大島僚太はロシアW杯で主軸になれる 味方が姿を探したくなる「気配り」の男

江藤高志

本人は反省ばかりでも“主軸にすれば生きる”

ガーナ戦後、口をついて出たのは反省の弁だったが西野監督は高評価 【Getty Images】

 A代表では初の先発フル出場となったガーナ戦を振り返った大島は開口一番、「攻撃も守備も、両方スイッチの部分でうまくいかないことは多かったかなと思います」と反省する。

 山口との連係については「パス交換自体が多くはなかったですし、もう少しサイドを変えるということはみんなで話していました。それを前半からやれればとは思っていました」と反省する。

 けがなく試合を終えられたというポジティブな質問に対しても、「まだまだ相手のスピードだったり、パワーにうまく付き合いたいなと思いました。真っ向勝負もするべきところはしなければならないと思いましたが、うまく相手をいなすことも全体的にできればと思いました」と反省する。

 A代表では初めての90分フル出場について手応えを聞かれても「特にないというか、90分出ましたが、チームとして勝たないといけなかったです。まずは追いつくことだったりができなかったので、残念だなと思います」と反省する。

 ガーナ戦後、何を聞いても、どの答えをとっても、彼は満足するコメントを1つも残していなかった。試合に負けたことの悔しさと同時に、強烈な向上心でサッカーと向き合っているということであろう。

 今回、編集部からの本稿の依頼文の中に、大島の起用法について西野監督への提言があればお願いしたいとの一文があった。しかし西野監督が試合後に述べたように、大島をチームの主軸として考える限り、大島は生きてくる。そして、それは川崎フロンターレが大島のチームになっていることからも明らかな通り、日本代表にとってもプラスとなる。西野監督はすでに大島が攻撃面での主軸となりうる選手だと見抜いており、起用した。そういう意味で西野監督に何かを言うことはない。

周りに気を配り、チームのために心を砕く

10番を背負う川崎フロンターレでは、すでにピッチ上で不可欠な存在 【(C)J.LEAGUE】

 話は脇道にそれるが、大島とはフロンターレで唯一の同学年であり、仲の良い車屋紳太郎は、大島について次のように述べている。

「常にチームを優先してくれる選手ですね。自分が自分がではなく、周りの選手がどうすればやりやすいのか、常に声をかけてくれます」

 大島の求めに対し車屋は「常に間で顔を出してくれということは言っています」と話す。特に「センターバックから足元に入ったときとかに、そういう話はよくしています」という。相手FWのプレッシャーにさらされる状況のサイドバックにとって、大島のヘルプは大いに助かる。

 大島はガーナ戦前の合宿も、ガーナ戦の試合中も、ピッチ上で周囲の選手とよく話していた。周りの選手がプレーしやすいよう気を配り、チームをより良くするために心を砕いていた。そうやって周りの選手がやりやすい環境を作ることが、大島の喜びでもあるのだろう。

 0−2で敗れたガーナ戦後、世論が大きく悲観論に傾いていて驚いている。ガーナ戦は、西野監督の就任初戦だった。失点はいずれもセットプレーからのもの。3バックをテストしながらも、決定機は作れていた。細部を詰められなかったからこその敗戦だったが、ここからの準備期間の中でチームは完成度を高められるはずだ。

 ディテールを追求する過程の中、大島が深く関われるのかどうか。周りとコミュニケーションを取り、ガーナ戦の1つ1つのプレーを通してチーム内に足場を築いたのだから、チームメートも耳を傾けてくれるものと期待したい。幸いなことに、西野監督は選手の個性を引き出せるタイプの指揮官だ。母国語を同じくする監督としてのアドバンテージを示すときであろう。

 あと2試合しかないのか。まだ2試合もあるのか。日本代表は、開幕直前のスイス戦とパラグアイ戦を経て、いよいよW杯本大会に臨むこととなる。用意された時間の中、選手個々の能力を最大化する組み合わせを見つけることができれば、本大会で驚きの結果が出ても不思議ではないと信じている。

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著者プロフィール

1972年、大分県中津市生まれ。工学院大学大学院中退。99年コパ・アメリカ観戦を機にサッカーライターに転身。J2大分を足がかりに2001年から川崎の取材を開始。04年より番記者に。それまでの取材経験を元に15年よりウエブマガジン「川崎フットボールアディクト」を開設し、編集長として取材活動を続けている。

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