2週間で調整、戦術徹底は間に合うか? 問われる早川コーチと西野監督の手腕
「疲労回復優先」だった国内合宿
千葉での合宿では、全員が集合するまでは疲労回復を優先。3−4−3の新布陣に取り組んだのは26〜28日の3日間だった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
ロシアでのベースキャンプ地・カザンに赴く13日までの約10日には、スイス、パラグアイとのテストマッチが組まれている。2試合を有効活用しながら本番の戦術や戦い方の落とし込みを図り、選手個々のコンディションも引き上げていかなければならない。やるべきことが山積しているだけに、西野朗監督とコーチングスタッフのチームマネジメント力が大いに問われることになる。
ここまでの代表の動きを振り返ると、まず5月21〜28日にかけて千葉での国内合宿を消化した。初日から参加したのは、本田圭佑、岡崎慎司、香川真司ら海外組11人。23日には槙野智章、遠藤航、東口順昭、井手口陽介の4人、24日には山口蛍、大島僚太ら国内組6人と柴崎岳が加わり、25日には川島永嗣や長谷部誠ら海外組のラスト4人が合流。右ひざ負傷で離脱した青山敏弘を除く26人全員がそろった。このうち左足首痛の岡崎と右太もも前打撲の乾貴士は基本的に別メニュー。中村航輔も脳震盪(のうしんとう)回復プログラムを行う必要があったため、別調整となった(岡崎は26日から一部全体練習に合流)。
全員が集合するまでは「疲労回復優先」という考え方で、トレーニング時間も1〜1時間半程度が中心。25日までは戦術練習も盛り込まれなかった。3−4−3の新布陣に取り組んだのは26〜28日の3日間。ガーナ戦前日も非公開で調整したため、西野ジャパンは実質4日で新たな戦い方に挑んだのである。
南ア大会でのコンディショニング成功体験
早川直樹コンディショニングコーチ(右)。10年南アフリカ大会の成功体験を踏襲している部分が多いと見られる 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
「メチャクチャ走った前回(4年前)やハリルさん(ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督)の海外組合宿とは完全にアプローチが変わりましたね。クラブで試合に出ていない選手、ケガをしていた選手と状況がいろいろ違うので、それによってプログラミングされているし、説明も受けていますけれど、こっちの方が建設的かなと思います」
吉田麻也がこう前向きに語っていた通り、アルベルト・ザッケローニ監督時代やハリルホジッチ監督時代のような猛烈な走り込みは一切、行われなかった。
このアプローチに率先して取り組んでいたのは、早川直樹コンディショニングコーチ。2002年日韓大会以降、4回のW杯を経験してきた同氏にとっての成功体験は、やはり10年南アフリカ大会だろう。岡田武史監督が率いた当時の代表は、ハートレートモニターなどを使った細かい計測、検尿や採血なども取り入れながら、個々の状態に合わせて負荷を変えていく形を採っていた。こうして国内とスイス・サースフェーの高地で緻密なトレーニングをこなし、挑んだ本番では対戦国に走り勝っている。今回はその時のやり方を踏襲している部分が多いと見られる。
国内合宿の試金石となったガーナ戦では、新たなケガ人が出ることはなかった。過密日程を戦った直後の国内組、あるいはシーズンをフル稼働した海外組も疲れを感じさせた選手が何人かいたくらいで、コンディション面の大きな問題は見られなかった。