紀平梨花が語る3アクセルとエッジの関係 「調整は大変」でも挑戦し続ける理由

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女子選手としては史上初となるトリプルアクセル+3回転トウループのコンビネーションを成功させた紀平梨花。期待の15歳に躍進のシーズンを振り返ってもらった 【坂本清】

 カメラを向けると照れ笑いを浮かべるその表情は、15歳のそれだった。中学3年生で初出場した昨年末の全日本選手権では3位表彰台入り。平昌五輪出場を目指すシニアの選手に割って入った紀平梨花(関西大KFSC)は、抜群の存在感を放っていた。さらに同大会からさかのぼること2週間前のジュニアグランプリ(JGP)ファイナルでは、女子選手としては史上初となるトリプルアクセル+3回転トウループを成功させる快挙まで成し遂げている。

 紀平にとって、トリプルアクセルは「自分に挑戦できる」ジャンプであり、「今後も外すことはない」ものだという。一方で靴を替えるたびに、エッジをベストな位置に調整しなければならず、その難しさも実感しているようだ。

成功率が上がったトリプルアクセル

初出場の全日本選手権では3位。シニアの選手に割って入る活躍を見せた 【坂本清】

――今季は初出場の全日本選手権で3位に入るなど躍進したシーズンでした。

 シーズンをまとめて言うと良かったときもあれば、悪かったときもあったシーズンでした。全日本選手権は初めてで緊張はしましたが、リンクでは自分の調子と感覚がマッチして、練習通りできてよかったと思います。

――JGPファイナルでは女子選手として史上初となるトリプルアクセル+3回転トウループのコンビネーションを決めました。

 その前から国内の試合などでは決めていたんですけど、ISU(国際スケート連盟)公認ではなかったので、JGPファイナルでは意識していました。そして、そう意識をしながらでも決めることができたのはよかったです。

――今季とその前までのシーズンを比べて、どういう部分が変わったと思いますか?

 ジャンプの成功率が上がりましたし、スケーティングも練習してスキルがついてきました。ただ、その中でもトリプルアクセルの成功率が上がったことが1番だと思います。

――トリプルアクセルの成功率が上がった理由はどう考えていますか?

 一昨年くらいまでは調子が良いときには跳べても、2日間くらいオフをとってしまうと、次の練習では一からやり直しという感じで、その1日は感覚を取り戻すのに精いっぱいでした。他のジャンプは期間が空いても大丈夫なのですが、トリプルアクセルは期間が空くと、筋肉の状態によって踏み切るタイミング変わってしまい、そこが大変だったんです。でも去年くらいからはそのタイミングが分かってきて、練習でたくさん跳んだことによって、跳び方を覚えてきたのかもしれません。それで成功率が上がったんだと思います。

――今は2日間オフを取っても、普通にトリプルアクセルを跳べるようになってきたのですか?

 そうですね。跳べないときは新しい靴に替えたなど他に原因があることが多いです。先ほども言ったように一昨年くらいまでは、調子の良し悪しで波があったのですが、最近は期間が空いても1日調整して、次の日は最初から良い感触で跳べるようになってきたので、例えば試合のときに飛行機で長時間移動しても変わらなくなりました。

エッジの位置によって変わる感覚

3月の世界ジュニアでは左手薬指の骨折もあり、事前にエッジの調整をできず。トリプルアクセルも成功させることができなかった 【Photo by Joosep Martinson - ISU/ISU via Getty Images】

――トリプルアクセルを本当に自分のモノにしたという感じですね。

 でも靴を替えたりすると、エッジの位置によってその感覚が変わってきます。エッジをいろいろ調整して、やっと「ここだ」という位置につけて、というのをやっています。靴に関してはその辺の問題がまだあります。

――靴を替えてから、トリプルアクセルをきちんと跳べるようになるまでどれくらいかかるのですか?

 良いエッジに当たるとその日のうちに跳べます。ただ、1週間くらいたつと靴がなじんできて、エッジの位置を少しずらさなければいけなくなります。それで2週間弱くらい使ってちょっとずつずらし、やっと良い位置が見つかる感じです。それが見つからないときが本当に大変で、そうならないように靴を替えるタイミングを試合に合わせて考えていく必要があります。最近はそういうことを意識してやるようにしています。

――靴を替えたことで、トリプルアクセルに影響を及ぼした試合はありますか?

 3月の世界ジュニア(選手権)では、実は靴が新しくてエッジが悪い位置だったんです。靴は1カ月くらい前に替えていたのですが、左手の薬指を骨折していたのでトリプルアクセルを跳んでいなくて……。他のジャンプは跳べていたので、トリプルアクセルも跳べるかなと思い、エッジの位置のことを忘れていました(苦笑)。自分にとって跳べない位置にエッジがついていたんだと思います。出発まであと3日くらいというところで気づいたので、とりあえずその位置でやるしかないとそのままにしたら、案の定うまくいきませんでした。世界ジュニアから帰ってきて1週間たってもまだ跳べなかったので、「もう靴を替えてしまえ」と替えたら、すぐに跳べるようになって……。逆にこんなに調子が良くなるんだというくらい調子が良くなりました(笑)。自分のミスでしたが、こうした経験を通じて、靴の状態も完璧にできるようにしたいと思いました。靴がまだ使えるときでも、次の試合に向けて靴を替えたり、替える時期を考えたりということを今後はしていきたいと思います。

――エッジの位置は自分で調整するのですか?

 トリプルアクセルだけは気になることがたくさんあったりするので、自分で「少し変かも」とお母さんに言って替えてもらったり、(拠点としている関西大学アイスアリーナ内にある)小杉スケートさんにエッジの位置を調整してもらったりしています。跳びにくいと思ったら何回か跳んでみて、原因が靴の方にあると思ったら、すぐに替えるようにしています。

――トリプルアクセルを跳ぶのにベストなエッジの位置があるとのことですが、他のジャンプはその位置でも大丈夫なのですか?

 そうですね。少しずれていても他のジャンプでは気づかないくらいなので、ちょっと良くない位置でも跳べます。でも、トリプルアクセルはタイミングが重要になってくるので、いつもすごく気にしてエッジの位置を替えるようにしています。

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