにいくのか、プレッシングをどう行うかといった具体的なものは存在しなかったのではないかと感じました。

 誰もが驚くタイミングで西野監督が誕生し、これから日本がW杯に挑んでいくんだという中での最初の試合。確かにコンディションにばらつきがあり、疲労を抱えた選手もいるという難しい状況での試合ではありましたが、とはいえ新たなプレーモデル・具体的な戦術行動について共有していくための時間はあったと思います。特に、前半のオーガナイズでは長谷部をCBに置いた意味を感じることができませんでした。

クロスやスルーパス、ドリブルなど攻撃を仕掛けたエリアのシェア 【データ提供:データスタジアム】

――長谷部を生かすためにはどうすればよかったのでしょうか?

 戦術理解に優れ、最後尾からの配球にも優れているのが3バックのセンターでプレーする長谷部誠の持つ魅力です。ですが、試合を振り返ってみると、まず彼から始まるチームとしての効果的なビルドアップが見られない、そのための効果的なポジショニングを各選手が取れていませんでした。

 ここで一つはっきりさせておきたいのは、オーガナイズそのものを作るのは長谷部の仕事ではありません。彼がボールを持ったとして、効果的に前へ運んでいくための全体としてのポジショニング、パスルートが存在しないと、いくら配球に優れる選手がいても、チームとしてその恩恵にあずかることはできません。

 この試合での長谷部のパスの行き先と本数を見てみると、吉田麻也への12本が最多で、槙野が9本、大島僚太が5本。ほとんど左右のCBとボランチにしかパスを出していない。もちろんロングパスが常に必要なわけではないですし、後ろから丁寧にビルドアップしたという見方もできるデータではあります。

 ただし僕個人の意見としては、全体としてより効果的なポジションを取り、彼からスタートするビルドアップをきちんと前線までつなげていくことに加え、後半27分に見られたドリブルでの持ち上がりから長友佑都へのミドルパスのような展開も作りたい。ガーナ戦、特に前半には2シャドーが下がってきてしまったことも多分に影響し、効果的なビルドアップはほとんど見られませんでした。

 後半に入ると香川真司のポジショニングがきちんとライン間、そしてハーフスペースに取れていたこともあり、全体の流れが改善されました。気になることとしては、それが監督から与えられたタスクなのか、はたまた香川自身によるものなのかということで、それによって今後のチーム構成はまた変わっていくと思います。

原口を生かすなら、酒井宏樹のCB起用もあり?

ボールを奪ったエリアのシェア 【データ提供:データスタジアム】

――ボール奪取を見ると、右サイドが多い傾向が出ています。

 ガーナが原口元気の背後を狙ってボールを蹴ってくる場面がいきなりキックオフ直後に見られ、クロスを上げられて危険な場面を作られました。もちろん、きちんとポジションが取れてボールを奪うことができていた場面もありましたが、全体的には原口のポジショニングはあやふやだったと思います。それは、ポジションに対する慣れから来ている問題だと思います。

 もちろんこれから慣れていくかもという期待もありますし、なんといっても原口はアップダウンできる走力と、仕掛ける力も持っている。ただ、右サイドを原口と酒井宏樹で争うのはもったいないと個人的には考えているので、新たなオプションとして酒井宏を3バックに入れることも考えてよいのではないでしょうか。

 3バックのCBは4バックのCBとは違い、よりボールを運ぶ能力が求められます。そして、人に対する強さも求められる。そういう意味では、欧州で戦術面も含めて全てに高いスタンダードレベルの高い経験を持つメンバーで構成する3バックも見てみたいと思っています。

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