大谷と田中の初対決にNYは沸騰 それぞれが示した実力とポテンシャル
現地の注目度も高かった初対決
田中と大谷のメジャー初対決は田中が2打数無安打に封じ込めた 【Getty Images】
投打両方でハイレベルな成績を残し、今季序盤戦のMLBで最大のセンセーションになっている大谷。メジャーに久々に現れた本格的な“2 way player(二刀流)”の手並みはどの程度なのか。宝石箱をひっくり返したようなニューヨークには鳴り物入りのモンスターが頻繁に訪れるが、“日本のベーブ・ルース”と呼称されてきたこと、オフの争奪戦ではヤンキースが惨敗したことといった縁もあり、今シリーズへの期待度は実際に高かった。
特に27日に先発した田中将大との初対決は話題沸騰。ヤンキー・スタジアムには多くの日本人ファンが詰めかけ、大谷、田中の写真が並べられた記念Tシャツまでが限定発売されることになった。
それほど注目度が高かったシリーズで、大谷は9打数0安打5三振。ほぼ徹底して外角低めに投げ続けたヤンキース投手陣から随所に四球は選んだものの、待望された豪快な打球は飛ばせなかった。田中との対戦でも1四球はあったものの、2打数2三振と完敗だったと言っていい。
「変化球1個1個ももちろん素晴らしいと思うんですけど、投げる位置だったりとか、カウント球からそうですけど、(ストライクゾーンの)枠の隅をついてくるようなコントロールを持っている」
試合後、大谷本人も田中の投球への絶賛を繰り返していた。実際にこの日に関しては、大谷の打撃云々(うんぬん)よりも、6回を3安打1失点8奪三振にまとめた田中の精度の高いピッチングの方を褒めるべきだったに違いない。
トラウトを仕留め波に乗った田中
田中と大谷の初対決を記念したTシャツも登場 【写真は共同】
速球、スプリット、スライダー、カッターとさまざまな球種を使いながらもなかなか突き放しきれず、全10球を要する長い勝負になった。内野フライの打球が強風でファウルになる不運もあり、苦しい状況に追い込まれているようにも見えた。
しかし、ここで田中は最後は94マイル(約151キロ)の4シームを高めに投げ込み、“メジャー最高の選手”と称されるトラウトを空振り三振に切って取る。見事に最初の危機を脱すると、それ以降、多彩な変化球と力のある高めの真っ直ぐを混ぜ合わせるトラウト相手の投球がこの日全体の基調になっていった。
「全体的にどの球種もしっかり制球できるというのは日本にいたときからそう。今日もすごいいいところに投げつつ、審判も巻き込んで、“ストライク”と言わせるような素晴らしいコントロールがある」
大谷のそんな分析通り、真っ直ぐ系に勢いがあり、なおかつ制球がいい日の田中は支配的な力を発揮する。2回以降も大胆かつ細心な投球で、もともと相性のいいエンゼルスを封じ込めていった。今戦を“ビッグイベント”とまで呼ぶのは少々大げさだとしても、注目される舞台ではやはり田中はステップアップしてくれる。大谷を圧倒し、絶好調のトラウトをも沈黙させた背番号19には、屈指の“ビッグゲーム・ピッチャー”らしい貫禄が漂っていた。