【ノア】王者・杉浦が“戦友”丸藤撃破でV2 新世代の拳王と清宮が次期挑戦者に名乗り

高木裕美

ノア旗揚げ当時のメンバーは3人のみに

王者・杉浦貴が丸藤正道の挑戦を退けGHCヘビー2度目の防衛に成功 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 29日のプロレスリング・ノア「Navig. with Breeze 2018」東京・後楽園ホール大会では、GHC3大タイトルマッチなどが行われ、超満員となる1558人を動員した。

 試合開始前には、業務提携を結んだ中国初のプロレス団体「東方英雄伝」の選手たちがリング上からあいさつをした。今後は中国におけるプロレス市場開拓を目指し相互協力を行うほか、日本国内においても両団体が主催する大会へ相互選手を派遣したり、合同練習などを行う予定だ。

 メインイベントのGHCヘビー級選手権試合では、王者・杉浦貴が丸藤正道の挑戦を退け、2度目の防衛に成功した。

 杉浦と丸藤は、00年8月にノアが旗揚げした当時からの創設メンバー(杉浦は当時練習生)。全日本プロレスから離脱した24人の選手(+杉浦)によって旗揚げされたノアだが、18年の歳月を経て、当時の所属選手たちのほとんどは引退、退団、死去し、いまや旗揚げメンバーとして残っているのは丸藤、小川良成、そして杉浦のみ。時にはタッグパートナーとして、時にはライバルとして、順風満帆な航海も、荒波に翻弄された転覆の危機も、そして三沢光晴さんという舵取り役を失った悲しみも、共に乗り越えてきた“戦友”の2人ならではの戦いが、そこにはあった。

丸藤は5日間で2つのベルト挑戦も……

最後はフロントネックロックでギブアップを奪った 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 今年、デビュー20周年を迎える丸藤は、4.29新潟大会で初防衛に成功した杉浦に対し、次期挑戦者に名乗りを上げると、その翌日となる4.30全日本・後楽園大会では、「チャンピオン・カーニバル」初出場・初優勝を達成。三冠&GHCの同時戴冠という史上初の快挙を成し遂げるべく、5日間で2つのタイトル戦に挑むことを決意した。

 今月24日にまず、全日本・宮原健斗の持つ三冠ヘビー級王座に挑戦するも敗北。2冠獲得の夢はついえたものの、改めてそのプロレスセンスの高さを証明したことで、約2年4カ月ぶりのGHC王座返り咲きを期待するファンの熱もヒートアップ。平日開催にも関わらず、超満員のファンが聖地に駆けつけた。

 先に丸藤が顔面ステップキックを仕掛けると、杉浦もエプロンからの中年ズリフト。さらに破壊力抜群の雪崩式滞空ブレーンバスターに対し、丸藤はエプロンでのパイルドライバーでお返し。すると、杉浦は怒涛のエルボー連打からランニングニー、ジャーマンスープレックス。丸藤も虎王、不知火を繰り出すと、奥の手の不知火・改まで解禁。さらにポールシフトを狙うが、杉浦がブレーンバスターに切り返す。20分過ぎ、杉浦が顔面蹴りからオリンピック予選スラム、さらに腕をつかんでのエルボー連打。丸藤もトラースキック、虎王、延髄への虎王とたたみかけるが、杉浦は丸藤をマットにたたきつけ、フロントネックロックで締め上げると、丸藤がたまらずギブアップした。

拳王vs.清宮が次期挑戦者決定戦に

杉浦(左)が右手を差し出すと、丸藤も握手で応えた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 試合後、杉浦が右手を差し出すと、丸藤も握手で応えた。試合後、杉浦のパートナーでもある拳王がリングに上がり、「テメエらがノアの顔として引っ張っていってもノアは発展していかない。さらなる高みを目指すなら、オレがノアの顔として時代を築く」と“下克上宣言”をすると、さらに下の世代の清宮海斗までもが「新しい時代を築くのはこのオレ。オレがベルトに挑戦する」と名乗り。次回6.10後楽園で行われる両者のシングルマッチが、事実上の次期挑戦者決定戦になった。

 この若手からの突き上げに対し、杉浦は「要は若い連中を相手にすればいいんだろ。誰でも来い。このベルトを賭けて戦う」と余裕を崩さず。その上で、「今日、丸藤と試合をできたことを誇りに思う。ノアの良い時も、 悪い時も戦ってきた戦友として、丸藤には『ありがとう』と言いたい」とリング上からメッセージを送り、若い世代が台頭している中で、この2人でベルトを争い、メインを締めることができた重みと喜びをかみ締めた。

 敗れた丸藤は、敗北の事実をしっかりと認めた上で、「三冠負けた。GHC負けた。でも、2018年の主役はこのオレだ」と、巻き返しを宣言。9.1東京・両国国技館で開催されるデビュー20周年記念興行に向け、これからも貪欲に攻めの姿勢を貫くことを予告した。

ジ・アグレッションが王座再戴冠

中嶋勝彦&マサ北宮のジ・アグレッションがGHCタッグ王座にわずか1カ月で返り咲いた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 セミファイナルのGHCタッグ選手権試合では、中嶋勝彦&マサ北宮のジ・アグレッションが、潮崎豪&清宮海斗のゴーカイタッグを破り、わずか1カ月で王座返り咲きを果たした。

 両チームは3.31後楽園での「GLOBAL TAG LEAGUE 2018」公式戦で対戦。当時タッグ王者組であったジ・アグレッションだが、北宮が潮崎に19分53秒、豪腕ラリアットで敗れていた。チャンピオンチームを破り勢いに乗ったゴーカイタッグは、4.11後楽園で行われた「GLOBAL TAG LEAGUE 2018」優勝決定戦で、杉浦貴&拳王組を破り優勝。4.29新潟ではジ・アグレッションの持つベルトに挑戦し、23分15秒、清宮が北宮からスモールパッケージホールドで3カウントを奪って王座奪取を果たした。

 ベルトを失った中嶋と北宮はシングルでリベンジ。5.4後楽園では中嶋が清宮に8分14秒、顔面蹴りでレフェリーストップを収めると、5.9大阪では中嶋が潮崎を17分47秒、ヴァーティカルスパイクで粉砕。北宮も清宮を7分43秒、サイトースープレックスで破り連勝すると、対戦相手を変えた5.13博多でも、中嶋が清宮に13分34秒、スリーパーホールドでレフェリーストップ勝ちを収め、北宮も潮崎に19分21秒、監獄固めでTKO勝利。ベルトを失ってからわずか1カ月で再戦にこぎつけた。

 中嶋はテーピングを施した潮崎の左ヒザに容赦なくキックを連発。痛みに悶絶しながらも5分以上のローンバトルに耐えた潮崎の奮闘に応えるべく、清宮は北宮にバックドロップを見舞うと、さらに中嶋、北宮に続けてドロップキック。潮崎も痛みをこらえて中嶋に逆水平チョップを連打するが、中嶋は低空ドロップキック、アトミックドロップ、ドラゴンスクリュー、ミドルキックでなおもヒザ攻め。清宮は潮崎のピンチをミサイルキックで救うと、潮崎が中嶋に迎撃ラリアット、ゴーフラッシャー。しかし、中嶋もリミットブレイクを食らいながらも、豪腕ラリアットをキックで迎撃すると、強烈な右ハイキックで倒して顔面蹴り。グッタリして動けない潮崎の様子を確認しようとするレフェリーを強引に引っぺがし、ヴァーティカルスパイクでトドメをさした。

 再び取り戻したベルトを肩に、堂々とファンにお披露目した北宮は「ここからがスタート。今度は死にもの狂いで守る」と、前回は初防衛に失敗した苦い思い出を胸に長期政権を誓った。

ジュニアタッグはHi69&稔組が初防衛

GHCジュニアタッグ選手権試合では、新王者となったHi69&田中稔組が初防衛 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 GHCジュニアタッグ選手権試合では、新王者となったHi69&田中稔組が、原田大輔&タダスケ組を退け初防衛に成功した。

 同王座は、今年に入ってめまぐるしく王座が移動。1.27大阪大会にて、石森太二&Hi69組がHAYATA&YO-HEI組から王座を奪取するも、3.11横浜での初防衛戦で小川良成&田中稔組に破れ王座が移動。だが、この直後にベルトを失った石森はノア退団を表明しフリーに転向。新日本プロレス5.4福岡大会にBULLET CLUBの新メンバーBONE SOLDIERとして登場し、プロレスファンの度肝を抜いた。また、せっかくベルトを獲った小川も王座返上の強い希望を訴えたため、即ベルトを返上。4.14&15札幌マルスジム大会にて4チーム参加の「第34代GHCジュニア・ヘビー級タッグ王座決定トーナメント」が行われた。

 両軍は14日のトーナメント1回戦で対戦し、Hi69が原田に15分35秒、ストゥーカスプラッシュで勝利し、翌15日の決勝戦で優勝。新王者となった。

 だが、4.29新潟で行われたノンタイトル戦では、タダスケが稔に15分02秒、ラリアットでリベンジ。5.4後楽園ではシングル二番勝負が組まれ、稔がタダスケに10分36秒、グラウンドコブラツイストで勝利すると、Hi69も原田に21分14秒、ラダーからのストゥーカスプラッシュ オン・ザ・チェアーで金星ゲット。5.13博多では原田のGHCジュニアヘビー級王座にHi69が挑むも、29分02秒、片山ジャーマンスープレックスホールドで敗北。原田が5度目の防衛に成功している。

 開始早々、挑戦者組は場外戦を仕掛けると、タダスケは南側通路を利用して2人に距離を生かしたランニングキック。10分過ぎには原田がHi69に片山ジャーマンを狙うも、Hi69がモンゴリアンチョップ、頭突きで対抗。タダスケはHi69を抱え上げ、稔の上に投げ捨てると、Hi69へのサンドイッチラリアットからハイアングルパワーボム。カットに入った稔を場外へ突き落とし、一気呵成に勝負に出るが、その直後にタダスケのラリアットが原田に誤爆。一転、孤立したタダスケが連係攻撃のエジキとなり、Hi69のストゥーカスプラッシュに沈んだ。

 この日、7.7新潟で開幕する「第12回グローバル・ジュニアヘビー級タッグリーグ戦」の開催が決定。かつて13年1月までノアに所属していたリッキー・マルビンの出場が発表され、ファンの注目度も上がっている。

 初防衛に成功したHi69と稔は、セコンドに就いた小川と共に、改めて「平和ボケしたノアを面白くする」と改革を予告。ノアジュニアで最大の勢力を誇るRATELSに対し「最近、RATELS飽きたって声が多い」と真っ向からケンカを売るなど、「ノアジュニアに争いを作っていく」ため、どんどん抗争の火種を仕掛けていくことを宣言した。

ヘビー転向2人のシングル戦は拳王が勝利

拳王vs.小峠篤司によるヘビー級転向組によるシングルマッチは拳王の勝利。再びGHC王座に挑戦する 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 拳王vs.小峠篤司によるヘビー級転向組によるシングルマッチは、拳王がダイビングフットスタンプで勝利。4.29福岡で杉浦のGHC王座奪取に失敗した小峠を退けたことで、王座返り咲きへ大きく前進した。

 拳王は小峠のペースに乗ることなく、序盤から得意のハイキックで鉄柵の外へ蹴り落とす。小峠も雪崩式フランケンシュタイナーなどの大技を繰り出すが、こだわりのマントを装着する間に拳王につかまり、張り手連打からの雪崩式ブレーンバスターのエジキに。小峠は10分過ぎにも、キルスイッチから再びマントをつけてフロッグスプラッシュを狙うが、やはり装着にもたついたせいでかわされて自爆。拳王は頭部から流血しながらも浴びせ蹴り、フルネルソンスープレックス、蹴暴とたたみかけると、ダイビングフットスタンプで勝利。改めて「オレが中心に立ってノアを回していく」という決意を固めると、メインイベント終了後、さっそくアクションを起こした。
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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