日本代表、スイス戦を前に焦りの色はなし ピッチ内外で盛んな「即席ミーティング」
西野ジャパンは選手ミーティングを開催しない?
西野ジャパンでは選手ミーティングは開催されないかもしれないと思うほど、選手たちは活発に議論している 【写真は共同】
2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会における岡田ジャパンでは、本大会直前のザースフェー合宿で川口能活が音頭を取ってミーティングを開き、田中マルクス闘莉王の「俺たちは下手くそなんだから、もっと泥臭く戦わなければならない」という言葉でチームがひとつにまとまった。
14年のブラジル大会を戦ったザックジャパンでは13年10月の東欧遠征中に開催し、揺れ始めたチームの方向性を確認し合ったり、本大会初戦のコートジボワール戦の3日前に選手だけで集まって結束を高めた。
だが、西野ジャパンでは選手ミーティングは開かれないかもしれない。
前体制下のように禁止されているわけではない。選手間のディスカッションが活発で、食事の席で、リラックスルームで、移動のバスの中で、もちろんピッチの中で、数人の選手が集まればすぐに即席ミーティングが開かれる。あらためて選手だけで集まる必要がなさそうなのだ。
話し合われる内容は多岐にわたる。攻撃のアイデアや選手間の距離、ディフェンスラインの高さやプレスの掛け方、さらには、セットプレーまでも――。
GK東口順昭がその内容の一端を明かす。
「入っていく選手で話し合って、キッカーと話し合って、こういうところに入ってほしいとか、そういうことを話し合って、今日はしっかりできたと思います。(西野朗監督は)決まり事はピッチの中で選手が決めていけばいい、というのを尊重してくれる監督なので。意見を持った選手が多いので、いろいろなバリエーションは出てくると思います」
ゴール前への入り方を入念に確認
セットプレーの確認でFKのキッカーを務めた本田(右) 【写真は共同】
最初に試されたのはサイドからのFKだ。攻撃の選手が3人一組となってゴール前に飛び込むと、その直後、今度は守備の選手がポジションに着き、同じように放り込まれたFKをクリアしてラインを上げる。それを何度も繰り返した。
キッカーを務めたのは本田圭佑、香川真司、乾貴士、宇佐美貴史、大島僚太、井手口陽介の6人。彼らが3人一組となって、両サイドから何本も蹴り込んだ。
このトレーニングでは敵を置いていない。そのため、マークを外すといった駆け引きはなく、実際のゲームと比べてリアリティーには乏しかったが、ゴール前の入り方や飛び込むタイミングを確認するのが、この練習における要点だった。昌子源が説明する。
「同じところに入ってはいけないし、ニア、センター、ファーに必ずいないといけない。それはセットプレーに限らず、ガーナ戦もクロスが多かったけれど、ゴール前に1枚しか入っていなかったりした。あと、ボールに遅れて入ってストーンに弾かれたり、その精度が大事だと思うんです。そのタイミングを合わせるのを、こういう練習で(やっている)」
昌子が語ったように、ゴール前への入り方、合わせ方に関しては、FKだけでなくクロスに対しても応用が利くものだ。むろん、そこにはサイドを攻略しながらクロスが単調だったり、ゴール前への入り方が悪かったりして得点につなげられなかったガーナ戦の反省がある。前日、前々日の練習も踏まえると、スピーディーなサイド攻略と、相手DFを混乱させるゴール前への飛び出しが、チームの狙いのひとつと言えそうだ。
続いて行われたのはCKの確認だ。「ビブスなし」の5人と、「ビブス着用」の5人、この二組が交互にゴールを狙う。前者は長谷部誠、吉田麻也、原口元気、昌子、大迫勇也の5人、後者は岡崎慎司、武藤嘉紀、槙野智章、植田直通、酒井宏樹の5人。このトレーニングでも敵を置かずに、動き方のパターンとタイミングが確認された。
キッカーは本田と香川の2人。残りの選手たちも2次攻撃のためにサイドやセンターライン付近にポジションを取る。CKがゴール前に放り込まれると、それが決まる、決まらないに関わらず、間髪入れずにゴールラインからクリアボールが蹴られ、それを酒井高徳、遠藤航、山口蛍らが拾ってサイドから2次攻撃につなげていった。再び昌子の言葉に耳を傾けてみる。
「クリアボールをそのままシュートに持ち込むのもありですし、大きく弾かれても1回サイドに付ければ相手にとってアングルも変わる。そこで、僕らが動き直すことによって、本来マンツーで付いていた相手も混乱すると思う」